第九話 「城塞都市サンドリオ」03
朝、シュンはスカーレッドの事務所を訪ねて、レイキュアと合流する。
南門から二人で馬車に乗り中央都市サンドリオへと向かった。
レイキュアは大人しい落ち着いた服装で、シュンもいつもの冒険者の服を脱いで普段着だ。
サンドリオは東西南北のギルドを統括する本部と、大口スポンサーになっている貴族の事務所、戦いを観覧する貴族が宿泊するホテル、食事をするレストラン、そこで働く人々が暮らす場所だ。
この城塞都市は行政上、市の扱いになっていた。
税収もそれなりにあり、対ベヒモス用の支出、冒険者の報酬などに当てられている。
他には回収されたベヒモスの素材を扱う商人、研究者など。
街の防衛を担う駐屯軍の司令部要員なども暮らしている。
いざという時は派兵を受け入れる為の要員だ。
並ぶ建物はグロッセナと同じ三階建てまでの高さで、街を囲う城壁より低い。
空を飛ぶベヒモス、ジズの攻撃を警戒してだが、実際にはそんなことはないし、ジズは目撃自体がまれだ。
やはり中世ふうの街並みの中央通りを歩きながら、二人で両脇に並ぶ店先などを眺める。
ある店のショーウィンドーにあの女神レイキュアの絵が飾ってあった。
横にはチーム・スカーレッドの衣装に、更に装飾を施したような上下とマントがディスプレイされている。
「なんだ、こりゃ?」
「見ての通り、私をイメージしたブランドよ」
レイキュアは若干自慢げに言うが、これが商品として成立しているとは考えにくい。
「こんな服、売れるのかあ?」
「まさか、ディスプレイ用よ。でも、お土産用に買っていく貴族も時々いるんですって」
「土産ねえ……」
いったい誰が着るのかとシュンは考えてしまう。
仮装パーティーでもあるのだろうか?
「入りましょうか」
シュンは場違いと思いつつもレイキュアの後に続く。
中は意外に普通で男物の服も並んでいた。
「ねえねえ、これ見て!」
「何だよ……! これって、ウチの名前か?」
「当り前じゃない!」
それは胸にランツィアのロゴが入った革製の上着だった。
「初めて見たよ……」
レイキュアは一通り店内を見て、顔馴染みなのか店員と談笑している。
店を出て二人は洒落たレストランに入り昼食をとった。
「本当はこんなお店もやりたいのだけれどね」
「グロッセナじゃあ客が来ないだろう」
この店は内装からして大衆的ではなく、冒険者の街にはそぐわないセンスの良さだ。
「そうねえ、やっぱり場所に合った商売が一番よね」
素晴らしいコース料理を二人で平らげ、お茶のお替わりが運ばれた。
「そっちのビジネス計画はどうなってるの?」
「アルバーに任せているよ。あいつは専門だし、張り切っていた」
「案によるけどウチにも一枚かませてくれない?」
レイキュアは身を乗り出す。
チーム・スカーレッドの資金は豊富なようだ。
「もちろんいいよ、アルバーから相談はないの?」
「ええ、カノーアが話ぐらいは聞いてるかもね。彼女にもアルバーを手伝わせるわ」
「分かった」
カノーアの方がアルバーよりこの街での暮らしは長かった。
良い相談相手になってくれるだろう。




