第2話 部長は国王様。そして私は犬。
王宮暮らしは最高だ〜!
毎食美味しいお肉は出てくるし、毎日毎日、若返って西洋風になって、よりイケメンになった部長の顔を見られるし。
毎日が日曜日。
何も不安なことはない。
この城にやってきて、1週間。
私はすっかりこの暮らしに慣れた。
更に、持ち前の勤勉さ(自分で言う)でこの国の概要も分かってきた。
なんせ犬だから、こちらからは話しかけられないけど、人々の会話をこの上なく自然に盗み聞ける。
たまに目を見つめて、タイミングよく頷くと、人間は何でも話してくれた。
人間だった頃にはない便利さを発見したところで、集めた情報をまとめよう。
ここは『アルバレシア王国』という見たことも聞いたこともない国だ。
現代日本からしたら、近世寄り…くらいの発展具合で、魔法や呪いは存在する様だ。
要は<ファンタジー世界>ね。把握!
白い城壁、オレンジの木、噴水、花に囲まれた中庭。
華やかな宮廷服や馬車が行き交う『スペイン南部』のイメージだ。
…行ったことなかったけど。
あくせく働いてたから、行ったことなかったけど、旅行系YouTubeやインスタで見て憧れてたんだ〜…
そして、部長は『レオン』という名前で、このアルバレシア王国の王様!!
お…王様!??
すっっっごい出世してる!さっすが部長!(?)
正式名はレオン・デ・アルバレシア。
現在、38歳。
やっぱちょっと若返ってる!
私、死んだ時31歳だったからちょうどいいかもしんない!…と、思っていたんだけど、犬飼部長…もとい、レオン国王には子供がいた。
私を捕まえたニコと呼ばれた美少年。
あの子がレオン国王の息子だった。
正式名はニコラス・デ・アルバレシアで現在15歳。
犬の私は、必死で城に住み着こう…国王の部屋に住もうと頑張ったが、もう少しでつまみ出されるところだった。
だけど、ニコラス王子…ニコが私を城で飼おう!
なんなら僕の部屋で飼う!
と、言い募ってくれたおかげで、私はこの城で飼われることになったのだ。
ナイスアシストニコ!
サンクス!!
…が、悲しいことが一つ。
どうやらニコのお母様…レオン国王の奥様…王妃様は、ニコを産んだ時に亡くなってしまった様だった。
…部長…。
今世では結婚してらして…それは少し複雑な気持ちだけど、どうか幸せになって欲しかった…。
…。
けど、アレか。
その後再婚はされてないけど、ニコはいい王子に育ってるし、『幸せじゃない』と決めつけるなんて、それは失礼だよね。
今世でも真面目に立派に勤めてらっしゃるんだもん。
っていうか、会社なんて規模じゃない。
国を一所懸命治めてる。
すごいよレオン国王!
それに、女っ気が無くても、私がこの白くてモフモフであたたかい『魅惑の身体』で、レオン国王を幸せにすればいいよね!
っていうか『レオン国王』って言いづらいから、別の呼び名で呼ぼう。
今はもう部長じゃないし…
…陛下かな!
みんな陛下って呼んでるし、私も陛下って呼ぼう!
「ワワゥ。」
…そうだった。
私犬だから、呼び方を決めても何の意味もなかった。
しかし、初めて鏡を見た時はびっくりしたなぁ…
私は現代で言うところの『サモエド』になっていた。
白くて、毛がモッフモフの大きな犬だ。
自分で言うのもなんだけど、顔は可愛い。
口を開けて笑顔を作ると、愛嬌いっぱいだ。
そういえば、前世でも両親が生きてた頃は犬っぽいと言われてたな。
だけど、体は小柄だったから、こんな大型犬に生まれ変わるとは思ってなかったなぁ〜。
…そんなことを考えていたら、剣の鍛錬を終えたニコがやってきた。
「ルナーーー!
今日は湖に行くよ〜!」
『ルナ』とは今の私の名前だった。
ニコがつけてくれたのだ。
「父上…この白い犬の名前は『ルナ』。
ルナにしたいと思います!」
『月』という意味がある言葉…
前世の名前である『美月』を少し思い出す。
縁のある言葉に、くすぐったさと嬉しさを感じた。
名付けてもらった時には『気に入った』と、ニコの顔を舐めた。
…ともかく。
これから湖かー!
