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第3話 ニコのひみつ。そしてルナの選択。

「ワンワンワンワンワン!」


私はびっくりして、ついワンワン言ってしまった。


そうすると、ニコはサッと干し肉を取り出した。


あっずるい!


こ、こんな時にお肉出すなんて…


お…お肉お肉ーー!


お肉ちょうだい!


「わうワンワワン!」


だけど、すぐに干し肉をくれずに、首の後ろをワシワシと撫でてくるニコ。


「クゥーーン…」


「みづき。

あの時とは逆だね。


僕、ルナと出会って思い出したんだよね。


前世の記憶。」


「わぅッ!?」


「まだわからない?


チャーリーだよ。」


……!!


美少年ニコの茶色くて繊細なカールのある髪の毛、そしてまん丸な瞳。


なぜ気づかなかったのだろう。


ニコにはチャーリーの面影がバッチリあった。


「ワオーーーーーン!!

ワンワンワン!!」


「僕、美月のこと大好きだったから、嬉しかったな。

そして、部長…父様のことも大好きだったから、そのことも思い出せて嬉しいよ。」


「わうわうわうワーーン!」


「フフフ!

美月、相変わらず父様のこと大好きなんだね!」


「わぅッッ!?」


「そりゃバレるよ!

見てれば分かったよ!

美月ってば最後の瞬間まで、父様の事、気にしてたんだもん。」


「…。」


「だけど、僕だって相当心配したし、悲しかったんだからね!!」


「わう。」


「うん。よし!

今世では美月も絶対、幸せになってよね!!」


「わぅ…。」


今感じてるこの気持ちを、どう表現すればいいのだろう。


気づけば犬になってて、今世では一人きり。


犬の身を楽しめるだけ楽しもうと思ってた。


だけど、私は一人じゃなかったのだ。


今世でも、前世でも。


見てくれて気にしてくれてる人…犬?が居たのだ。


人だろうが犬だろうが、なんだっていい。


私も、『チャーリー』だった頃も、今の『ニコ』も大好きだよ。


「わわぅ…」


そう口から鳴き声が出た時。


「ニコ、ルナ!

何してるんだ!?」


と、陛下がーーーーーーーー


「わんわんわーーーーーーーーん!!!」


ウホッいい身体!!


裸裸はだかーーーーーーーーーー!!!


キャーーーーーー!!!


と、騒いでいると、ニコの白い目が、私のモフモフボディに突き刺さった。


「ちなみに、父様は何も知らないからね。」


「わう!?」


「何のことだい?ニコ。」


「ワンワンワーン!」


私は必死で陛下に抱きつき、その顔を舐めて誤魔化した。


…陛下上半身裸ーーーーっっ!!!


「……。」


血に染まる湖。


私は、また鼻血を出してしまったのだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



こうして楽しく過ごして、2ヶ月。


私は毎日充実した宮殿生活を過ごしていた。


特に、ニコという理解者は私の生活をより豊かなものにしてくれた。


犬という身にあぐらをかいてちゃいけない!


と、ニコと陛下が狩猟に行く時は、私もついて行って、狩猟犬としての仕事を得た。


正直、狩猟はめっちゃ楽しい。


自慢の鼻で獲物を見つけ、ニコや陛下を導く。


ニコもすでに狩猟が上手だったけど、陛下の狩りの腕前は天下一品だった。


 * * *


「ワンワンワン!!」


私が吠えると、陛下は馬を駆って距離を一気に詰めた。


前方を逃げていく獲物は、イノシシによく似た動物だった。


私が左からイノシシを追い、陛下の居る方に追い詰めていく。


陛下が弓を引いた。


矢が風を切る音が響いた後に…


ズバンッ!!


