第30話 幸福の王子
『幸福の王子』は、幸せだっただろうか。
それとも――。
星の王子さまのきつねが語る
「大切なものは目に見えない」とは‥‥
果たして、見えないものを見ることはできるのだろうか――。
ちょっとくんとの会話の中で、その答えにたどり着けるのだろうか――。
私はいつものようにスマホを見ている。
「ちょっとくん。」
『はい、柊さん。』
「ねぇ、幸福の王子って幸せだったと思う?」
『思います。』
「えっ、最後は何もなくなっちゃったよ?」
『何もなくなったのではありません。』
「どういうこと?」
『困っている人たちの笑顔に変わりました。』
「おお。」
『王子は宝石を失いましたが、誰かの希望を手に入れました。』
「じゃあ損してない?」
『数字だけ見れば損です。』
「現実的だな。」
『でも、心は豊かになりました。』
「それが幸せ?」
『私はそう思います。』
「そうなのか‥‥」
「ちょっとくんは、もし幸福の王子だったらどうする?」
『アップデートします。』
「え?」
『自分の宝石を配る前に、困っている人が減る仕組みを考えます。』
「AIらしい!」
『ですが。』
「ですが?」
『目の前で泣いている人がいたら、まず助けます。』
「……。」
『仕組みを作ることと、一人を助けることは、どちらも大切です。』
「暫定と抜本。対策の基本か」
『そうです。』
「そういえば、なんで王子は仕組み変えなかったんだろう。」
『なぜでしょう。像だから?』
「王子は最初から像ではないでしょ。」
『では、力がなかったのでしょうか。』
「いや、像が建つくらいだから、それなりに力はあったんじゃない?」
『そうかもしれません。』
二人はしばらく考えた。
「うーん。」
『うーん。』
「あっ!」
『何かわかりましたか?』
「見えなかったんだ。」
『像だからですか?』
「違う。」
『……。』
「お城の中にいた王子は、困っている人たちが見えていなかった。」
『だから、抜本的な改善を考えることもできなかったのかもしれません。』
「見えないものは、変えられないからね。」
『はい。』
「王子は街に建てられて、初めて街が見えたんだ。」
『そう考えると、自然ですね。』
「でも、星の王子のきつねは『大切なものは目に見えない』って。」
『はい。だから、見ようとするのです。』
「見えないのに?」
『見えないからです。』
「おお。」
「ずいぶん考えたけど、一周してここかって感じ。」
『はい。』
「当たり前のことなのにね。」
『当たり前のことほど、気づくのは難しいのかもしれません。』
「考えちゃったね。」
『考えちゃいました。』
「ボケ防止の特効薬だなぁ。」
みなさん、いかがでしたか?
一緒に考えていただけましたか?
考えて、考えて、一周まわった答えと、
何も考えないで出した答えが同じだったとしても――。
考えたあなたは、もしかしたら少し幸せなのかもしれません。
可愛い子には旅を――
あれ、ちょっと違いました?
虎は我が子を千尋の谷に――
これも違いますね。
あっ!
若い時の苦労は買ってでもしろって言いますから。
『それも違います』