うれしいな〜〜〜…っと、アレは…陛下!?
「ワンワーン!
ワフっ!?」
「うん!今日は父様も時間があるから来るんだって!」
「ワワワーーーン!!」
やったーーーー!!!!
部長改め『陛下』とニコと湖だ〜〜〜!!!
二人は国政に勉強鍛錬と忙しいのに、超嬉しい〜〜〜〜!!!!
私は嬉しくて陛下に飛びついた。
そうすると
「ルナ!
飛びつくと危ないよ。
フフフ。
分かったよ。
…ここだな?
よしよし。
ルナは素直ないい子だな。」
と、撫でてくれた。
「クゥーーンクゥーーンン…。」
「…ルナって父様の事好きすぎじゃない?」
ギクッ。
ちょっと拗ねた様なニコの声色に、ちょっと動揺してしまったが…
「クゥーン!わふわふ!」
ニコの顔もペロペロしたら、機嫌が直った。
……。
人間チョロイ。
前世で成績優秀な営業だった処世術は、犬になっても有効だった。
この身体…
思いの外、最強なんじゃない…?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あーーーん!!!
ウソウソウソ!!
おちっちとうんちしたいーーー!!
ヤダヤダヤダーーーー!!!
陛下の前でするのヤダーーーー!!!
* * *
意気揚々と湖に向かった、陛下とニコ。
そしてお供の人と、私。
嬉しくてはしゃいで走り回っていた私だったが、道の匂いを嗅いだりクルクル回ったりしてる間に、催してしまった。
…え?
今までどうしてたのって?
人が見てない時にトイレでしたり、城外の物陰や馬屋でしてたのよっ!!!
後でニコに言ったら処理してくれてたから。
「ルナは排泄できたら教えてくれてお利口だね〜。」
って拾ってくれてた。
ニコはまぁどっちでもいいよ!(?)
だけど陛下の前でするのはいやーーーー!!
と、ジタバタしていたら、陛下がニコと顔を見合わせて、木陰に連れてきてくれた。
「我慢してたら身体に悪いからしなさい。」
「わうわう…ウウウーーーー!」
「そうだよ。父上の言う通りだよ。
おしっこ?
うんち??」
「ウウウウ〜〜〜…ワンッ!!」
「ほら。父上。向こう向いて。」
「…なぜなのだ?
見てないとキャッチできないだろ?」
「ルナは恥ずかしがっています。向こう向いてください。」
「そんなバカな。」
「ほら!
ルナが我慢しすぎて病気しちゃうでしょ!」
「……。わかった。」
* * *
ギャーーーーーーーーーーーーー!!!!
向こう向いてても厳しかったのよぅぅぅぅーーー!!
恥ずかしくて死んじゃうかと思ったーーーーーーーーー!!
ウワーーーーーン!!!
…犬の鳴き声じゃなくて!
気になってる人の前で排泄だなんてそういう趣味は無いんだってーーー!!!
これからはほんっと、気をつけないと!
二度といやよーーーー!!!
「父上、ルナの元気が戻りません。」
「う…うむ。
やっぱり身体の具合が悪いのかーー」
「わうわうワーーン♪」
「ルナ。もう大丈夫なのか??」
「ワフワフ!」
「ルナって父上の言うことだけ聞きすぎじゃ無い?」
「ペロペロペロペロ」
……犬の生活って思ったより忙しいなぁ!
* * *
わーーーー!
綺麗な湖〜〜〜!!
って、えーーーーーーーーーーーーー!???
陛下脱ぐんですか!???
「ワンワン、ワンワンワンワン!!」
ポーン!
騒いでたら、ニコに湖に投げ込まれた。
スイーー…。
あっ泳げる。
実は私、前世ではかなづちだったの。
犬って最初から泳げるんだ。
便利。
ニコ、大型犬を湖に投げ入れるなんて結構力があるんだな。
あっ。ニコも裸じゃん。
あ、下は履いてるのね。フーン。
……陛下!?
陛下は!????
陛下はちゃんと下履いててーーーーーー
と、陛下のところに泳いで行こうとすると、ニコに抱えられて、湖のほとりの木の裏に連れ込まれた。
え?
なになに?
こんないたいけな犬に何を?
そうしてわふわふ言ってたら、ニコが言った。
「…みづき。」
「わふッ!??????」




