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人助けをしたら、私にだけ優しい王子様にとんでもない執着をされてしまった  作者: 園内かな


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12.君が欲しい、だから奪った

 予想以上の言葉が返ってきて、エミリアは狼狽えた。本当に、そんな事がありえるのだろうか。動揺したエミリアを抱きしめ、頬に口付けてからルーファスは言った。


「本当だ。それほどの緊張状態にあるし、既に何度も暗殺を仕掛けられている。それを全て掻い潜り、やっと君を迎え入れられるまでになった。エミリア、俺は立太子の儀までに君を婚約者として周知させる。そして儀式の日に、君との婚姻を発表するつもりだ」

「えっ、ええっ!」


 突然の宣言に、エミリアは驚愕しルーファスを見つめた。目を見開いて驚くエミリアに、ルーファスはふっと笑う。


「そのつもりが無ければ、危険を推してここに迎え入れる訳がない。この離宮の中は安全とはいえ、守るべき存在が増えるとそれだけ弱みが増えることになる」

「そんな、どうして。そこまでするなんて、何か理由でもあるの?」


 エミリアの問いかけに、ルーファスはまた軽く口付けた。今度は、唇にだ。そして口を開いた。


「本当は、全てが落ち着いた後に君を迎えに行きたかった。しかし、これからどう動くかは予想出来ない。もし今回の立太子の儀を無事に越えられても、政権闘争は続くかもしれないし、今後は俺の婚姻も政争の種にされていくだろう。そうなる前に、君をお披露目し、俺の婚姻相手については口を挟ませない」

「でも、だからって。私より、お妃さまに相応しい方はいらっしゃるでしょう」


 エミリアにだって事情もあるし、気持ちの問題もある。それなのに、理由を隠されて連れてこられ、無理矢理奪われ閉じ込められた。後からそう説明されても、簡単に納得はできない。

 そんな気持ちが伝わったのだろう、ルーファスはエミリアの肩を抱く力を強くした。


「結婚相手は自分で選びたい。それに……」

「それに?」

「これ以上放っておくと、君は他の男と結婚しそうだったから」


 まるで、エミリアが悪いような口ぶりだ。流石にそれには、反論したくなる。


「王国と比べれば、規模はまるで違うでしょうけれど、私にだって継がなければいけない家と荘園があるのよ。家族だって放っておくわけにはいかないわ。どうして先に説明してくれなかったの?」

「先に説明すれば、君は俺の元に来たかもしれないが、来てくれないかもしれない。危険を冒さない為に確実な方法を取るのは当然だろう」

「そんな! それじゃあ私の気持ちはどうなるの」


 エミリアが思わず大きな声を出すと、ルーファスはふっと笑った。何とも底意地の悪い、利己的な表情だった。


「俺は今まで、必要な物はなりふり構わず策略を経て手に入れてきた。人脈や情報から、己の命を護る手段まで。その時に、他者の意思は関係無い。それは今も同じだ。俺は君が欲しい、だから奪った。それだけだ」

「っ……」


 エミリアは理解した。

 彼は目的の為なら手段も選ばず、相手の気持ちなど思い遣りもしないのだ。

 自己中心的、とは違うだろう。彼にはそういう生き方しか出来なかったし、躊躇したり迷えば死が身近に存在するという過酷な暮らしだった。

 でも、だからって。


 エミリアが彼の事を理解したって、その逆は無い。ルーファスはエミリアの事を分かろうともしないで、要望を押し付けるだけの関係となるだろう。

 けれど、今この状態からどうすれば良いというのだろう。言葉に詰まるエミリアに、ルーファスは状況説明を繰り返してくれる。


「立太子の儀は来週、王都から少し離れた大聖堂で行われる。その日か、その前に叔父上が何か仕掛けてくるのではないかと見ている。国王と王子を纏めて葬る何かを。もし今、君を手放したら確実に叔父上の一派に捕らわれるだろう。一度でも俺の手の中に入れた物は狙われるからだ」