獲物を仕留めたのだった。


鮮やかな手並み。


弓の腕も、乗馬術も一流で、本当にカッコよかった。


過去に、部長と一緒にプレゼンして大きな仕事を取った時の事を思い出した。


「ワンワンワーーーーン!」


馬から降りた陛下に飛びつくと、


「ルナよくやったぞ。

後で肉を分けてやるからな。」


と、両手で顔を包み込む様にしてワシワシと撫でてくれた。


あ…


あああ…


いつか、夢見た部長のワシワシ撫で…


今世で叶うなんて、嬉しいなぁ〜〜。


陛下。


私、犬になっちゃったけど、陛下のそばに生まれ変われて幸せです。


そう思った瞬間、また鼻血が出た。


ニコが駆けつけてきた。


「父様…ルナはちょっと鼻血が出過ぎじゃありませんか?」


「確かに…。」


「僕、かなり心配です。」


「……。」


「今、このアルバレシア王国は、季節が夏に差し掛かってきました。

ルナは毛量の多い犬です。

この暑さが厳しいのかもしれません。」


「…そうだな。

一度、宮廷の治癒魔導士に見せてみよう。」


「はい。それがイイと思います。」


私は、唖然とした。


確かに、気づけば暑かった。


ずっとハァハァ言っていた。


サモエドは寒い地域の犬。


暑さに弱いというのは知っていた。


だけど鼻血は…。


熱中症的な症状なのだろうか。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「ルナ様の魂は、犬ではございません。

おそらく…人間です。」


「ワンワンワンワワーーーーン!!!」


あっさりバレたーーーーーーーー!!!


おそろしや宮廷の治癒魔導士ぃぃぃぃ!!!!


思わず吠え散らかしていたら、ニコになだめられた。


「ルナ、大丈夫だから。」


そして陛下が治癒魔導士に説明を求めた。


内容の概要はこうだ。


私の魂は、おそらく人間だ。


転生して別の種族へ変わること自体は、ごく普通のことだ。


だが、まれに『前世の魂の性質』が強く残り、今の肉体とうまく結びつかない者が現れる。


この特殊な状態を、この世界では『呪い』と呼んでいる。誰かが意図的にかけたものとは限らない。


普通の魔法では、生き物を別の姿に変えることはできない。


しかし、この『呪い』に限っては、肉体を魂の性質に合わせることで不一致を解消する、『古代の術』が残されていた。


そのため、古代の術で呪いを解けば、人間の姿になれる可能性がある。


ただし、犬のままで生きることもでき、「暑さによる不調」は別の現代魔法で和らげられる。


「……。」


私には分かった。


これは…この事態は、おそらく、私自身の呪い。


私自身の強い願いが招いた事、だったのだ。


私が陛下…いや、部長の犬になりたいと、強く願ったことによって起こった事なのだろう。


「……。」


「どうする?ルナ。

人間にもなれるって。

僕はどっちでもイイと思うよ。」


ニコはそう言った。


私…


私は…


考えていると、陛下が口を開いた。


「…ルナ。

私も、ルナが在りたい姿でいいと思う。

なんというか、人間には…いや、生き物には、こう在りたいという強い想いがあるのだと思う。


ルナがどんな姿になっても、ルナはルナだよ。」


「……わう。」


私…私はーーーーー。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


…。


……。


「…いいの?

父様、今フリーなんだよ?」


ニコが言う。


「わぅわぅワン!」


私は、犬でいることを望んだ。


そして治癒魔導士に暑さをしのぐ魔法をかけてもらった。


陛下はずっと背中をワシワシと撫でてくれていた。


なぜって…


私は強くこの姿を望んだからこの世界に来て、こうして陛下とニコと再会できた。


出会えた。


十分に幸せだった。


そして、これからも二人のそばで生きていきたい。


おそらく、鼻血は強い願いの代償だったのだろう。


だけどもう、それはきっと起こらない。


だって、私はこれからも犬として幸せにーーー


「…うっ。」


「父様?」


「わぅワンワワン!!」


「うっ…ううう…

治癒魔導士の魔力に当てられたようだ。」


「大丈夫ですか?!」


「ああ、大丈夫だ。」


「ワンワンワン!!」


「…ああ、大丈夫だよルナ。」


そう言って、陛下は私をまた、ワシワシと撫でてくれた。






「……。

佐倉 …?」





「ワウッ!????」


「父様っ!????」





【完】


最後までお読みいただき、ありがとうございました!


楽しんでいただけましたら、★で応援していただけると、次回作への励みになります!

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