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その38

 ワシとアシュリーは五階層目でのボス戦を終え六階層目へと降り立った。

 五階層のボスであるアシリアレッサードラゴンは倒した後に消滅していってしまったためにステーキとなる肉を採取することが出来なかった。非常に残念である。

 ボスを倒し肉は取れなかったがドロップ品としてアシリアレッサードラゴンの爪が手に入った。一体どういう仕組みなのかファンタジーという言葉で解決するにしても謎過ぎる。

 何はともあれボス部屋から降りて来たここ六階層目からは魔物のランクが少し上がるという事で気を引き締めていかないといけない。

「アシュリーよ、ここから先の魔物は何が出るんじゃ?」

 知らないことはきちんと聞く、これはとても大事な事である。

「はい、六階層目からはアンデッド系の魔物になります。今までよりも数が多くなるのとBランクの魔物も混じってくるのでここからが本番というところですね」

 なるほど、ここまではチュートリアルといったところという感じだと思っておこう。それにしてもアンデッドか、実態のある魔物なんかならいいのだが霊体の魔物とか出てきたら刀で斬れるのだろうか?

 そして少し進んだところで第一アンデッドと遭遇する、盾と片手剣そして槍、弓で武装したスケルトン三体だ。

 盾と剣を装備したスケルトンと槍を持ったスケルトンの二体がこちらに近づき、弓を持ったスケルトンがこちらに向かって矢を番える。

「剣と槍はワシが引き受ける」

 そうアシュリーに声を掛け、弓を持ったスケルトンの射線を切る位置に二体のスケルトンを誘導する。

「分かりました」

 そう答えたアシュリーはワシの横をすり抜けると後方の弓を持ったスケルトンに一気に迫り一撃を加えるとすぐさま槍を持ったスケルトンにも後ろからその剣を振り下ろす。

 そして盾と剣を持ったスケルトンと一対一になったワシはスケルトンの剣をいなし斬り伏せると戦闘は終了した。

「個々は大した事は無いが連携してくるのは面倒じゃの」

「そうですね、ダンジョンの魔物と外の魔物の大きな違いですね。ですのでダンジョンは基本パーティー推奨になっています」

 魔物も連携して戦闘を行うというのは驚きだ。しかし脳のない骨だけのスケルトンはどうやってものを考えているのだろう、全く以ってファンタジーである。

 ファンタジーと言えば、このダンジョンは五階層目までは壁の色が黒っぽかったのに対しここ六階層目からは少し茶色がかった色に変わっている。あからさまにさっき迄とは違いますよと言いたげだ。実際違うのだけれども。

 その後も壁の色の変わったダンジョンの魔物を倒しながら進んで行く。

 そして順調にゾンビやグール、腕が四本生えたスケルトンなどを倒しながら十階層へとたどり着き、次のボス部屋の前へと差し掛かった。

「次のボスはどんな魔物なんじゃろうな?」

 情報は大切なのでここはアシュリーに聞いておくのが正解だろう。

「ここのボスはアシリアキングナイトスケルトンですね」

 キングなのにナイトとはこれ如何に? 幾ばくかの疑問を抱き扉へと近づいた時だった。

 足元が淡く光り、魔法陣が浮かび上がると周囲が白い光に包まれる。

「師匠!」

 アシュリーの声が遠くに聞こえ、気が付くとワシはさっきまでいた場所とは違うところに立っていた。

 足元の魔法陣から発せられた光が次第に弱くなり周りがはっきりと見えだした。

 周囲の壁は灰色なのだろうが仄かに光っているので銀色のようにも見える。壁の色が変わっているという事はさっきまでいた階層よりはさらに奥なのだろうと予想できた。

 が、しかし頼りのアシュリーが居ないのでここがどこなのかは皆目見当がつかない。恐らく転移トラップというやつなのだろう、これは完全に迷子確定だ。

 周囲を見回し状況を確認してみるがそもそも全てアシュリー任せでダンジョンに入っていたので確認してみたところで何も分からない。いい大人というか老人が迷子だ、迷子センターとかないのかな? できればアシュリーを呼び出してもらいたい。

 じっとしていても仕方がないので適当に進んでみることにした、果たして進んでいるのか戻っているのかも分からないのだけれど。

 道はいたるところで分岐していて既に飛ばされたであろう場所にも戻れそうにもない。何か書くものでもあればマッピングもできるのだが生憎そう言ったものは持っていない。これ詰んでね?

 それでも勘に任せて進んでいると遠くから声が聞こえてきた。

「ぎゃぁぁぁあああーー」

 その叫び声はどんどん近づいてくる。魔物ではなく人の様だ。

 そして目を凝らしよく見てみると大きな魔物に追われるように少女が必死の形相で髪を振り乱し走って来ているのが目に入った。

 目に涙を浮かべながら必死で走る少女と目が合う。

「逃げてぐだざーい、私も逃げまずがらーー!」

 そう叫びながら流れる涙も鼻水も拭うことなく少女は迫ってきた。

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