8.「世界樹を守るための戦いその2(※ざまぁ回)」
「あとはあんただけだ」
「……調子に乗るなよ、クソガキが! てめぇの攻撃が効かないことは、さっき証明してやっただろうが!」
構わずにリコは二十本の釘バットを操作して、攻撃を仕掛けた。
「あ? どうした? そんなもんか? さっきより威力が下がってねぇか?」
が、鎧にぶつかるだけで、傷はおろか、吹っ飛ばすことすら出来ない。
〝あのねこちゃんの攻撃がまたも通用しないだなんて!〟
〝いや、多分〝遠隔操作よりも自分で武器を持って直接叩いた方が強力〟ってことだと思う。まぁ、直接叩いても無傷だったから、どちらにしろあの鎧の防御力は恐ろしく強い訳だが・・・〟
「じゃあ、今度はこっちの番だな。てめぇにとって、その無駄にでけぇ木は大切なものなんだろ? じゃあ、避けられねぇよなぁ?」
「………………」
一種の魔導具である特殊な収納袋から魔法銃を取り出した銀蛇が、世界樹の前に佇むリコに対して口角を上げる。
「死ね! 『レーザー』!」
光線が発射、リコは左手を翳した。
「馬鹿かてめぇは!? そんなんで止められる訳ねぇだろうが! 手のひらを貫通、そのまま身体も貫かれて死んじまえ! ぎゃははは!」
銀蛇は哄笑を上げる。
「――ははは……は?」
だが、リコは火傷すら負っていなかった。
〝おおおおお!〟
〝ねこちゃんスゲー!〟
「一体何しやがった!? 何で無傷なんだ!?」
「真のヒールになるために鍛えようとして自分で行った根性焼きで慣れてるからな」
「はあああああっ!? そんなことでか!?」
「ああ。何度も根性焼きを行った。花火で」
〝煙草じゃなくて花火かい!〟
〝いや、花火もえぐいけどな! 普通にめちゃくちゃ熱いし!〟
〝ただ、〝花火で鍛えたからレーザービームを食らっても無傷〟は、どちらにしろ意味不明だけどな!〟
「それなら! 食らえ! 『ファイア』!」
予め魔石を複数種類入れておいて、ボタン一つで切り替えが出来るタイプの高価な魔法銃によって、今度は銀蛇が巨大な炎を放つ。
「無駄だ。根性焼きで慣れてるからな」
「クソがっ!」
しかし、リコにダメージを与えることは出来ない。
〝根性焼き理論強いなおいw〟
〝まさか根性焼きが最強とは思わなんだw〟
「これは流石に防げねぇだろうが!」
マジックバッグから取り出した耳栓をした銀蛇が、次にマンドレイクを取り出す。
「ピィギィイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛ッ!」
まるで魂を刈り取らんとするような恐ろしい悲鳴が上がる。
「何の防御も無しに聞けば死ぬ悲鳴だ! 俺様は耳栓と魔法防御力の高い鎧があるが、てめぇは何もねぇだろうが! いい加減に死ね!」
だが、致死性の悲鳴を聞いても、リコは微動だにしなかった。
「それがどうした?」
「何でこれも効かねぇんだよ!?」
「暴走族のバイクの騒音で慣れているから、大きな音に対しては免疫が出来てる」
「そんなんでマンドレイクの致死悲鳴を無効化出来てたまるか! おかしいだろ!」
〝めっちゃ心配してたのに、ねこちゃんはやっぱりねこちゃんだった!〟
〝あの絶望的な状況から一対一に持って行って、しかも圧倒してるのが凄過ぎる!〟
「今度のは絶対に防げねぇぞ! なんせ、呪術魔法だからな! 石像になりやがれ! 『ペトリフィケーション』!」
先刻のレーザーと違い、リコの全身に紫の光が浴びせられた。
リコが石化、彫像と化す。
〝ねこちゃん!〟
〝うわあああああ!〟
「ハ……ハハハ……! やった! ついに倒したぞ!」
銀蛇が歓喜に打ち震えた刹那。
パリン
「残念だったな」
「嘘だろおおおおお!?」
石化が解除。
どうやら石化したのは薄皮一枚のみだったらしく、その下から五体満足なリコが現れた。
「そういうのは、バイクのハイビームを何度も食らってるから慣れてる」
「だから、バイクのライトと呪術魔法を一緒にしてんじゃねぇよ!」
〝こっちは根性焼きじゃなくてバイクのハイビームなのかよ!〟
