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その45

 リッチの奴めさっき斬られたのがよほど嫌だったのかなかなか下に降りてこないな。どうにかして刀の届くところに引き摺り込みたいところなのだが。

 しかしやはりこの魔物の目も真っ赤だ、異常個体で間違いないのだろう。一体異常個体というのはなんのだろう? なぜワシのいく先々で現れるのか?

 宙に浮かぶリッチを見ながらそう考えていた。というか、考え事が出来るってワシ結構余裕あったりする?

 いかんいかん、分からないことは考えても仕方がない。今は目の前のリッチに集中しよう。

 しかし気を取り直して構えてはみたもののこの距離は厄介だな。

 ワシの刀の一撃を受けてからリッチの奴は一定の距離を取り続けながら魔法を撃ってくるばかりで浮かんだまま降りてこようとしない。

 この距離からの魔法なら躱せもするし斬ることも容易い。ワシとしてもダメージを受ける事は無いのだがこれでは完全に膠着状態だな。

「どうしたリッチよ、お主の魔法は当たらんぞ。降りてきて勝負せい!」

 もしかして言葉が通じるかと思ってはみたものの反応はない、ただの屍のようだ。

 仕方ないこちらから仕掛けてどうにか距離を詰めるとしよう。

 先ずは唯一の遠距離攻撃の斬撃。

「せいっ! せいっ!」

 この距離からリッチに届くのはこれしかない、連続の斬撃だ。

 だがやはり斬撃はリッチの身体をすり抜けて後ろの壁に当たるだけ。ならこれはどうだ?

 斬撃をリッチの頭上に向けて放つ。

 リッチの真上の天井に斬撃が当たり瓦礫がリッチに降り注ぐ。が、瓦礫はリッチの身体をすり抜け土埃を立て地面に落ちるだけだった。

 やはり物理的な攻撃は当たらないか……

 ではこれはどうだ? 刀を構え直し、魔法を斬るときの感覚で斬撃を放つ。

 放った斬撃をリッチは先ほどまでと同じように正面に見ていたがすんでのところで回避した。

「ほう、これは避けるんじゃの」

 どうやらこれならリッチにも当たるようだ。

 突破口が見えたところで斬撃を放ち一気にリッチとの距離を詰めに行く。

 魔法を斬る斬撃と普通の斬撃を織り交ぜリッチの頭部に向け連続で撃ち出す。

 それを躱そうとリッチはやや下へと降りてくる。

 更にそこに連続の斬撃を放ちながらリッチへと近づく。

 いくつかの斬撃がリッチの法衣を掠め斬り裂くが本体へは当たらない。

 やはりこの距離ではなかなか当たらないか、どうにかリッチの動きを止めたいところだな。

 先程の膠着状態よりはリッチに近づけはしたが、しかしこの広いホールではリッチの逃げ場だらけでなかなか距離が詰まらない。

 そして何度目かの斬撃を放ったところで状況が変わる。

「サンダーショット! サンダーショット! サンダーショット!」

 リッチの身体がバチバチと光で覆われ動きが止まる。

 そしてワシの放った斬撃がリッチの腕を斬り裂く。

「グガアァァァー!」

 斬撃を受けたリッチが叫び声を上げ高度を下げる。

「十兵衛さん今なのです!」

 通路の入り口付近で杖を構えたメリルの姿が見える。

「助かる、メリルよ」

「私もやる時はやるのです、Aランク冒険者になる大人の女の子なのです!」

 メリルの魔法を受け刀の届く距離まで降りてきたリッチに向け一足に飛び込み渾身の一撃を浴びせる。しかし大人なのに女の子ってどういう事?

 肩口から袈裟切りに一撃を受けたリッチは咆哮を上げ動きを止めると粒子となり消えていった。

 リッチの消滅を確認すると刀を鞘に納める。

「やったのです十兵衛さん、すごいのです! リッチを剣で倒してしまうなんて凄すぎるのです!」

 右手に杖を握ったまま両手を大きく上げ、メリルが嬉しそうに走り寄ってくる。

「メリルの魔法のおかげじゃよ、ありがとうな」

「そんな事ないのです、私の魔法は動きを止めただけでダメージは与えてないのです!」

「では二人での勝利じゃな」

「はい! 二人での勝利なのです!」

 満面の笑顔でメリルが見上げてくる。かわいらしい孫というイメージだったがメリルだったがこれからはかわいらしい大人の女の子に格上げしておくことにしようと心に誓うワシであった。

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