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その41

 自称十六歳のメリルと合流したワシはもう少し詳しく状況を確認することにした。

 どうやらダンジョンで出現する魔物には法則性というか一定のルールがあるようでその階層に出現する魔物の種族は一種類だという事だった。なんとなく進んできたダンジョンだったが確かにアシュリーと進んできた階層もそうだった。

 しかしこの階層にはリッチとトロールという違う種類の魔物が出現しているらしい。なぜ同じ種族だけなのかというところはダンジョンとはそう言うものだということしか答えは返ってこなかったが……この辺りは異世界の常識なのだろう、全てファンタジーとして処理しておくことにしよう。

 そして問題なのはここが何階層か全くわからないという事だ。

 メリルもお師匠様とやらに飛ばされてここに居るという事なのでここがどこなのかは分からない。ただ今まで来たことが無い場所なのは確かなのでメリルが攻略したことのある二十階層よりは先なのは間違いない。さてどうするか……

「とりあえず上を目指して進むしかないかの」

 アシュリーが居ないとこの世界では情弱なワシはちょっと剣技が扱えるただの老人である賢明な判断だと思うのだが……

「ダメなのです十兵衛さん! 上に戻るためにはリッチを倒さないといけないのです!」

 メリルが猛烈に反対してくる、さてどうしたものか。

「リッチというのはそんなに強いのかの?」

「強いとか弱いとかじゃないのです、相性の問題なのです! 魔法は効かないし霊体なので物理攻撃も効かないのです、今の私達では手も足も出ないのです!」

 どうやらリッチはアンデッド系の中でも霊体で神官が居なければ倒せないらしい。しかも通常であればボス部屋で出てくる魔物で普通に強いようだ。

「霊体か……それは難儀じゃの」

「そうなのです、難儀なのです!」

 なぜか嬉しそうに答えるメリル。どうも自分の意見が認められると喜ぶようだ、承認欲求というやつか?

「まあどうにかなるじゃろ」

「どうにもなるわけないのです!」

 頑なに抵抗するメリル。しかし木刀で魔法を斬れたのだし今はいつもの刀がある、霊体でも斬れるだろう。

「しかしここでじっとしていても仕方ないじゃろ、とりあえず様子でも見に行かんか?」

「確かにそうなのです、食料も何もありませんしこのままではジリ貧なのです」

 仕方ないという感じでメリルも渋々納得してくれた。では冒険の再開といこう。


 メリルの同意を得てリッチのいたという場所へ向かう事にした。

「メリルよ案内を頼んでもいいかの?」

「分かったのです」

 ワシが前を進み後ろからメリルが道を教えるという感じで何階層か分からないダンジョンを進む。

「あっちなのです」

 後ろからメリルが道を指し示す。いや、後ろで指さされてもワシには見えないんですけど?

 メリルの声が聞こえるたび後ろを振り向き指さす方向を確認しながら先を進む。

「メリルよ、後ろを振り向きながら進む先を確認するのは百歩譲っていいとして道は本当に合っているのか?」

「大丈夫なのです、何も問題は無いのです!」

「では、この壁の印はなんじゃ?」

 メリルの指示通り進んできた先には先程ワシが目印として壁に付けた印が見えていた。

「も、もしかしてこれはダンジョンのトラップなのですか!?」

 うん、迷子確定である。二人とも初めて来た階層である、道など分かるはずもなかった。

「仕方がない、分かれ道ごとに印をつけて進むとしようかの」

 進む先が分からない事は困るがメリルの案内が役に立たないと分かっただけでも良しとしよう。

 仕切り直して目印を付けつつ進んで行くと道の先から何かがやってくるのを感じ取った。

「十兵衛さん、何か来るのです」

 案内はダメダメだったメリルだったが冒険者としては有能なようだ。

「準備は問題ないかの?」

「いつでも蹂躙してやるのです」

 不穏な言葉を発しつつメリルも戦闘態勢に入っていた。

 足を止め近づいてくる気配に集中するとその気配が姿を現した。

「アシリアキングナイトゴブリンなのです!」

 現れたのは緑色の巨体に大きな両刃の剣を携えた魔物だった。いや、だからキングでナイトって何なの?

 アシリアキングナイトゴブリンは両刃の大剣を振り上げるとワシに向かって振り下ろしてきた。

 大剣に刀を添わせ、いなす。すぐ横の地面に大剣が叩き付けられ地面が大きく抉られる。

「なかなかの力自慢の様じゃの」

 大きく地面を抉った大剣を握ったままの伸びきった腕に刀を振り下ろす。

 そのひと振りでアシリアキングナイトゴブリンの腕は肘から先が身体から切り離された。

「ギギャァァァー」

 腕を斬り裂かれたアシリアキングナイトゴブリンは叫び声をあげ後ろに大きくのけ反った。

 そしてのけ反ったアシリアキングナイトゴブリンの横をすり抜ける様に踏み込むと横一閃に足を斬り裂き、体勢を崩し刀の届く位置に倒れてきた首を斬り上げる。

 ゴトリと地面に転がった首を見つめ、動かなくなり消えてゆくアシリアキングナイトゴブリンを確認すると刀を鞘に納める。

「え? え?」

 振り返るとメリルが驚いた表情をしている。何かあったのか?

 はっ! しまった特定部位の採取を忘れていた。メリルが驚くのも無理はない。

「アシリアキングナイトゴブリンの特定部位が分からなくての、採取を忘れておったわい。すまぬの」

 一時的にとはいえパーティーを組んだ形になっているのだ、討伐を証明する物が無くては戦闘が無駄になってしまう。ここは素直にメリル謝らなくては。

「なんなんですか、なんなんですかー、なんなんですかー!」

 その日二度目のメリルの叫び声がダンジョンに響き渡った。

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