その43
メリルの記憶を若干参考にしつつダンジョンを行ったり来たりしながらなんとか進んで行く。
途中でいくつかの戦闘もこなしたのだがメリルの魔法はなかなかの物だった。
「ファイヤーランス! ファイヤーランス! ファイヤーランス!」
目の前で本格的な魔法を初めて見てテンションが上がる。
「すごいの、魔法とはそんなに連続で撃てるものなのか?」
「魔法の連射速度ならAランク冒険者にも負けないのです!」
腰に手を当て得意げなメリル、かわいい孫だ。
「精度や威力はまだまだ修行中ですけど連射速度だけはお師匠様も褒めてくれるのです」
Bランク冒険者でダンジョンを二十階層まで攻略したというのは伊達ではなさそうだ。
魔法の連射で今の階層の魔物も一体ならメリルも問題なく倒せている、大したものである。
「ところでメリルよ、今から向かおうとしているリッチの目は赤かったかの?」
いるはずのないリッチが居たと聞いた時から引っかかっていた事を確認してみる。
「んー、はっきりと見たわけではないのですが多分赤かったと思います。確かリッチの目は青白かったはずなのですが……」
うん、やはり異常個体で間違いなさそうだ。ワシが行く先々で必ずと言っていいほど現れるやつだ。
ここまで行く先々で異常個体と遭遇するとなると何かワシに原因があるのではないかと思わずにはいられない。ワシがこの世界にやって来た事と何か関係があるのだろうか?
しばらく色々と考えてはみたが何せワシはこの世界の事をほとんど知らない。なので考えたところで答えが出るはずもない、なので考えないことにした。今はとりあえずリッチを倒して上の階層に上がるだけでいいという事にした。
そしてそうこうしているうちに目的の場所へとたどり着く。
「十兵衛さん、あれなのです! リッチなのです!」
メリルが少し開けたホールのようになった場所を指さした。
よく見るとそのホールに一体の魔物が宙を漂うように徘徊している。リッチって空飛ぶんかい!
通路からホールの様子を伺い、メリルと作戦会議を始める。
「メリルよ、リッチに魔法は効かんのじゃな?」
「全くではありませんけどあまり効果は無いのです」
チラチラとリッチの方を気にしながら小声でメリルが答える。
「ならワシが出ていって斬るとしようかの」
「十兵衛さん、神官が居ないのに自殺行為ですよ!」
ワシの事を気にかけてくれているのだろう、メリルはワシを止めようとしてくれる。
「何どうにかなるじゃろ、武闘大会の時は木刀じゃったが今は刀がある」
ポンと腰に差した刀を叩いて見せる。
「ぼくとう? あ、木剣の事ですか? ていうか木剣で魔法を斬ったのですか? そんなの無茶苦茶です、魔法使いの立場が無いじゃないですか!」
さっきまで少し怯えた様子だったメリルも少し元気になったようだ、さて行くとしようか。
「メリルはここで待っておれ、他の魔物が来たら得意の魔法で倒してしまうんじゃぞ」
「わ、分かりました! 魔法を撃ちまくってやるのです、蹂躙してやるのです!」
やる気になったメリル見て綻んだ気持ちを切り替える。
「では行くぞ!」
素早く抜刀しホールへと駆け出しリッチに向け斬撃を飛ばす。
しかし斬撃はリッチの身体を揺らしただけでリッチの身体を通り過ぎていく。
「斬撃では斬れぬか、ワシもまだまだ修行が足らぬようじゃの」
斬撃は効いていないようだがリッチの気は引けたようで宙を漂っていたリッチがこちらに迫ってくる。
一先ずメリルの居る通路から離れた場所へと走り、リッチをそちらに誘導していく。
リッチしか居なかったホールへの侵入者にリッチは魔法を放ってきた。
青い炎が三発、走るワシのすぐ左右と後ろに被弾する。先ずは小手調べというところか。
横目で捉えていたリッチが次の魔法の詠唱を始めたのを確認すると足を止め刀を構える。
そして放たれた大きな青い炎を一刀に斬って見せた。
それを見たリッチは少し警戒したような様子で距離を取り続けざまに魔法を放ってくる。
ワシはリッチが放った魔法に向かって走り出すと迫る魔法を躱し、斬り伏せリッチとの距離を詰めた。
そしてその勢いのまま飛び上がると一気にリッチへと斬りかかる。
しかし高さが少し足りずリッチの足先にしか刀は届かなかった。
「ゲギャァァァー!」
足先にワシの一撃を受けたリッチが悲鳴を上げる。掠った程度ではあったがどうやらワシの攻撃は霊体であるリッチにも効くようだ、これなら何とかなりそうだ。
ただ問題はどうやって宙に浮かぶリッチにワシの攻撃を当てるかという事になる、さてどうしたものか?




