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幕府は、俺が守る――1853年7月8日、浦賀沖から始まる歴史改変  作者: ヲワ・おわり


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第十九話 海軍計画

本作は全70話完結予定です。

毎日5話ずつ、07:10 / 12:10 / 18:10 / 20:10 / 22:10 に更新予定です。

面白かったら評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。

数日かけて、計画書ができた。


 勝の長屋と俺の部屋を行き来しながら書いた。勝が技術の部分を担い、俺が戦略の部分を担う。川路に一度見せて修正を加え、三回書き直した。


「これでいい」


 勝が最終稿を見て言った。


「正直なところ、俺一人では書けなかった。戦略の部分をこんな形で整理するのは、俺には向いていない」


「技術の部分は私一人では書けませんでした」


「二人で一つが完成した、と言っただろう」


 勝が機嫌よく計画書を手に取った。


 内容は三つの柱で構成した。


 一つ目、長崎海軍伝習所の早期設立。史実の設立は1855年だが、今すぐ動けば1854年中に基礎を作れる。オランダから教官を招き、幕府の人材に蒸気機関・砲術・航海術を教える。


 二つ目、国産洋式艦の建造計画。まず一隻、オランダの技術協力を得て試作する。長崎の造船所を活用する。


 三つ目、海軍人材の育成システム。幕府だけでなく、諸藩からも参加者を選抜する。将来的な日本海軍の核になる人材プールを作る。


 計画書の冒頭に俺はこう書いた。


「幕府が海軍を持たなければ、1860年代には列強に対して完全に無力になる」


「この冒頭は少し強い」勝が言った。


「強くしないと読まれません。阿部様は政治家です。危機感を持たせることが先決です」


「……それはそうだな」


 川路が計画書を受け取った日、「これを阿部様にお届けする」と言ってくれた。


「緊張するな」川路が珍しく言った。


「しています」


「正直だな」川路が笑った。「阿部様は誠実な者を好む。緊張していることを隠す必要はない」


「ありがとうございます」


「一つ頭に入れておけ」川路が少し真顔になった。「阿部様は今、非常に多忙だ。藩の業務、政務、外国問題。限界に近いかもしれない。面会の時間は短い。余計なことは言うな、大事なことだけ言え」


「分かりました」


 勝と計画書について最後に話した時、勝が「薩摩や長州からも伝習所に参加させるか」という問いを出した。


「……難しいところです」俺は言った。


「どっちでもいいと思うか」


「そうじゃないです。薩摩・長州を入れれば、技術が彼らに渡る。入れなければ、彼らは独自に学ぶ。どちらが幕府にとって有利か——今はまだ判断できません」


「後回しにするか」


「後回しにしましょう。今は伝習所を作ることが先です」


 勝が頷いた。「そうだな」


(この問題は後で返ってくる。今は置いておく)


 夜、俺は自分の部屋で阿部との面会を想像した。


 どんな人物だろう。書状の筆跡は知っている。川路の話から、慎重で現実主義的な政治家だということは分かっている。


(急かしすぎてはいけない。川路の言葉通り、大事なことだけ話す)


 翌朝、川路から「面会の日が決まった」という知らせが来た。


「緊張するな」川路がまた言った。


「しています」俺は正直に答えた。


「ここで認められれば、次の扉が開く」


 俺はその言葉を、深く受け止めた。

続きも本日更新予定です。よろしければ次話もお付き合いください。

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