19話 見るだけ
何でストーカーしてるのかと言われ焦る。理由次第では助けるのを手伝わされそうだ。
「えっと…コンビニ行こうとしたらあなたを見つけまして…」
最後の方の声が小さくなる。
コンビニなんてもっと近くにあるがそれしか理由が思いつかなかった。
「じゃあ、ついでに慎太郎くんも助けに行こうか」
「だから無理ですって」
掴まれそうになった腕を急いで引きながら言う。
このままじゃ連れてかれる。どうにかしないとと思うがどうにもできず、もうここから走って逃げようとした方が良いのかもと思っていたら。
「見るだけでもいいから来てくれない?」
「見るだけ…?」
今までと言ってることが違くて驚く。
「そう。見てくれたら少しは意見変わるかなって」
うちを誘うのをことを諦めてくれたのかと一瞬思ったが全然そうではなかった。どうせ見ても意見は変わらないだろうし男性も諦めないだろう。
「見るだけで終わらないですよね?」
「いや、ほんとに見るだけでいいよ」
悲しそうに言う男性は多分だが無理矢理諦めることで助けることが出来なくなる人たちを思っているのだろう。
「分かりました…」
悲しそうな、迷ったような顔は無理矢理自分を納得させているようで演技にはとても見えなかった。そんな男性をみたら頷くしか無かった。
「良かった」
安心したように言う男性は直ぐにうちの腕を掴んで走る。
「わっ」
急に引っ張られ声が出る。転ばないように足を動かし前を見る。男性は後ろから見ただけでも伝わるほど嬉しそうにしていた。この人は怖いところもあるが、人を助けようとしているだけで本当は優しい人なんだろう。
「あ、そういえば俺の名前は笹原 湊。妹ちゃんの名前は?」
「雨野…」
「雨野はお兄さんと知り合いだから分かるよ」
名前を言うことに距離が近くなるような感じがし、抵抗があるため苗字だけ言ったら笑いながら返された。
「由香里…」
「前の名前は?」
「天野 由香…」
「了解。由香ちゃんね。」
由香里を略した訳でもなく前世の名前で呼んでくれた男性。久しぶりに名前を呼ばれたような感じがし嬉しくなる。
「笹原さんの前の名前は?」
「磯野 葵」
今の名前と似ていない名前だったことに少し驚いた。うちは凄く似ているため笹原さんもそうだと思ったが違った。うちはたまたまだったのだろう。
「どっちで呼んでもいいよ」
「笹原さんで」
「普通だねー」
親戚の小さな子を見るような笑みで言ってくる笹原さん。磯野さんでも良いが他の人から見ると違う名前で呼んでいることになるためやめた。
「改めて自己紹介できたし行こうか」
うちの返事を待たずに前へ進んでいく笹原さんの後ろについて行く。着いた途端手伝えと言われないか不安になる。
「一応確認するね」
後ろを振り向きながら指を4本伸ばして言う。
「まず、慎太郎くんの死因は飲酒運転ってことはわかってるよね?」
「はい」
「なら、次」
わざわざ反対の手を使って小指指を折る笹原さん。
「助ける方法は信号を渡る前に話しかける」
「間に合わなかったらどうするんです?」
「それが3つ目。聞くのが早いよ」
不満そうに言いながらもう一本指を折る。
「慎太郎くんの背中を押して回避する」
「危なくないですか?」
例え救うためだとしても背中を押すのは危険だ。飲酒運転だとスピードも出ているだろうし思いっきり押さないと間に合わないだろう。
顔に傷が出来るかもしれない。もちろん死ぬより全然マシだがもし跡が残ったりしたら可哀想だ。
「だから出来るだけ急ぐ」
歩くスペースを少しづつ早くしていく笹原さん。それにもっと早く言ってと不満に思いながらついて行く。
「で、四つ目は3つ目やるとなった時だけだけど、由香ちゃんが出来ればでいいから信号の反対側に行って押された慎太郎くんを支えて欲しい」
結局は関わることになりそうだ。さっきの見るだけでいいって言ってたのはどこにいったのか。
「見るだけじゃないんですか?」
「由香ちゃんが俺の事追ったりしたり話したりしてなかったら余裕で間に合ってたんだよ?」
「う…」
確かにうちのせいで少し時間を取ってしまった。その代わりに助けるのを手伝えということか。
「分かりました…」
うちはしょうがなく頷き協力することにした。
笹原さんは嬉しそうに満足そうにこっちを見ていた。
「よし、この横断歩道で事故が起きるはずだから一応向こう側に居てね」
「分かりました」
公園から10分ほど歩いたとこにある商店街前の交差点に着いた。確かにこの商店街は原作で見たことがある場所だった。
慎太郎くんらしき人物はまだ来ていなく来るのを待つだけ。笹原さんは見逃さないよう周りをしっかりと見ていた。
10年ぐらい前の記憶を引っ張り出しながら慎太郎くんの容姿を思い出す。
白よりの水色の髪。明るい青色の目。身長が高くスタイルも良い方。大人しく優しい人。
確かモテていた気がする。
それぐらいしか思い出せないうちは危機感を持ち今度持っと細かくまとめたノートを作ろうと決めた。
「ん?」
目を離していたうちに女性に話しかけられていた笹原さん。すごく困ったようにこっちを見ていた。助けてと目線で伝えてくるが、助けているうちに慎太郎くんが来たら助けられないと思い無視した。
「うわ」
無視をしたうちに気付いた笹原さんはうちを指さして女性になにか伝えていた。笹原さんはうちにこっちに来いと手招きをしている。
嫌々笹原さんの方に行こうと横断歩道を渡ろうとしたとき、向かい側に慎太郎くんがいた。
笹原さんに伝えようと見ると笹原さんも気付いて助けようとこっちに来ようとしていた。
「そこの2人!車が突っ込むぞ!」
少し遠くから車の音と注意をする男性の声が聞こえた。そっちを見ると飲酒運転の車がもう近くまで来ていた。周りの人は避難し始めていた。
「ッ…」
反射神経で避けようと後ろに下がろうとしたが、前にいる慎太郎くんはイヤホンをしていて気付いてなさそうだったため助けようとしたが。
「…」
震えた足は後ろに行ってしまう。目の前にいる慎太郎くんを助ける気なんてあるのかと言うよな早さで足が後ろに動く。
少し先にいる笹原さんはうちが助けないことに驚いて焦っていた。
「そこの男の子!避けなさい!」
笹原さんが叫びやっと気付いた慎太郎くんだがもう避けれるほど余裕はない。
うちはそのまま横断歩道から逃げて尻もちを着き呼吸を整えようとしていた。




