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第三話 「戦闘種族たち」04

 シュンがチーム・スカーレッドの事務所に顔を出すと、レイキュアは毛皮を敷いたソファーに座って副隊長、他の隊員たちと何事か話をしていた。


「あら、どうしたの?」

「デス・キャニオンに行くって?」

「何よ、それ?」

「うちと合同で行くって言いふらしてるんだって?」

「参ったなあ……、どこで聞いたのよ」

「本当なんだな。何バカな事、言ってるんだ!」

「バカはないでしょう!」


 レイキュアは立ち上がりシュンに詰め寄る。


「あっ、いや……」


 その迫力にシュンはタジタジとなってしまう。

 女だてらにチームのトップを張っている胆力は伊達ではない。


「私たちとの合同はヤなの?」

「嫌って訳じゃあ……」


 シュンは思わず口ごもる。


「あなた、この街に来たばかりの頃のこと、忘れた?」

「忘れたなんて……」


 金がなかった昔、ここの事務所に転がり込んでいた時もあった。


「腹ペコで死にそうだって、いつも言ってたわ!」

「……」

「ねえっ!」


 腹を空かせていた時に飯を食わせて貰ってもらった事もあった。


「ド底辺の頃は忘れちゃた?」


 今日も稼げなかったと、項垂(うなだ)れて帰って来たシュンを、ここの女たちは励ましてくれた。


「参ったなあ……」

「さすがトップランカーは違うわね。上から目線で私たちのこと、見下してるっ!」

「……そんなことは……」

「今日も私たちを笑う為に来たのね。最っ低! 皆、最低冒険者の顔をよく拝んでやりなっ!」

「おっ、おい……」


 気のせいか周りの女性陣の視線が冷たく感じる。


「トップに立って変わったんだってさ。人間こうはなりたくないわねえ~~」


 しかしよくよく考えればチーム・スカーレッドがデス・キャニオンなんて危険な場所に行って稼ぐ必要が今一つ分からない。


「お前の所ってそんなに大変なのか? そうは見えないけれど……」


 部屋の中を見回すが、事務所の中は彼女好みに煌びやかに飾られ、いつも通りだ。

 いや、壁に掛けられている絵画は増えていて、棚の装飾品もしかりだった。


「シュン、全て隊長の冗談です。気にしないで下さい」


 横で話を聞いていた副隊長で参謀役のカノーアが口を開く。


「なっ、何を……」


 レイキュアは反論し、シュンは助け船が出されてほっとする。


「隊長、落ち着いて下さい。とりあえず座りましょう。おい、誰かお茶を持って来てくれ」


 カノーアに進められ、シュンはともかくソファー席に座る。

 レイキュアはソッポを向いていた。


「シュンの言う通りウチの経営は悪くありません。ただ、最近はスポンサーから色々とリクエストが多くて……」

「そうか……」


 スカーレッドは女ばかりかウリのチームだ。

 派手で露出度の高い揃いの制服を着てベヒモスを狩る。


 相手は中の中くらいから下までのレベルで、強さより派手さや、レイキュアが言うところの華麗さを売りにしていた。


 ランキングは低いがスポンサーからの収入は多かった。


「もうちょっと難易度の高い敵と戦えって話もあるんです」

「なるほどなあ……」


 スポンサーとしてはもう少し戦う露出を増やせということらしい。

 理由も事情も分かった。

 しかしいきなりデス・キャニオンはないだろう。


「私と隊長でチーム・ランツィアに同行させてもらう訳にはいかないでしょうか? 他の隊員はキャニオンの入り口までとします」


 カノーアは頭を下げる。

 さほど無茶な話ではないと思いつつ、シュンは恐る恐るレイキュアの表情を伺う。


「隊長も……」


 レイキュアは口を尖らせたまま無言で頭を下げた。


 運ばれてきたお茶を飲みながら、シュンはカノーアからの提案を聞いた。

 要は合同で森に入ってこちらのチームの実力を見て欲しいとのことだった。


「どうでしょうか? 合同クエストは他のチームもよくやっていますが……」

「うん――、それはそうだが……」


 デス・キャニオンの件は、せめてそれから検討して答えを出して欲しいと、カノーアはもう一度頭を下げる。


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