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その50

「異常個体の調査とはえらく大雑把な内容じゃの」

 調査って言われてもワシこの世界の事ほとんど知らないし、そもそも普通の個体の事すら分かっていない。

「そうだね、それじゃあ一から説明させてもらおうかな」

 そう言うとイライザはソファーにもたれ掛かり足を組み直す。

「とりあえず異常個体の説明は省くとして……」

 いやできればそこも省かないでほしいのだが……

「そもそも異常個体って言うのは一部の地域を除いて年に数件の報告がある程度なんだけどもここ最近その報告があちこちから上がってきていてね」

 むっ! という事は異常個体の発生はワシとは関係ないのか?

「冒険者ギルドとしては放ってはおけない状況となっているんだよ。ランクの低い個体なら討伐依頼を出せばいいだけなんだけど、ただいつどこで異常個体が現れるかというのはさすがに分からない。そこで調査に乗り出すことにしたんだよ。さっきのリッチみたいなのが出だすとなると流石に原因の特定が必要になってくるだろ? そこでだ、」

 イライザは言葉を切り身を乗り出す。

「冒険者ギルドで準備していた調査チームをここオスローに呼ぼうかと思う。そしてその調査チームの護衛を君達にお願いしたい」

 お願いしたいとは言っているがその目は強制的に護衛をしろと言っているようだ、さっきのアシュリーの表情に納得がいった。

「“お願いしたい”と言うからには断っても構わんという事じゃの?」

 有無を言わせぬという雰囲気はあったが念のため確認しておく。

「もちろんさ、冒険者って言うのは自由気ままな職業だ、そこは尊重するよ」

 笑っていない目のまま笑顔を顔に張り付けイライザが答える。

 断るという選択肢も得たがワシとしては異常個体というものが喉に引っかかった小骨の様な物だ、できればすっきりとさせておきたい。

「アシュリーよ、ワシはこの依頼を引き受けようと思うのじゃがどうじゃ?」

 イライザに対して良くは思ってないであろうアシュリーに訊ねる。

「師匠がそうおっしゃるのなら私は構いません」

 アシュリーの答えは予想していたものだった。

「メリルはどうじゃ? また一緒にダンジョンに行ってくれるか?」

「もちろんなのです! Aランク冒険者のメリルはどこだって行くのです!」

 Aランクというところに力を込めてメリルが了承の答えを返してくる。大人の女の子でAランク冒険者、メリルには不思議な肩書が増えていきそうだ。

「良いじゃろう、この依頼はワシ等三人で引き受けるとしよう」

「いやあそれはとても助かるよ」

 イライザはワシの返答でさっきまでの圧を消し無邪気に笑う、まったく読めない女だ。

「しかし、いきなりDランクのワシがAランクになど本当に大丈夫なのか?」

 ワシとしては実績を積みながらランクアップを楽しみたかったのだが。

「そこは任せてよ、なにせ私はギルド本部でもそこそこ偉いんだからね。マスター、十兵衛とメリルのランク昇格用の書類用意してくれる?」

 ニコニコとした笑顔のままイライザはギルドマスターにそう伝える。

「では要件はこれで終わりじゃな、また予定が分かれば連絡を頼んでおくとしようかの」

 そう言うとソファーから立ち上がり扉へと向いドアノブに手をかけた時イライザが後ろから声を掛けてきた。

「そうそう、この依頼は異常個体の調査なんだけど、今回のダンジョンでの調査はその一環ってだけで調査はこの先も続くからよろしくね! それと剣姫、例の件まだ諦めてないからね」

 その声に振り向くとイライザはとてもうれしそうに笑顔を向けてくるのだった。

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