ep5「第二次試験 緊急危機獣来」-1-
………
大講義室に入ると、そこは「大」が付くだけのことはある広い講義室で、机が後ろにいくほど高い位置になった階段型の作り。席にはすでに数十人の受験者がバラバラと自由な席に着いていて、何かと入ってきた俺に目線がくる。
「——あっ! おーいマガツー、こっち来いよぉー!」
そう呼び掛けてきたのは、忍びショタっ子の影雷。窓際の列、しかも最後尾の席と、如何にも子供が選びそうな席に座っていた。
「何かよく分かんないけど、俺前列に座るわ」
「えぇッ、来てよ!」
俺は影雷の誘いを断り、窓際の最前列へ。むすっとした視線が後方から送られてくるが気にせず、席へと着いた。
するとそのすぐ、俺の席から横に一つ空けて、一人の女性が来る。
「——ここ、座ってもいい?」
「ん? どう、ぞ……?」
隣に来たその女性、びっくりするくらいの美人であった。少し長めの黒髪を後ろへ束ねた彼女は、歳は俺とさほど変わらなそうだが、仕草の一つ一つが大人びており、綺麗な容姿と相まって、距離は近くも遠い人のよう。
「聞きたいんだけど、君よね? 威力部門一位を更新したの」
ぬるっと突然、美人な女性はそう、なぜかしかめた顔で尋ねてくる。
「……? 何のことですか?」
質問の意図が分からず首を傾げると、彼女はさらに眉間へしわを寄せる。
「別に謙遜とかいらない。自分の順位確認しなかった訳じゃないでしょ? 試験場からここに来る道中の空中ディスプレイに、貴方の顔と一緒に載ってた。現役の騎士たちも超えて、威力部門を大きくひっくり返すなんて、どういう耀偽なの?」
そう詰め寄ってくる彼女に圧倒され、俺は後ろに下がりながら答える。
「そ、そのー、考え事してて見てなぃというか、俺が一番それ驚きなんですが」
「……はぁ、そ。——周りなんか気にせず、高い倍率で撃っとけばよかった……」
つまらないそうに一人ボソボソと愚痴る彼女に、俺は再び首を傾げる。
「何でもない……ごめんね。私はカムイ。耀偽の威力には自信があるから、それで負けてほんの少し気が立ってた。第三次は受験者同士の戦闘が通例だし、そこで見てくれたら分かると思う」
「は、はあ。そうですか」
ちょっぴり引き気味に言う俺。
何せこの人すでに、始まってもいない第二次試験を突破した前提で話している。さすが名だたる贖罪騎士団。受験者も曲者揃いという訳だ。——いやまあ、落ちる前提で話すよりかは、おかしな話ではないかもしれないが。
それから程なくして、洋画に出てきそうな殺し屋にしか見えない強面の男が、何かの用紙を手に前方の教卓に着く。
「間もなく第二次試験が始まる。試験官はこの私、ストログだ。よろしく頼む。君らにはこれから——」
——静寂響く大講義室で、試験の開始を待つ。課題はペーパーテスト。動悸が外にまで伝わりそうに思えた直後、
——キーンコーンカンコーン……——
、、、チャイムが試験開始の合図を、甲高く響かせた。
◆◇◆◇
同刻、贖罪騎士領……とある町にて。
「おじちゃん、いつもの野菜ちょうだい!」
「おっ、お嬢ちゃん毎日おつかい偉いな! そんな偉い子にはサービス、を……」
「……? おじちゃん、どうしたの?」
「何だ、あれは……」
老人は町の石門から先、広い野原の地平線へ目を細める。映ったのは——
「——ヴォルルル……ガルルッ」
低く唸るそれは、大群の——
直後、町の高台に設置された警鐘が、大きく大きく、警戒音を響かせた。
◆◇◆◇
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