ep4「それは明日追う一撃 第一次試験!」
………
「——緊急回避ぃッ…!」
なんて、俺は思わず試験場で叫びながら、降りくる大岩をダイナミックに躱す。それはもう、身体をまっすぐに伸ばし、地面に飛び込むように——
『ブブーン——ラウンド5終了。マガツ、クリア。現在の受験者順位は150人中7位です』
「うごっ、てて……ふぅ。さすが贖罪騎士団。第一次試験からキツい……」
飛び込み空中を漂う最中、機械音声によるアナウンスがなされて、ベタッと地面へ全身を着く俺。第一次試験はラウンド式に課題が課されていく試験で、落ちてくる岩から逃げたり、一定のライン内で異核獣を倒すなど、内容はそんな感じだ。
「——とうッ、シャドリン登場! うむうむ。耀偽の使用禁止を課した全課題、見事クリアだな」
第一次の試験官が地面からうねうねと黒い液体から形を成して、愛嬌のある怪獣の着ぐるみ姿で現れる。
「(あっ、また現れた……)それでシャドリンさん、あと幾つ——」
「安心なっさいや! 次が最後。課題は簡単。僕が召喚する打ち岩を破壊しろ。ちょいと硬い特別な岩だが、耀偽の使用を解禁する。容易く壊せよ! んじゃバ!」
バシャ……と音を立て、試験官シャドリンは影の液体となって地面へ沈み消える。
「はぁ、あの人、本当に人の話し聞か、ない——え?」
ゴゴゴッ……と現れる打ち岩。地響きがそれを呼んだのか、それが地響きを呼んだのか。黒い液体が地面から噴水のように湧き立ち——辺りが暗くなる。そうして出来上がった岩は、あまりにも大きくて——
「——これは流石に、デカ過ぎんだろ……」
愕然と漏れた言葉。
出現したその岩の大きさは、学校の校庭ほどの広さはある試験場一つの区画を、まるっと埋め尽くすほどであった。
◇
マガツの第一次試験と同刻。管制室では、騒然の事態に直面していた。
「シャドリンちゃん!? マガツくんに送ったあれ、試験用じゃなくない!?」
「おいッ、早く回収させろ! あれは研究のため取り寄せたものだッ。少しでも傷がついたのをあの人に寄越したら……俺は知らんぞ!」
どうやら、マガツの目の前に現れた大岩は騎士団側の手違いらしく、管制室の一同は一心不乱にそれの回収に慌てている。——と思いきや、一人余裕の態度で席に腰掛け、大岩が画面を埋めた真っ暗なモニターを見つめる団員が、愚かに一人。
「まあそう慌てずに。あれは採掘団が三日三晩の攻撃の末に切り出した、深部10層目のこの星の盤。こんな神秘だらけの戦乱世界で、同様に神秘を得た不滅を貫く星の皮膚です。わずかな時間で毛ほどの傷もつけられようものか。慌てず回収を——」
——バガァァァァンッッ!
試験場からは距離のある管制室が、微かに揺れる。凍り切った空気が充満する。同時刻にスピーカーに出力されたのは、重い衝撃音。映像に出力されたのは、真っ暗から明転、試験場に舞う、跡形もなく砕け散った——不滅を貫く星の皮膚。
モニター越しから、その場にいたツクシも目を点にする。
「ま、マジでぇ……こっコホン。ふっふっふー! 彼こそ私が話していた子です! 今の見たでしょっ。もう合格でもいいでしょう? ねえ死水団長〜」
騒然唖然の場で一人、管制室の皆を見下げる位置にある席の中心でそれをジッと見つめる女性。彼女こそ、現贖罪騎士団の団長……死水。
「ツクシよ、期待しているなら信じて待て。だが、ああ……欲しいな、こちらに」
◇
試験場一面に岩の破片と砂煙が舞う。
「——あ、あれ? 今の……俺が、やった、のか?」
呆然と持っていた大きなハンマーを手から滑り落とす。そうして地面に零れたのは、無。ハンマーは塵も残らず消えてしまう。
この状況、作り出したのはまあ……俺だろう。しかし、不可解だった。
確かに、あの馬鹿デカい打ち岩を破壊しようとはした。その時にハンマーを壊す勢いで全力の強化『限界解除』を施したのも事実。
だがそれは、打ち岩に剣を刺し込むための——例えるなら、剣を釘に、ハンマーを金槌に見立て、打ち岩へ徐々に亀裂を入れるための最初の一撃……のはずだった。
全くもって、ハンマーの一撃で壊すつもりはなかったのだ。
俺の“力”……耀偽は、端的に言えば段階を選択して行使する、物体強化の耀偽。
段階は全部で「1〜3」と言った感じ。
扇風機で例えるなら「1」は弱、「2」は中、「3」は強……と言った感じで、段階を上げるほど強くなる。が「3」までいくと、その強化対象物は一度使用しただけで前に女性から借りた斧なんかのように壊れてしまう代償付きだ。
ちなみに奥義……限界解除、またの名『ロストランフェイン』こそが「3」に当たる、代償を抱えた超強化だ。
そして俺は今回、「3」の強化を行なった……つもりだった。しかしどうして、例と違う。ハンマーの壊れ方、何より放たれた威力が。
通常の限界解除も十分すぎる威力を誇るが、ぶっちゃけここまで圧倒的な破壊力を生み出すものではなかった。壊れ方だっていつものパターンなら、ガラスが割れるような、耳に響く騒々しい音を発して壊れる。
だが今さっきのハンマーの壊れ方は、固体が液体になる工程をすっ飛ばして蒸発するような、不自然な壊れ方——いや、消滅だった。
まさか、存在しないはずの「4」が使えたとでも言うのだろうか……
「——まっ、今は考えても仕方ないか」
『ブブーン——マガツ、最終課題クリア。第一次試験合格です。本日第二次試験まで行います。場所は大講義室。案内に従いお進みください——』
「————————……?」
てっきりまた、試験官のシャドリンさんが出てくるものと思っていたのだが、それからしばらくしても一切出てくる気配がなく、俺は首を傾げる。
「……行っていいよな。——にしても、あれは良い点取れたんじゃないか〜!」
——俺はそうして、管制室やらが今どんな状況かいざ知らず、荷物を手に案内に従い、試験場を後に、第二次試験会場の大講義室に向かっていく——
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