負の感情
「カワウソさん?!水の精霊なら、わびすけ、なんで弱ってるかわかる?
しゃべれなさそうなら、ムク!もぐらさんに聞ける?」
2匹がとってもいじらしいんですけど?!
わびすけとムクが、2匹に寄り添ってくれる。
「わん!」『魔力切れ!』
「メェ~…」『自分を責めてるし、魔力を受け取れないんだって…』
「「は?!」」
僕とばぁちゃんで顔を見合わせる。
「アンタ達は、精霊と会話出来るのかい…?」
ベルクさんがびっくりして僕達に聞いてくるけど、
「会話出来ないの?!どうやって意思疎通するの?!一生のパートナーだよ?!!」
そっちの方がびっくりだよ?!
「ああーー、精霊と契約出来る種族でも、言葉としてきちんと会話出来るのは、精霊と親和性が高いほんの一部なのさ。
契約してる精霊にお願いする、精霊が聞いてくれる、気に入らなければ聞いてくれない、なだめすかして聞いて貰うか、諦める、だね。
精霊はこっちの要望を理解してる。
けど、
精霊は言うことを聞いてくれる便利なヤツって考えちまって、
精霊の気持ちを理解しようとしないヤツは、昔も一定数いたなぁ。
アンタもそのタイプだったか…」
「いや、だって、契約したんだから言うこと聞いてくれるのが当たり前で、俺の精霊で…」
「なんだい、精霊との契約は一方的な主従関係じゃないよ。
こっちがお願いして力を貸して貰うんだ。
言うなれば、好意に基づく契約みたいなもんだろう?
気に入った者に力を貸してやる、借りたものは魔力を払い、感謝を伝える。
普通の人間関係でも当たり前のことだろう?
一方的に借りっぱなしのヤツなんか、見限って当然だろう?」
ばぁちゃんが呆れたように話す。
「ってか、魔力を受け取れないってなに?自分を責めてるってなに?カワウソさんが悪いことなんて一つもなくない?」
早く元気になって欲しいんだけど!
「メェ…」『水属性の自分がいるから、この人は村を追い出されたなら、自分が居なくなればいいって…』
「ダメだよ!なら、僕の所においで!!」
「おいおいおいおい、自己犠牲極まれり、じゃないか…」
「なんだなんだ?なにがどうなってる?!」
僕が握り拳で勧誘する隣で、ばぁちゃんが額に手を当て天を仰ぎ、ベルクさんはムクと僕達を交互に見ながらオロオロしてる。
「アンタ、この子に憎しみをぶつけたことないかい?
水属性がなけりゃ、お前がいなけりゃ、自分が嫌われるのはお前のせい、とか。
直接言わなくても、感情が、その目が語ってたんじゃないのかい?
でも、ここで暮らすにゃ、この子の水の力は必要なんだろ?水がなけりゃ、生物は生きていけないし、川から汲んで来たりするのはとにかく大変だ。
負の感情の乗った魔力は、精霊には凶器だよ。
だって、好きでその人の所に来たのに、好きな人から良いように使われてるのに、報酬は、嫌いだという気持ちの魔力。
好きって気持ちが原動力の精霊に、嫌いって魔力は受け取れないわな。
その魔力はこの子自体を蝕む。
でも、力は使われる。
だから、魔力切れを起こして自分が居なくなれば、アンタが村に戻れると、そう言ってるんだよ。
こんなに弱る前に、こんなにヤツ見限って、離れちまえば良かったのに」
ばぁちゃんが悲しげにカワウソさんを見つめる。
「あ、え、こいつ、消えるのか…そしたら、俺は村に戻れると…?戻る…受け入れられる…」
ベルクさんの瞳が揺れている。
いやちょっと!僕的には、ナシなんだけど!!
なんで精霊さんの犠牲をヨシとするかな?!
ぷちん、とキレた僕。
「カワウソさん、離れちゃいなよ!!君の事が大好きな人を新たに探しなよ!!
あ!僕の魔力はお気に召さない感じ?なら、ここで眠ったらいいんじゃないかな!!」
僕は、どん!と精霊樹の苗木を出した。
「え?どっから出た?」
ってベルクさんがなんか言ってるけど、無視無視!
ずっと背中を擦ってたもぐらさんが、カワウソさんの頭を撫でてなんか言い聞かせてる。
うつ伏せだったカワウソさんの首がこっちを向いて苗木を見て、目を見開いた。
おおぅ、カワウソさんも目を見開くのね。
カワウソさんは、もぐらさんの手を握ってから、お互いうなずいて、もぐらさんは、カワウソさんから離れた。
カワウソさんは、シュルンって消えて、苗木に小さな実が1つ増えた。
「まぁね、アンタが一人、村で寂しかったのもわからんでもない。
村人に嫌悪の感情を向けられて、どうしようもなかったんだろうさ。
でもなぁ、自分を好いてくれて、嫌な事があった時も側にいた、一生のパートナーになる約束をした精霊に八つ当たりせんでも。いや、側にいたから八つ当たりしたのか?
アンタがあの村をもっと早くに見限ってれば、なぁ。
だって、ドワーフ達と交流はあったんだろう?炭はドワーフ達も必要不可欠なもんだから、炭焼きを選んだんだろう?
…まぁ、もう遅いけどな」
ベルクさんは、今までカワウソさんが居たテーブルと苗木を交互にみて、苗木に手を伸ばそうとして、ばぁちゃんにバシっと手を叩き落とされた。
「あ…あ……」
両手で顔を覆って泣き始め、
もぐらさんは、そんなベルクさんの肩に乗って、ずっと頬擦りしてた。
ブル 何をしたって離れて行かない、そんな便利な存在なんて有るわけないだろうにさ!
ユズ うちの子達ぃぃ!!大好きだよぉぉぉ!!
もふ集団 僕達も、アタクシも、ユズリハ大好きよ!!
ブル うんうん、これが正常な関係性さね。松雪達も、いつもありがとうよ。
松栗桜 わっふん♪
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