15話 意地悪
公園から出ようとしたら手を掴まれ後ろへと少し引っ張られた。
「ちょっと待って!」
後ろ振り向くと焦って止めようとしていた。
「この状況で私が叫んだらどうなると思います?」
背の高い成人男性が助けを求めている女子高生の手を掴んで引っ張っている、という場面を見たら通りかかった人皆が助けてくれるだろう。
「えぇ、それは困るなぁ」
本気でそう思ってなさそうに言う男性。うちが本気で叫ぶと思ってないのか。それとも何か他に策があるのか。
「でもね、こっちは人助けで本気なんだ」
さっきまでの人当たりが良さそうな笑顔をが無くなり距離を縮めながら話してくる。
「…それは貴方の事情で私とは関係ありません」
少し雰囲気が変わった男性に一瞬だけ少し怖くなったが反抗する。
「話だけでも聞いてもらわないとなぁ」
男性はニコリと笑ったが目に光が無かった。もし言う通りにしなければ、最悪殺しに来そうな圧もあった。
「っ…」
怖くなり足の力がスーッと抜けるような感じがする。何とか座り込まないように耐える。
「あー、ごめんごめん、怖がらせるつもりは無かったんだ」
さっきのが気の所為だったかのように話し出す男性。怖がらせるつもりは無かったと言うがとてもそうは見えなかった。
「で、話だけでも聞いてくれる?」
うちは縦に首を振ることしか出来なかった。それを見て満足そうに微笑む男性。
今日は絶対厄日だと心の中でうちは思いながら公園に戻る男性に着いていった。
「いやー、聞いてくれるみたいで良かったよー」
公園のベンチに並んで座り貰ったココアを飲みながら隣にいる男性を見る。急に現れて転生者だと言い協力してくれと頼んできて、脅しにもきていた。そして話を聞いてくれることに満足そうに微笑みながらこっちを見ている。
早くこの男性と話を終わらせて帰りたい気分だ。
「じゃあ、話すというか聞くね」
「え?」
男性は話を聞いてほしいと言ったのに今度は聞くと言った。あんなに聞いてほしそうにしていたのにと驚くがすぐ質問をしてきた。
「何で協力してくれないのかな?」
「...原作を変えたくないんです」
この人は何をするのか分からなく仕方なく正直に何でも答えようと思った。
「この世界が壊れちゃう〜とか考えてる?」
揶揄うように言ってくる男性。さっきから表情がコロコロ変わっている為全部演技のように見えてくる。
「バカバカしいね」
呆れるように言う男性。
ココアを飲もうとしていた手が無意識に止まった。
「そんなんだったら、とっくにこの世界は無くなってる。だって俺がこの物語を大きく変えたから」
それが正しければ原作を変えても問題は無いということだ。確かに新井さんは白鳥ちゃんに似ている…いや、似すぎている。
この人を信じても良さそうだがもし違かった場合の時を考えると怖い。それに、表情が変わりすぎていてこれも演技だと思えてしまう。
「もしかして疑ってる?」
「疑っては無いです…ただ、嘘だった時が怖いんです」
疑っていると正直に答えるとまた脅されたりしそうなため、できるだけ相手が不快に思うようなことを言わないようにと思った。
「えー、白鳥ちゃんに会って苗字が新井のままだったんでしょ?」
うちが完全に信じてないことに呆れつつも説得してくる。たしかに新井さんには会ったが似てる人なんて少しは居るんだから白鳥ちゃん本人とは限らない。
「てかさー、君は俺を信用してるんじゃなくてキャラに関わるのが怖いんじゃないの?」
「え…」
思ってもないことを言われ驚く。うちがキャラと関わるのを嫌がる?
そんなはずない。だってキャラが大好きだから。関われるものなら関わりたいさ。一緒にお話したりとかしてみたい。
「違うの?」
「違います」
「じゃあ関わりたいんでしょ?」
ここでうんと答えると勢いでスクートムにはいられそうなため、どう答えるか考えて答えた。
「…本音はそうですけど、原作を変えるのは危険なんで関わりたくはないです」
「ほんとに?」
「ほんとです」
はっきりと言ったつもりだが心の中では何故かモヤモヤとしている。
「ふーん、じゃあ何でここにいるわけ?」
「…どういう意味ですか?」
「関わりたくないなら、関西か東北か北海道とかここから離れればいいのに」
「…」
その通りだった。
本気で関わりたくないと思っているなら、遠くに行き絶対に関われなくするはずだ。それに、少しでも原作との関わりがありそうな新井さんと関わったりしないはずだ。
「そうしないということは、関わりたいっていう思い諦めきれてないでしょ」
「貴方は話を聞いてくれと言いましたよね?答えてくれとは言われてません」
「あ、話逸らした」
もうこれ以上聞かれたくなく答えないという意志を見せたが、まだ聞いてきそうだ。自分でもよく分からないことを色々言われるのは苦手だ。他人にこのモヤモヤの正体を当てられたくない。1人で当てて場合によっては心を落ち着かせたりするために部屋にこもりたい。
「君はキャラ達を助けたくないの?死ぬ予定のキャラ達を救いたくないの?」
「救えるものなら救いたいですよ…」
「じゃあスクートムになろうよ」
「それは出来ません」
救えるのなら救いたい。それは転生当初から思ってた。でも、救って物語が変わって最悪な状況に向かってしまうかもと考えてしまいスクートムに入る気にはなれなかった。
「じゃあ、家であのニュースをゆっくりソファで座りながら見てなよ」
諦めたのか呆れながら缶コーヒーを飲みきり立ってそのまま帰ろうとしていた。
あのニュースとは、1年後にスクートムの隊員がディア島にいつも通り行き日本への侵入をさせないために戦っていたが、何故かその時だけ数が何倍にも増え始めた。雨も降り始め濡れながら戦っていたが、熱を出す隊員や怪我をした隊員も出てき人手不足となり死人も出てしまった。そしてまた人手不足になりという悪循環が起こった。1週間といういつもより半分も早く帰ってきた隊員達は数も半分減っていた。
それがニュースにもなりそれをソファでゆっくり見てろとこの人は言った。
「何でそんな事言うんですか…」
「だって君自分のことばっかだから」
うちを空になった缶コーヒーで指しながらそう言う男性。
「…うちだって救いたいよ。でもキャラ達がうちの行動のせいで酷い目にあったらって、世界が壊れたらって考えると…」
声がどうしても震えてしまう。
何か出来るのに何も出来ないのが悔しい。
「君さぁ、人間として終わってるよ」
「え……」
手の力が緩みココアが地面へと落ちてく。本気で思ってそうな声と顔で言われ傷つく。
カラン
ココアが落ちたことより零れたことより、さっき言われたことで頭がいっぱいになる。
「君は前世で目の前が死にそうでも見捨てるのかな?」
「……」
ただ俯いて黙ることしか出来なかった。前世だと自分が死なない限り助けると思う。
でも、こっちだと話が違う、リスクが大きすぎる。
「やっぱりこの世界の人間として終わってるよ」
たとえ他人でもそう言われると傷つく。地面を見てるとうちの足に影がかかった。
「っ…」
こっちに近づいてきたのかと思い怖くなり、鞄をギュッと強く抱き締め縮こまる。心臓がうるさい。足は力が入らなく動かない。声も怖くて出ない。ただ目をぎゅっとつぶることしかできなかった。




