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第三話 「戦闘種族たち」05

 シュンは頭を抱えながら事務所に戻り、事務仕事をしているアルバーに声を掛ける。


「今日のウチは何をやってるんだ?」


 チーム・スーレッドから手伝いに来ている隊員の女性が、隣で計算事務を手伝っていた。


「近場で仕事です。新しい組割りを試しています」


 冒険者たちは一定の実力さえあれば、近くで小物を狩るだけでも食う分は十分に稼げる。


「【回復】スキルのレアクリスタルは助かりました。でも良かったんですか?」

「ん?」

「ベヒモスを倒して手に入れるのが基本だっていつも言ってたから……」


 シュンの持論だった。

 駆け出しの頃の自分がそうだったからだ。


「ああ、まあ付き合いだ。しょうがないよ」

「はあ……」

「ちょっと来てくれ」


 シュンはアルバーを自室に呼んだ。

 互いに椅子に座り机を挟んで向かい合う。


「チーム・スカーレッドに行ってきたんだけど、あいつらデス・キャニオンのクエストに参加するって言ってるんだ」

「あんな所のクエストが始まるのですか?」

「まだ、噂の段階さ。ガスケスの情報だ。ウチと合同でクエストに参加したいって言われたよ」

「なるほど……」


 アルバーは少し考える顔になった。


「どうした?」

「実は先日、副隊長のカノーア誘われて二人で飲みに行ったんですよ」

「なんだ。お前ら付き合ってるのか」

「ちっ、違いますよ」


 アルバーは手を大きく振って否定する。


「その時ランツィアと一緒に森に入れないかって言われたんです。合同訓練って言うか、交流程度でもいいって言ってました」


 サブリーダーと副隊長同士なら話もしやすいようだ。


「そうか……」


 カノーアとしてはその程度のことをしてレイキュアをなだめたかったのだろう。

 なかなか優秀な副隊長で、苦労人だとシュンは感心した。


「明日からは俺も出るよ」

「大丈夫ですか?」


 シュンはスケラーノとの一戦以来、三日ほど休息を取っていたが、そろそろベヒモス討伐を始めようと思っていた。


「ああ、それと急で悪いが、明日その交流ってやつをやることになったんだ。準備を頼むよ」

「大丈夫です。計画案はできていますから」

「頼む。カノーアは了解済みだ。打ち合わせてくれ」

「分かりました」


 アルバーは明日の準備の為に席を立った。

 ウチのサブリーダーも優秀で助かるとシュンは思った。



 近場の仕事でも毎日真面目にやれば冒険者はやっていける。

 だがギルドはそれでは不満なようだ。


 ランキングやスポンサーへのアピールなどと、どうしても煽る。

 スポンサー料の一部はギルドも手数料として手にしていた。


 シュンは悪いとは思わないが仲間、広い意味での街全の冒険者が犠牲になる姿を見たくはなかった。


 チーム・スカーレッドみたいな所までスポンサーから圧力がかかり無理をしようとする。


 そう思えばレイキュアのランツィアと合同で、は冷静に考えた生きる為の方法でもあった。


「まあ、仕方ないのか……」


 シュンは自室で一人呟いた。


 脅威であるベヒモスの討伐と、庶民から貴族までが一種の娯楽としてランキングを見ていた。


 応援されているとも思えるし、見世物になっているような気もする。

 こっちは命を懸けて戦っているのだ。

 見世物なんて冗談じゃないが現実はそうだ。


 スポンサーから流れ込む金は冒険者たちの懐を潤していた。

 シュンが考えても仕方のない現実だった。



 この世界、この国において戦闘種族は一般人とは違う。

 それは今や、まるで数世紀前の民族の違いのように思われていた。


 企業貴族はほとんどが戦闘種で、貧乏にあえぐ一般人とは民族格差のように思われがちだった。


 しかし大戦の末期に一般人の政治家と軍人が戦争に狂奔し、まるで戦い続けるのが歴史とばかりに命令を下し、それに反旗を翻して戦争を終結させたのが各国の戦闘種族たち、そしてベヒモスの脅威だった。


 統治するものと、統治される者。

 新たに吹き出た格差の間を埋めるのが、シュンたち一般からこの街に来て活躍する戦闘種、戦闘的冒険者(ウォリアー)なのだ。


 それ故に企業貴族(スポンサー)もシュンたちに金を出す。


 戦争の落とし子とも呼べる、ゲノム編集された戦闘兵士(ソルジャー)の子供、子孫たち。


 金を稼げる場所だから、そのような若者が集まる。

 娯楽として定着している為、皆憧れる。

 そしてゲノム編集され遺伝子を駆使して戦う。


 

 ここは軍管区第八六地区。


 敵国と自国が放った生物兵器が未だ徘徊する、市民の娯楽のワンダーランドだった。

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