↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

6.「モンスター集団暴走その3(vs中層ボス)」

〝相変わらず絶望的な状況ではあるけど!〟

〝ちょっとだけ希望が見えた気がする!〟

〝バイクが登場しただけなのにな! これが伝説の総長の背中か! 小さいのに大きいぜ!〟

〝行け! ねこちゃん!〟

〝《謝意手ルナ》ねこさん、ファイトっす!〟


 配信用ドローンがライブ映像を届け、リスナーたちが応援する中。


「さて、まずは――」


 ミニバイクに跨ったリコは、右手に持ち肩に担いだ釘バットをトントンと揺らしつつ、十一匹のS級モンスターの内、先頭の者を見て目を細める。


「グモオオオオオッ!」


 先陣を切って駆け出したミノタウロスに対して、釘バットをくるりと回転させつつ左手に持ち替えたリコは、花指輪で作ったメリケンサックを装着した右手で釘バットを殴った。


「おらあッ!」


 ガンッ!


「グモッ!?」


 たっぷり魔力を纏わせた釘がミノタウロスの両足の膝から下を吹き飛ばし、思わず手をつこうとするが、両腕も肘から先を釘で吹っ飛ばして、五体投地のような形で倒れさせる。


ブオオオオオッ


「身体、使わせてもらうよ」

「グモッ!?」


 左右の角が危ないので予め釘で破壊した上で、前輪を浮かせて後輪走行しながらミニバイクで勢い良く突っ込み、ミノタウロスをジャンプ台にして、身体に乗り上げると同時に高く飛んだ。


〝飛んだあああッ!〟

〝いやいや、バイクが空を飛ぶわけ――飛んでるうううッ!〟


リコは身の丈二十メートルの異常ホブゴブリンすらも飛び越え、全モンスターの頭上を取った。


「ブーッ!」

「ギイッ!?」

「「「「「グモッ!?」」」」」


 モンスターたちの頭上から大量の毒霧を、出来るだけ細かい霧にして吹くリコ。部屋中に充満、全員が目を押さえて苦しむ。


〝ねこちゃん、俺にもぶっ掛けてくれ!〟

〝このタイミングで危ない性癖をひけらかしてる奴いて草〟

〝命懸けの戦いなのに、ちょっと笑っちまったじゃねぇか!w〟


 あくまでこの毒霧は視界を奪い足を止めることが目的だ。そのため、一匹当たりに食らわせた量としては、以前ミノタウロスと一対一で戦った時ほどはないので、武器を手から落とすところまでは苦しみを与えられていないが、まずは十分。


「おらあッ!」

「ギイッ!?」


 モンスターたちの背後に着地、ホブゴブリンの足に釘を放ちつつ、敵の密集地帯を擦り抜けてボス部屋入り口側へと戻るが、ホブゴブリンは巨体だけあって、多少釘を打ち込んだくらいでは倒れない。


〝ていうか、さっきからねこちゃん、釘を撃つために両手が塞がってね?〟

〝どうやって運転してるんだ!?〟

〝《謝意手ルナ》恐らく魔力操作っすよ! 前に釘を跳弾させた繊細な魔力操作が、今回はバイクの運転に役立ってるっす!〟

〝ねこちゃんヤベーなw 何でも出来るやんけw〟

〝ここまで来ると、一体何が出来ないのか知りたいw〟

〝本性を隠すことは苦手なんやでw〟

〝いや、それが逆にねこちゃんの魅力になってるんだろうが! いい加減にしろ!〟


「なら、まずは小さい方からだ! おらあッ!」

「「「「「グモッ!?」」」」」


 自分の背丈は棚に上げて、リコは遠距離から釘で攻撃。ミノタウロスたちの手を吹き飛ばして武器を地面に落下させつつ、足にも撃ち込んで何匹か倒れさせて、残りは膝をつかせた。


「これであたしでも届く! おらあッ! おらあッ! おらあッ! おらあッ!」

「グモッ!?」

「グモッ!?」

「グモッ!?」

「グモッ!?」


ミニバイクで走りながら、釘バットでミノタウロスの顔面または胸部や腹部を殴打、巨躯が吹っ飛ぶほどの威力により大きな穴が開いて消滅、魔石に変えていく。


〝ナイスー!〟

〝一気に四匹キル! アツい!〟


「ギイッ!?」

「っと! 危ない」


 巨躯故か、早くも視界を取り戻したホブゴブリンが十メートルにもなる棍棒を振り回し、リコは車体を限界まで傾けてギリギリ躱した。


〝あぶねー!〟

〝ナイス回避!〟

〝一瞬地面に対して完全に水平になったのに、普通に元に戻ってるあのバイクは何!?〟

〝《謝意手ルナ》恐らく魔力操作っすよ!(以下略)〟

〝魔力操作万能過ぎて草〟


「おらあッ! おらあッ! おらあッ! おらあッ! おらあッ! おらあッ!」

「グモッ!?」

「グモッ!?」

「グモッ!?」

「グモッ!?」

「グモッ!?」

「グモッ!?」


 まだ目が見えないため闇雲に拳を振り回し、または何とか戦斧を拾って当てずっぽうで振り下ろすミノタウロスたちの攻撃を蛇行運転しながら軽く回避、釘バットで殲滅するリコ。


