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その29

 武闘大会の会場、その舞台にワシは立っていた。

 目の前には大きな戦斧、たしかバトルアックスと呼ばれる物を肩に担ぐ大柄の男が立っていた。

 男の持つ戦斧は金属特有の鈍い光を放ち、これを受けた者が悉く無事では済まない事を物語っていた。

 そしてワシは手にした木刀を構える。なんでワシ木刀持ってんの?


「師匠、それは何をされているのですか?」

 冒険者ギルドでの依頼に出た時に拾ってきた棒切れをナイフで削っているとアシュリーが声をかけてきた。

「これか? これは木刀じゃよ」

「ぼくとう? 何ですかそれは?」

 この世界ではワシの持っている刀はとても珍しい物のようでアシュリーでもワシ以外に持っている者を見た事が無いと言っていた。

 つまりは木剣はあっても木刀は無いという事だ。

 アシリアの武器屋を見て回ったのだが置いてあるのは木剣だけだった。そもそも木剣自体もあまり置いているところも無かったのだが……まあダンジョンに木剣で挑むような物好きはいないという事だ。なので仕方なく自分で作ることにしたのだ。

「そのぼくとうは何に使われるのですか?」

 ワシが棒切れを削りながら刀の形に整えていく様を珍しそうに眺めながら更にアシュリーが尋ねてくる。

「武闘大会に持って行くんじゃよ。やはり木剣よりも木刀の方がしっくりくるのでな」

「武闘大会にですか……なるほど、さすが師匠です」

 なんか最近アシュリーからさすが師匠という言葉をよく聞くな、略して言われないのは敬意を払われていると思っておこう。


 そして武闘大会当日、出場者登録の確認の時に持参した装備と持ち物のの確認も行われた。どうやら自らが使える能力以外の補助的な物は持ち込めないらしくポーションの類もダメだという事だった。

 確かにポーションを大量に持ち込んでがぶ飲みなんてされたらいつまでも決着がつかなくなる。装備などにも稀にそういった補助機能の付いたものもあるようでその検査もするらしい。そんな便利な装備まであるとはさすが異世界といったところだろう。

 そしてそこで気付いたことがある。あれ? 武闘大会って手合わせ的な感じで木剣なんかで腕試しなやつじゃないの?

 そしてワシの装備を確認していた係員が戸惑うように訊ねてくる。

「か、変わった木剣ですね。ほんとにこちらでよろしいのですか?」

 よろしいも何もワシの刀はアシュリーに預けてきて今はこの木刀しか持ってない。ワシダンジョンの許可証もらえないかも……

 無事に? 確認が終わり既に組み合わせが決まっていた第一試合にワシは出場する事となった。


「皆様お待たせいたしました! 二年に一度、アシリアの一大イベント武闘大会の開催です。まずは第一試合の選手の紹介です!」

 司会進行役が良く通る声で会場にアナウンスを始めると会場に詰め掛けた観客から地鳴りのような歓声が上がる。

「まずは前回大会で準決勝まで勝ち進んだ戦斧使い、最もAランクに近いと評判のBランク冒険者、オーレ・サ・マーです!」

 会場の歓声がさらに大きくなる。相手は前回大会のベストフォーで結構な大きさの戦斧を持ってるんだけど木刀でどうにかなるのだろうか?

「対しまして挑みますのは今回が初出場の……え、えーとDランク冒険者?、ぼ、木剣使いの十兵衛!」

 先程の歓声が嘘のように会場が静まりざわめいている。うんまあそういう反応になるわな、ワシでもそうなる。

「それではアシリア武闘大会第一試合、始め!!」

 会場のざわめきをよそに司会進行役の高らかな宣言で第一試合が開始された。

「爺さん、本気でそんな棒切れで俺様とやり合おうってのか? 相手がこの俺様なんだ、負けた時の言い訳なんて用意しなくてもいいんだぜ」

 試合の開始が告げられたにもかかわらず目の前の大柄な俺様は戦斧を肩に担いだまま余裕の態度でがやたらと煽ってくる。なんか隙だらけなんだけどこれって撃ち込んでいいやつなのか?

「試合の前には舌戦的なやつをするものなのかの? それともお前さんの言うところの負けた時の言い訳というやつかの?」

 分からないことは聞いた方が早い、アシュリーなら間違いなく教えてくれるのがいい証拠だ。

「なんだとジジイ、生きて帰れると思うなよ!」

 そう大声で吠えた俺様な男は肩に担いだ戦斧を大きく振りかぶり突進してきた。あっ、なんかめっちゃ怒った、分からない事を聞いただけなんだが。

 相変わらず隙だらけで俺様が前に出てくる。あまりにも隙だらけで適当に木刀を振っても当たりそうな気がする。

 もしかしてわざと隙を晒してさそっているのか? アシュリーに言った言葉を思い出し気を引き締め細心の注意を払いがら空きの胴に踏み込みざまに横薙ぎの一太刀を撃ち込む。

 すぐさま振り返り木刀を正眼に構える。しかし俺様のその大柄な体はどさりと音を立てその場に倒れた。

 俺様が起き上がらないのを確認し、構えを解く。加減はしたし死んではないよね?

「しょ、勝者、木剣使いの十兵衛!!」

 そして会場にワシの勝利が告げられた。

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