〝ていうか、暴走族ってこんなに強かったんか!? チートやんけ!〟
〝チートなのはヤンキーでも暴走族でもなくて、ねこちゃんなんだってば!〟
「ちくしょう! いくらてめぇがタフでも、後ろのでけぇのは単なる木だろうが! 食らいやがれ! 『ファイア』! 『ファイア』! 『ファイア』! 『ファイア』!」
銀蛇が、先ほどの猛炎を、今度はリコの手が届かない世界樹の上部に飛ばして攻撃を仕掛ける。
「なっ!?」
が、リコは二十本の釘バットを操作、空中で回転させることで防御した。
「今度はあたしの番だ」
リコが地面に落ちていた花指輪を拾うとメリケンサックに変化、右手に装備する。
「ケッ! 何度も言わせんな! てめぇの攻撃なんざ俺様に傷一つ負わせることは出来ね――」
「ふんっ!」
「がはっ!?」
瞬時に接近したリコがボディに殴打を食らわすと、鎧に穴が開き、銀蛇が吐血する。
「くそ……がぁッ! 『マジカルブロック』!」
「!」
複数の魔法陣が合体、一つの光り輝く球体となりリコを包囲。
すると、メリケンサックが花指輪に、あれだけあった釘バットも全て花冠に戻ってしまった。
「俺様はユニークスキル二つ持ちだ! 一つはさっきの『究極隠密』で、もう一つがこの『マジカルブロック』だ! 一時的だが、それがどんなスキルだろうが完璧に封じる! たとえユニークスキルであろうが関係ねぇ! 俺様の能力からは逃れられねぇのさ! てめぇの強さはチートな武器によるものだ。これで形勢逆転だ! ざまぁみやがれ! ぎゃはははぐぼっ!?」
だが、リコは構わずに脇腹を蹴って、問題なく鎧を破壊。
銀蛇は吹っ飛び、血反吐を吐く。
「な……んで……!?」
プルプル震えながらどうにか立ち上がった銀蛇は、
「こうなったら奥の手だ! 身体に負荷が掛かり過ぎるから本当はやりたくなかったんだが、四の五の言ってられねぇ!」
叫んだ。
「『マジカルブロック×2』! ぐはっ!」
重ね掛けにより、銀蛇は更に吐血する。
「……これで終わりだ! 先程のユニークスキルを応用、てめぇの魔力を封じてやった!」
膨張していたリコの魔力が消えて、銀蛇は勝利を確信。
高笑いが草原に響く。
「ぎゃははははは! ざまぁみやがれ! これでてめぇは何も出来ねぇただのメスガキだ! そして俺様にはもう一つの魔剣バルムンクがある! これからこの竜殺しの魔剣で行われるのは、一方的な殺戮だ! 俺様の力を存分に味わいながら死ねぶごべっ!?」
顔面を打ち抜かれた銀蛇が空中で十回転してから地面に落ちた。
「……はえ!? ほえ!? はんで(なんで)!?」
吐血し、這い蹲いながら、混乱する銀蛇。
メリケンサックもない、魔力も帯びていない、ただの拳でリコはドラゴンの鱗で作った兜を破壊、銀蛇の顔の輪郭を変えた。
「く、くそっ! でもまだ俺には、魔剣バルムンクが! コイツがあるんだ!」
銀蛇がフラフラと立ち上がる。
「一つ聞きたいんだが、御自慢の魔剣というのは、どこにあるんだ?」
「その手には乗らねぇぞ! ハッタリかまして俺様を揺さぶろうって魂胆だろうが! 多少ダメージ受けたくらいじゃ、俺様のユニークスキルは解除されないんだよ! ほら見やがれ! 魔剣バルムンクはここに――はあああああッ!?」
魔剣は見事に真っ二つに折られて、上半分が吹っ飛んでいた。
「じょ、冗談だよな!? ユニークスキルも魔力も封じられて、一体どうやって!?」
リコは、左手で自身の右手をポンポンと叩いてみせた。
「……え? マジ?」
リコが無言で頷く。
「「………………」」
沈黙が流れた後。
「ちくしょう! うわあああああ!」
刃が半分になった魔剣バルムンクで斬り掛かってくる銀蛇に対して、リコは身体をずらしながら最小限の動きで回避。
「おらあッ!」
「ぷげぶっ!」
「おらあッ!」
「ぼぐべっ!」
「おらああああああッ!」
「ぐごばッ!」
カウンターの形で一発入れた後、立て続けに拳を突き刺して上空へと吹き飛ばした。
地面に転がった銀蛇は血と泡を吹き涙と鼻水を垂れ流しながら失禁、白目を剥いて痙攣すると、失神した。