「じゃあ、私は此処に居るしかないの? それに、絶対に貴方と婚約して、結婚しなくちゃいけないの?」


 そんなの無理よ、その言葉を続けようとしたがルーファスにぎゅうっと抱きしめられた。


「っ……」


 ルーファスにしっかり抱きしめられると、エミリアは何故か嬉しいと感じてしまった。

 先ほどからルーファスと寄り添い、触れあいながら話していると、その暖かさと温もりに離れがたい気持ちが強くなっていた。人恋しいという物だろうか。

 今まで、家族や使用人の愛情に包まれていたエミリアだが、この離宮でよそよそしい侍女たちと打ち解けるのは難しいと感じている。もし仲良くなるには、心を砕き時間をかけなければいけないだろう。今こんな風に、抱きしめてくれて、対等な会話をしてくれるのはルーファスだけだ。

 気が付けば、縋りつくように抱き締め返していた。


 しかし、このルーファスこそがエミリアを連れ去り閉じ込めた張本人なのだ。

 そんな彼にしか頼れないなんて皮肉な話だ。もしくは、今からでも抵抗し突っぱねるべきなのだろうか。でも、そうすればエミリアに頼る者は一人もおらず、孤独な暮らしになってしまう。

 皆と仲良く和をもって暮らしていたエミリアには、どちらも辛いと思える選択だった。

 迷うエミリアを唆すように、ルーファスが口付けを止めて囁いた。


「諦めて、エミリア。もう君は俺の物になったんだ」


 それは紛れもない事実だった。もうエミリアはルーファスの物。

 ストンとそれが胸に収まって、茫然とするエミリアをルーファスは優しく押し倒す。


「さあ、今日はやっと時間が取れたんだ。ゆっくりと可愛がってあげるよ」

「あっ、でも、それは……っ」


 まだ話を終わらせたくない。

 帰るのは無理だとしてもルーファスにたまに感じる不審な点を整理して自分の気持ちを伝えたかったのに。でも彼にとっては、エミリアの感情など些末な事柄らしい。

 ゆっくりと押し倒されると、以前触れあった時の記憶が身体も覚えているのを実感する。

 ふるりと震えてから、せめて気丈な声を出そうとした。


「止めて、ルーファス。私はこんなの、納得できないわ」

「こんなに感じているのに?」


 ルーファスの手が身体をそっと撫でる。肩から腕をなぞられただけで、エミリアの身体はびくりと反応し声が出そうになった。


「ぁっ……、でも、それは……っ」

「君の身体は、俺を受け入れている。それは、心も受け入れているからじゃないのか? 本当に、虫唾が走るほど嫌な相手には反応もしないだろう」

「っ……」


 ルーファスの指摘通りだった。

 こんなに意思を無視され、身勝手にも捕らわれているような状況なのに、エミリアは決してルーファスを嫌えないでいた。彼の容姿が美しいからだろうか。それとも身分が高いからだろうか。


 分からない。けれど、いくら容姿が美しい人でも酷い人なら嫌だと思う筈だし、身分が高すぎて不釣り合いで逃げ出したいと思っている。こんな目に合されてなお不思議だが、エミリアはルーファスを好ましいと思っているし、このまま彼を放っておけないと感じているようだった。


 それは、幼い頃から手紙でやりとりをしていたというのが根底にあるのかもしれない。それに、彼の不幸な生い立ちを聞いて何とかしてあげたいとも思う。

 結局のところ、憎めないというのが一番かもしれない。

 幼い頃に自分が助けた命、それが失われるかもしれないというのは辛い。熱にうなされながら、必死でエミリアの手を握るあの少年を救いたいというのは昔も今も同じ気持ちだった。


 ルーファスに、死んでほしくない。元気で居てほしい。その願いは本物だった。

 心中迷う様子のエミリアに、ルーファスは優しく髪を撫でながら言った。


「これからずっと大切にする。だから、俺を受け入れてくれ、エミリア」

「ルーファス……」


 今までずっと大変な暮らしだったであろうルーファスが、こんなに懇願している。それは十分にエミリアの胸を打った。

 抵抗しなければ、という心がエミリアの中から消え、身体の力がふっと抜けた。

 それを見逃さず、ルーファスはゆっくりと覆いかぶさってきた。

 エミリアが悶える長い夜が、再び始まったのだった。


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