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「それで――貴方は、誰を求めているのですか?」
「知れたこと。欲しいのはフィオーレ。伝承にある女を、この手にすること」
「手にしましたら、どうするおつもりですか?」
「我だけのモノにする。そして今度こそ――」
あまりに嬉しいのか、腹を抱え笑いだす。狂喜に歪む顔は、とても悪意に満ちた表情をしている。
「凝縮された呪いを、元の場所へ返す。ははっ、完全なフィオーレの完成だ! あの気高き存在。香しい血の存在を、我はついに完成させるのだ!!」
両手を広げ、球体に触れる。
愛しい眼差しを向け、頬擦りをする。
「――やはり、破滅をもたらす存在か」
カチッ、と金属音がする。それに気が付いたのか、ディオスは音の方を向く。
「ほう――どういうつもりだ?」
口元を怪しく歪め、少年に問う。
「これも、貴方との契約の内です」
にこやかに、剣を向け少年は答える。
「我に逆らうというのか?」
「いえいえ。これはそのようなものではありません。――貴方が、私に命じたことだ」
引き締まる口調。
だが表情は、未だにこやかなまま。真意の読み取れない少年に、ディオスは怪訝そうな表情を浮かべた。
「我の命だと? そんなはずはない。我はお前に――?」
動きが鈍くなる。
気配を探るも、少年が仕掛けてきた様子はない。だとしたら――。
「そう。私に命を出したのは貴方ではない」
もしやと思ったことを、少年は肯定する。
「命じたのはレフィナド。そして体の異常も、レフィナドによるものです」
「――はっ。何を馬鹿な」
認めたくない。認めてなるものか――!
その思いで、ディオスは体を動かす。だが確実に、体は自分の意思どおりになってくれない。
「あり得ぬ……お前に力などっ!」
自分の胸倉を掴み、苛立ちを露にする。
そんなディオスに、驚くことはないでしょう? と、少年は問う。
「貴方も、同じことをしてきたではないか。いつか自分と同じことをする者が現れても、なんら不思議は無い。――Exaleipsi 」
淡い光が、剣を覆う。己に刃が向かって来るというのに、体はもう、完全に自由を奪われ防げない。
「――Synvasi Exaleipsi(契約抹消)」
ディオスの胸に、剣が刺さる。骨の間をうまく抜け、するりと、背中まで綺麗に貫通した。
「これで、契約は果たされた」
引き抜くと、ディオスはうつ伏せに倒れる。血は出ているが、死に至る傷ではない。これぐらいの傷、彼ならばすぐに回復するものだ。
剣を納めると、少年は球体に視線を向ける。
「刺激を与えるのは……よくないか。――どうするのがよいだろうな?」
前を向いたまま、少年は問う。
「――――出すしか、あるまい」
答えたのは、いつもより少し声の高い、ディオスの声だった。




