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「貴方は……初めて、赤の命華から産まれた子供なの。赤の命華に子供が産まれたとわかれば、その子供は殺されるか、利用されてしまう。だから私は……全てを、背負うことに決めたの」
「背負うって……」
もしかしたら、呪いのことなんじゃないかと頭を過った。
「私は、必ず未来を変えてみせる。貴方や、あの人に恨まれようともね」
女性の瞳には、決意が秘められていた。覚悟を決めたその姿は、とても凛々しく、神々しくさえあった。
「あ、あのう。貴方の、子供って……」
私なの? って、聞きたいのに。
なのに、いざそう思うと、なかなか言葉にすることができない。
怖いとか、間違いだったらとか。余計な考えが、私に戸惑いを与えた。
「ふふっ。貴方は、あの人と同じ瞳をしているのね」
先程までの真剣な表情とは違い、女性は私に、とても優しく微笑む。
「でも――髪色と可愛さは、私と同じね」
楽しげに、女性は頭を撫でた。
「――――どうして、泣くの?」
いつの間にか、私は泣き出していた。自分の親だと核心したら、我慢ができなくなってしまった。
「きっと……私に責任があるのね」
「ち、違っ……」
「色々、今は苦しいと思う。でもね、貴方は一人じゃないから。――自分を、信じなさい」
そう言って、女性は私の額に、唇を落とす。
途端、体に不思議な感覚が走った。心臓が速さを増していくものの、薬を入れられた時とは違う――心地いい感覚がする。
「ねぇ、貴方はみんなに、なんて呼ばれてるの?」
「――――美咲、です」
「そう。そっちの世界では、そういう名前なのね。本当の名前は……聞いてる?」
首を横に振ると、女性はにこっと笑みを見せた。
「貴方の名前は……フェリス。あの人が考えた名前で、【幸せな】って意味があるのよ」
一つ一つ丁寧に。
大事そうに、名前を紡いでいった。
抱き寄せると、女性はとても嬉しそうに、私を見つめていた。
「フェリス……よく聞いて。貴方が目覚めたら、少しは体の自由が戻ってるはずよ」
「どうして、私が動けないってこと――あっ」
そっか。未来が見えるなら、私の状況もわかっちゃうんだ。
「ふふっ。考えてるとおりよ。それでね。体が動くと言っても、本当にしばらく――そうね、一時間あるかないかってほどかしら? その間に、どうにかこの世界から逃げなさい」
「そ、そんなのダメ!」
私一人でなんて、逃げるわけにはいかない。
助けたい友達がいると言えば、女性は困った表情を浮かべた。
「その人は……大切な人?」
前にも見たことがある、とても悲しそうな目で、私を見つめる。
「大切です。私の為に傷付いて……今だって、私を護ろうとしたせいで苦しんでます!」
「…………そう」
呟くと、女性は目を閉じた。
そしてゆっくり、
「目が覚めたら……その感情は、消えてしまうわ」
名残惜しそうに、体をきつく抱きしめる。
「これから、〝それ〟を理解するたびに消えてしまう。〝それ〟は私たちにとって、理解してはダメなことだから」
「……意味が、わかりません。それってなんですか? 消えるって、何が消えるんですか?」
「今は言えないわ。でもこれは――貴方を、護る為なの」
ぎっ、と悔しそうに唇を噛みしめる。
「特にフェリス。貴方は――それがとても強く現れるみたい。もしかしたら、私より強いかもしれない。だから、〝それ〟自体を知らないかもしれない。その方が……一番いいかもしれないけど。――そろそろ時間ね」
徐々に、視界が歪んでいく。
終わってしまうと悟った私は、慌てて叫んだ。
「ま、待って! 聞きたいことがたくさんっ!」
離れたくない。今なら、お母さんと話せるのに――!
伸ばした手は、空を掴むかの如く。
それが母に触れることのないまま。
意識は、そこで途絶えた。




