逃がさへんで!?
「ッチ。良いかい、アタシらに何かしようなんざ思わないこった。
フエゴがアンタを気にするから仕方ない、アタシ達が店から離れたらその氷は砕けるようにしてやるよ。松雪!頼めるかい?ああ、ありがとう。
これで心配ないだろう!だからさっさと行くよ!」
ばぁちゃんが店の人に釘を刺し、僕の手を繋いで、フエゴさんを急かす。
「あ、ああ。わかった」
フエゴさんも、チラチラと氷像を気にしながらも僕達の後に着いてきた。
「ありゃ、アンタに恨みでもあんのかい?」
店から少し離れてから、ばぁちゃんがフエゴさんに聞く。
「はぁ?!そんなわけあるか?!アイツとはちっちぇころからの仲だぞ?!」
「…ふーーん、小さい頃からの馴染みの、片方は精霊と契約出来て、片方は出来なかった、ってねぇ…」
ばぁちゃんの言葉を聞いてもフエゴさんは首をかしげている。
「これを聞いてもわからんか?
まぁ別にいいさ。アタシらにゃ関係ないね。
さぁ、この街で一番の商会に連れてっとくれ。そこなら昔の金貨も使えんじゃないのかい?」
「ああ、なるほど、あそこなら大丈夫かもしれん」
そして少し歩いてお店に着くと。
「おいおいおいおい、ウソだろう?!」
ばぁちゃんが叫ぶ。
「センバ商会だって?!!!」
「なんだよ!ここが今一番の店だよ!!お前が連れてけって行ったんだろう!」
店の前で棒立ちになったばぁちゃんにフエゴさんが叫び返すと、お店から人が出てきた。
「お客様?何かございましたか?」
黒目黒髪、パリっとした白いシャツに黒いベストとお揃いのズボンをはいた、とっても姿勢のいいお兄さんが出てきた。
フエゴさんは真っ赤になってばぁちゃんをグイグイ全面に押し出す。
え?実は人見知り?
「ああ、すまない、実は旅の途中でね、こんだけ大きな町に来たんだ、一番の店に連れてってくれと頼んだら、まさかのセンバ商会で驚いたんだよ」
ばぁちゃんがポリポリと頬をかきながら答える。
「なんと!我が商会をご存知とは光栄でございます!どのような商品をお求めですか?」
ばぁちゃんを見て、一瞬驚いた顔をしたけど、すぐにニコニコと対応してくれるお店の人。
うん、さっきのドワーフさんとは大違いだね!
「いやぁ、いろいろ欲しいものは沢山あるんだが、ちなみに、この金貨は使えるかい?」
ばぁちゃんがさっきの金貨を出す。
「ッ…!!!お客様!悪いことは申しません、このようなもの、こんな往来で出すべきものではございません!!」
お店の人は、ばぁちゃんが出した手に自分の手をかぶせ金貨を隠すと、小声でばぁちゃんを叱りつけるように言う。
「急にお客様のお手に触れるなど、申しわけございません、ささ、中へどうぞ!
私、この支店の店長をしておりますタチバナと申します。私で良ければじっくりお話をお伺いいたしましょう!
ささ、お連れ様もどうぞどうぞ!」
めっちゃ背中を押されて店の中へ入ると
「カヤ!商談室、1つ空いてるね!そこにお茶を2つ、ジュースを1つ頼むよ!
さぁ、皆様どうぞこちらへ!!」
奥へと案内されるけど、お店の中はいろんな物があってめっちゃ見たい!!
僕がキョロキョロしてると、
「ぼっちゃんは商品が気になりますか?
大人の話もつまらないでしょうし、ジュースを飲んで一息着いたら店の中をご案内いたしましょうか?」
ニコニコ顔のタチバナさん。
僕はばぁちゃんとタチバナさんの顔を交互に見る。
「うん、まぁ、一旦は中へ入ろう。ユズリハもちょっと待っとくれ」
ばぁちゃんが僕の頭を撫でながら言う。うん、僕、大人しく待ってるよ!
「ユズリハぼっちゃん…親近感のわく名前です。できる事なら末長くお付き合い頂きたいです。
ええ、今日という日のこの時間、私が店に出ていたことにも意味がある!!
ワタクシの、センバの勘が、逃すな、と、そう言っております!!」
タチバナさんは、なんかちょっと物騒な事を言いながらニコニコと、僕とばぁちゃんを見つめていた。
タチバナ センバの勘!!!お二人とも逃がしませんよ!!
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