〝《謝意手ルナ》凄いっす! 凄過ぎっす!〟

〝よしゃ! あとは親玉だけだ!〟


「ギイイイイイイッ!」


 と、そこに、両手で棍棒を持ったホブゴブリンが、リコに向かって全力で振り下ろした。


「ハッ! 良いね! 真のヒールとして逃げるわけにはいかない!」


 ミニバイクを停めたリコは、釘バットを下から掬いあげる。


「ギイイイイイイッ!」

「おらあああああッ!」


 二つの武器がぶつかり、止まる。


〝スゲー! 20メートルから振り下ろされる10メートルの棍棒と互角とかマ!?〟

〝ねこちゃんはもう小さな巨人だよ!〟


 常軌を逸する力を加え続ける両者の身体と武器がプルプルと震え、その膂力は完全に拮抗するかと思われたが。


〝やっちゃえ! ねこちゃん!〟

〝踏ん張ってくれ!〟


「おらあああああああああッ!」

「ギイッ!?」


 魔力を膨張させたリコが打ち勝ち、棍棒と共にホブゴブリンの巨躯が仰け反った。


「ここだ!」


 その隙を逃さず、リコは猛スピードで突っ込み――


〝ふぁっ!?〟

〝え!? バイクで登ってる!?〟


 ――ホブゴブリンの巨体を、足から一気に登っていく。


 肩まで登ったリコは、そのまま再びホブゴブリンの頭上へと飛んだ。


(巨大な相手、上等じゃないか!)


 リコの脳裏を過ぎるのは、幼少時代から幾度となく見て憧れてきたヒール役プロレスラーである両親の姿だ。


 筋骨隆々の父親も勿論格好良いが、リコが特に感銘を受けているのは、彼女と同じく小柄ながら巨躯を誇る対戦相手を何人も倒してきた母親だった。


(あたしもお袋みたいな格好良いヒールになりたい!)


 決意を新たにして見据えるは、眼下に見える巨大なモンスター。


 体勢を立て直したホブゴブリンが見上げて、迎撃せんと棍棒を振るい、リコは釘バットを振り下ろす。


「ギイイイイイイイイイイッ!」

「おらあああああああああッ!」


〝〝〝〝〝行っけええええええ!〟〟〟〟〟


 リスナーたちの応援が重なった刹那。


「ギイッ!?」


 釘バットにぶつかった棍棒が粉砕。


「食らえ! これが真のヒールの力だあああああああああああッ!」


 勢いそのままに、リコは釘バットをホブゴブリンの顔面にぶち当てた。


「ギャアアアアアアアアアアアッ!」


 断末魔の叫びと共に、ホブゴブリンの頭部がひしゃげて消滅。魔石へと姿を変える。


〝うおおおおおおお!〟

〝スゲーえええええ!〟

〝S級モンスター11匹をソロ討伐しちまった! しかも無傷で!〟

〝これもう、完全に六英傑レベルじゃねぇか!〟

〝下手したら六英傑最強とかあるんじゃね!?〟

〝いやいや、それはないだろ。金翔が最強定期。まぁ、今は毒にやられて入院中な訳だが・・・〟

〝少なくとも銀蛇よりかは強いだろw〟

〝それはそうw〟

〝間違いないw〟

〝あんなのとねこちゃんを比べるなw 失礼だろw〟


「ふぅ」と息を一つついて、ミニバイクを元の笹舟もどきに戻したリコは、逃げていた魔法陣を探すためにキョロキョロと周りを見回した際に、ようやく配信用ドローンの横に映し出されたウインドウの異変に気付いた。


「ど、同接30万人!? と、登録者数130万人!?」


〝あ! やっと気付いた!w〟

〝ねこちゃん、おめ!〟

〝《謝意手ルナ》ねこさん、本当におめでとうございます!〟

〝まぁ例の如くガンガン切り抜きが作られてるし、〝空飛ぶバイク〟とか〝ホブゴブリンを登るバイク幼女〟〝ジャンプ台(ミノタウロス)〟〝天から降り注ぐ恵み(毒霧)〟とか関連ワードも目白押しだからな! そりゃこうなるw〟


目を疑うような数字に、「はっ!」と、リコは反応して――


「ふええええええん! 怖かったにゃああああああ!」


〝お、おう・・・〟

〝まだやるんか、それ…〟

〝うん、まぁ、怖かったか・・・そうか・・・〟


 ここぞとばかりに全力で泣き真似して、リスナーたちを困惑させた。


 そんなリコは、このボス部屋の中に、彼女が来る前からある人物が隠れていることに、気付いていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。