スイート・スイートルーム 1
こうして俺達はエレベーターを上がりコンシェルジュさんのいるラウンジ階を通り抜け専用エレベーターで自分達の宿泊階に向かった。
エレベーター中でヒマだからスマホでロイヤルスイートの君の位置情報を探ってみたけど動きはない。
もう一度早送りで見てみよう。最初にこのエレベーターで遭遇した後、しばらく俺達の上の階のロイヤルスイートに滞在、突然地下のショッピング街に出現、何軒か店を回ってある店内で静止、表示では今もソコにいる事になっている。
もちろん実際に店内に彼女はいない。全員で包囲したにもかかわらず忽然と姿をくらました。廊下の監視カメラが店から出た彼女の姿を捉え損ねたって事だな。理由は不明。あまりアテには出来ないなコレ。むしろ偶然ばったり出会う方に賭けるか…
「よし着いた。ほれソーセージ。落とすなよ」
「落とさないよ!」
「落としたら食うんじゃねーぞ」
「…」
「否定しろよ!」
3秒ルールとか言って食いそうだから怖い。
「じゃ〜ねケンちゃん、私こっちの部屋にいるから」
「また何かあったら連絡する」
「お兄ちゃんまたね〜」
ってワケで俺達は男子部屋と女子部屋、俺の家族の部屋にそれぞれ別れてくつろぐ事になった。それぞれリビングと寝室のあるスイートルームで普段はダブルベッドだけど今はシングルベッド3つに差し替えてられている。
男子部屋には俺、出、優介。女子部屋には真由美、飯田さん、さくら。家族部屋には父さん母さん美奈。男子部屋と女子部屋には露天風呂アリ。
前にさくらと支配人さんの通話を漏れ聞いた時にはスイートルーム4部屋も…って支配人さん言ってたから残り1部屋は合田社長夫妻かな?
勿体ない事に夫婦で試飲会イベントにかかり切りで部屋に上がったトコ見た事ないけどな。
「ただいま〜」
「あ、賢人おかえり〜」
「おわあっ!」
男子部屋のリビングに戻った俺を出迎えたのはデカいVRゴーグルとゴツいグローブ、他にも全身にゴテゴテ色んなパーツを付けて空中に両手を泳がせる変な人…略して変人?いや変態?だった。
「僕だよ僕」
ソイツがVRゴーグルを持ち上げてズラすと中には牛乳瓶の底のようなグリグリ眼鏡が収まっていた。
「なんだ優介か。何してんだよ」
「漫画の仕上げ」
「いやVRゲームだろ?」
「賢人には見えないか〜。仮想空間に描きかけの原稿も画材も揃ってるからコレがあれば何でも出来るんだよ。ホラこれエアースプレー」
指で引き金を引くように指をクイクイッってやって恐らく空中にプシューってインクを吹いてるんだろうがリアルワールド側から見るとへんたいにしか見えないぞ。
「飯田さんはココでカラーページの色塗りやってる」
いや優介お前の横には誰もいないから。
「ほらココ、ココ飯田さん」
だからいないって。
「お前ら結婚して自分ちの中にいても2人して仮想空間にインしてそうだな」
「え?ソレ普通だよね?」
聞いた俺が馬鹿だった。まあ優介が飯田さんと2人一緒(?)にいられて幸せなら俺はそれで良かろうなのだ。




