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その36

 武闘大会から一夜明け、ワシとアシュリーはアシリアダンジョンの入り口の前に来ていた。

「ついにダンジョンデビューじゃな」

「一気に踏破ですね、師匠」

 相変わらずアシュリーはワシにダンジョンをさっさと踏破させたいようだ。

 ダンジョンの入り口には武装した騎士が二人立っていてダンジョンに入って行く冒険者の入場許可証を確認し入場料を徴収していた。

 ワシは武闘大会の副賞で手にした入場許可証をすっと騎士に掲げて見せる。

「武闘大会の優勝者か、通っていいぞ」

 騎士は事務的にそう答えると次の冒険者の対応に移る。それなりに苦労して手に入れた割にあっさりしたものだ。

 問題なくダンジョンへと入るとアシュリーと共に奥へと向かって進んで行く。

 奥へと進むにつれ通路の幅が広がっていき、二人で横並びになっても十分に剣が振れるほどの広さがあった。

 アシリアのダンジョンは洞窟状になってはいたが壁が仄かに光っておりそれなりに視界は確保できたが奥まで見通せるというほどではなかった。

「ダンジョンとはどこもこんな感じなのかの?」

 ダンジョン素人のワシは早速異世界ガイドであるアシュリーに質問を浴びせる。

「ダンジョンは場所によっていろいろなタイプがあります、アシリアのダンジョンは洞窟タイプですね。他には遺跡の様な物や外と同じような草原や森が広がっている物もあります」

 おお、遺跡に外と同じようなフィールドまであるのか、これはあちこちのダンジョンに寄らなければいけない。

「それと、ダンジョンの魔物は倒した後一定の時間で消滅してしまいます」

「消滅?」

 理解が追い付かず言葉が漏れた。アシュリーが言うにはダンジョンの魔物は倒すとその言葉通り消えてしまうのだそうだ。ただし特定の部位に関しては身体から切り離しておけば手元に残るらしい。

 なので冒険者ギルドでダンジョンでの討伐依頼を受けた時は魔物が消えてしまう前に魔物ごとに異なる特定部位を取り除いておかなければいけないという事だった。

 そして消えてなくなってしまうのは魔物だけではなく魔物に敗れ力尽きた冒険者も同じだと言う。

 ただ、消えてしまうのは冒険者の肉体だけで身につけている物は残るようでダンジョンの中で装備品等を見かけた時はそれはそこで冒険者が死んだことを意味するという事だった。

 はじめに冒険者登録をした時に渡された冒険者タグはダンジョンで命を落とした冒険者を識別するためのものだった様だ。ドックタグの様だと思ったそれはそのままドックタグだった訳である。

 それにしても一定時間で消滅してしまうというのはどういう理屈なのだろうと疑問に思いアシュリーに聞いてみたのだがこの世界ではそういうものという認識でしかなくその理由は分からないという事だった。そしてそれは改めてここが異世界だという事を認識させられる事でもあった。

 アシュリーからレクチャーを受けつつダンジョンの奥へとさらに進んで行くと魔物の気配を感じ取る。ダンジョンでの初戦闘である。

 現れたのは三体の蜘蛛の魔物だった。人の背丈ほどもある蜘蛛はなかなかグロテスクだ。

 すぐさま抜刀し一番右の魔物に斬りかかる。それに合わせる様にアシュリーは左の魔物へと向かう。

 吐き出された毒液を躱し蜘蛛の頭部に刀を振り下ろしそのまますぐ横に居たも一体の胴体を斬り上げる。そして左の一体を仕留めたアシュリーが胴体を斬り裂かれたもう一体の頭部に剣を突き刺す、ダンジョンで初の魔物討伐完了である。

 冒険者ギルドで聞いておいた討伐部位の足の先端部分を採取し終えしばらくするとアシュリーから聞いていた通りに魔物の残骸が空間に溶けていくように消え、魔石だけがその場に落ちていた。

「なるほど、消滅したの」

 手に持った討伐部位の足の先端と残骸が消えていった空間を見比べ自然と言葉が漏れる。

「はい、倒した魔物は消えてまたどこか別の場所で新し魔物が生まれています。倒さなくとも魔物は生まれてくるようで冒険者が間引かなければダンジョンは魔物で溢れ返ってしまうと言われています」

 いわゆるスタンピードというやつだろう、ダンジョン内にいるうちは実害はないが溢れてダンジョンから出てこられては大変なことになる。冒険者ギルドで恒常的に討伐依頼が出ているというのも頷ける。

「では先に進むとしようかの」

 アシュリーにそう声を掛け更にダンジョンの奥へと進んで行った。

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