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その46

 リッチを倒したワシとメリルはホールの奥にある上の階層へと続く階段を上がっていった。

 階段を上がるとそこは今までクリアしてきたボス部屋を抜けた先にある物と同じ様なこじんまりとした部屋、セーフティーエリアになっていた。

 そして部屋の中央にはこれまでと同じように台座が据えられており、その台座の側面には“四十”と刻まれていた。どうやらここは四十階層のボス部屋の先のセーフティーエリアのようだ。

「十兵衛さん、台座があるのです! 手をかざしてこの階層クリアの登録をしてしまうのです!」

 メリルに促され台座へと向かう。しかしワシらはこの階層のボスを倒してはいないのだが果たしてクリアの登録ができるのだろうか?

 多少の疑問はあったがメリルと共に台座に手をかざすと台座が淡く光る。どうやら台座に触れさえしてしまえばボスを倒したかどうかは関係ないようで無事登録がすんだ。

 台座での登録が済むと部屋の隅に魔法陣が二つ、光と共に現れた。

 アシュリーと共にダンジョンを進んできたときに教えてもらった通りなら一つは地上に、もう一つはこのボス部屋の前にへと転移できるものだ。

「じゃあ十兵衛さん早速ボス部屋の前に移動しましょう」

 胸の前で両手でぎゅっと杖を握り締めメリルがこちらを見つめてくる。

「メリルは地上に戻らぬのか?」

「何を言っているのですか、十兵衛さんのお弟子さんと合流するのです! それまでは私も一緒に行くのです。なにせ私はAランク冒険者になる大人の女の子なのですから!」

 どうもメリルはこのフレーズを気に入っているようだ。しかしありがたい言葉だった。

「すまぬなメリルよ、よろしく頼むとしよう」

 メリルに微笑みかけるとそれにこたえる様にメリルも屈託のない笑顔で答えてくれた。

 そして魔法陣に向かおうとした時、ボス部屋に続く扉が鈍い音を立てて開き始めた。

「師匠!!」

 開いた扉から掠れてはいたが聞き覚えのあるいつもの声が聞こえた。

「アシュリーか?」

 開いた扉には所々傷を負ったアシュリーが抜き身の剣を手に持ったまま立っていた。

「ご無事で何よりです、いえ、師匠が無事なのは疑ってはいなかったのですが……」

 肩で息をしながらアシュリーはそこで声を詰まらせた。

「心配を掛けてすまなかったのアシュリーよ。それよりも傷だらけではないか、アシュリーの方こそ大丈夫なのか?」

 ワシの言葉で初めて気づいたかのようにアシュリーは自分の身体を確認する。

「はい、私なら大丈夫です。早く師匠と合流しなければとポーションを使う間を惜しんだだけでこの程度の傷なら何ともありません」

 アシュリーはそう答えると改めて自分の身体を確認すると腰のポーチからポーションを取り出し飲み干した。

「十兵衛さん、この大人の女性ががお弟子さんなのですか?」

 後ろから恐る恐るメリルが問いかけてくる。自分の事は女の子なのにアシュリーは女性と表現する辺りメリル自身にも自覚はあるようだ。

「そうじゃ、リッチのところに行く前に話したワシの弟子でアシュリーじゃよ」

「おおー、本物の大人なのです!」

 目を大きく開きメリルは感嘆の声を上げる。

「師匠、今リッチと聞こえたのですが?」

「ああ、ここに上がる階段の前にリッチがおっての。ついさっき倒して上がって来たんじゃ」

「リッチを倒したのですか!? そちらの少女は神官ではなく魔法使いに見えるのですが?」

 アシュリーはワシの言葉に驚いたようにメリルに視線を向ける。

「少女じゃないのです、大人の女の子なのです! 後、私は純粋な魔法使いなのです!」

 どうやら自覚はあるようだがそこは譲れないみたいだ。

「神官が居ない状態でリッチを倒したのですか?! さすが師匠です!」

 あ、なんかこの言葉すごく落ち着く。

「こちらの大人の女の子はメリルじゃ。飛ばされた先でたまたま出会っての、一緒に行動しておったんじゃ。リッチもメリルがおったから倒せたんじゃよ」

「そうでしたか。大人の女の子メリル、師匠に手を貸してくれてありがとう」

 アシュリーから礼を受け、メリルがもじもじとしている。しかし大人の女の子という部分が名前の様になっているところは気にしないでおこう。

 そしてワシ達はセーフティーエリアで少し休息を取ると地上へ戻ったのだった。

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