幕間 ばぁばの昔語り
前世の記憶を思い出した辺りから、エルフの教えが大嫌いだったアタシは、知識だけはものにして、松雪達との信頼を高めて、50歳位だったかね、エルフの里を飛び出した。
そして、倒れてるイグニスに会って、外の世界の常識を教えて貰って、アタシに喧嘩吹っ掛けてくる奴には倍の値段で買ってやって、まぁ、昔の方が血の気が多かった事は認めるよ。いやぁ、アタシも大分丸くなったね!
そんでまぁ、50年位この大陸をふらふらして、海の向こうにも大陸があるって聞いたんでね、渡ってみた。
イグニスはついて来なかったからね、ってか、アイツにゃ渡れなかったし、渡ろうとも思ってなかったみたいだし?
無理だから止めろ!ってめっちゃ止められたけどねー、イケルイケル、ってフラっと出てきた。
だって、ヨットで太平洋横断とかする奴が居るんだ、風を操れる桜子に、水を操れる松雪がついてるアタシに出来ないはずがない、ってね!
うん、まぁ、大変は大変だった。
水は松雪でなんとかなったが、アタシは魚介も食えないって事に気づいてね、当時は無限収納なんて持ってなかったからね、リュックに背負った果物、野菜は萎びちまうし。
腹が減って3日目に出た大王イカがね、もう恨めしくて。
「クッソ、こんだけデカイのに食えねぇヤツに用はねぇ!!」八つ当たりして、栗之助にコンクリートで固めて貰って、文字通り海に沈めてやった。
そしたら、漁場の近くだったみたいでね、漁船に目撃されてて、大王イカを討伐してくれた英雄って、めっちゃ歓迎されたよ。
魚介類で歓迎してくれようとしたが、果物をくれ!!って。それで命拾いしたね。
そこが人間の住む大陸だったからね、いやぁ久しぶりに見た人間にテンション上がっちまってね、人間なら調味料もある、野菜も果物も品種改良してるだろ!アタシに食えるうまいもんを探すぞ!って、いろんな国を回った。
果物だけじゃない、お菓子のうまいこと!ああ!麗しのフルーツタルト!ここで会えたねアップルパイ!ジェノベーーゼェ!!!ペペロンチーノぉ!あ、アンチョビは却下で。
ポーションはどこでも買って貰えたからね、ちょいと森に入って薬草を摘めばすぐに作れたし、森に入らなくても乾燥薬草も売ってたし、そうやっていろんな国のいろんな物を買い食いしてたら、50年ちかく過ごしてて。
いやだってさ、気に入った店が出来たら、1年通えば季節で違う味が出てくるだろう?
そんなのんびりすごしていたけど、いろんな国で漏れ聞こえる噂。
魔の森っていう魔獣が出る森がある、強い奴が居る、そして肉が旨い、って聞いてたんだが、肉が旨くてもなぁ、と思って行く気はなかったんだよ。
でも、帝国で、センバ商会って、なかなか繁盛してる店でポーションを売ったのがきっかけで。
ポーションの質を褒められて、ぜひうちと専属契約してくれないか、魔の森産の薬草でポーション作ってみてくれないか、って渡された薬草。
乾燥薬草なのに、この大陸に渡ってから使ってきたどの薬草より使い勝手が良いし、出来上がったものの質もいい。
これなら生の摘みたてでやったらもっと良いもんになるな?って、興味が湧いて。
んじゃ、魔の森行ってみるか、と。
センバ商会が一緒に行く、って言ったけど、自分のペースで行きたいからと断って、紹介状だけ貰って、のんびり、途中の領地にあったクレープに感動して3ヶ月ぐらい滞在しちまったんだよ。いいじゃないか、急ぐ旅でもなし。
そして1年ぐらいかけてたどり着いた魔の森。
いやまぁ、なんっつー魔力の濃い森。
よくまぁ、人間がここで過ごせたな、と感心してしまった。
森を見上げてぼーっとしてたら
「…ってーー!!魔の森は危険ですーーーー!!早まっちゃダメですーーーー!!」
上から声がする?と思ったら、
ドーーーーーン!!!!
目の前に何か落ちてきて、地響きと土煙が上がる。
「桜子!」
桜子に頼んで、風で視界を良くして貰うと、
そこには
小さなおばぁちゃんが、両手両足を広げ、森への道を〝通せんぼ〞していた。
これが、アタシとイチイ様との出会いだった。
ブル 魔の森の前でぼーっと立ってる若い女性。自殺志願者と思われたんだろうねぇ…
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