表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/189

.


「貴方は……初めて、赤の命華から産まれた子供なの。赤の命華に子供が産まれたとわかれば、その子供は殺されるか、利用されてしまう。だから私は……全てを、背負うことに決めたの」


「背負うって……」


 もしかしたら、呪いのことなんじゃないかと頭を過った。


「私は、必ず未来を変えてみせる。貴方や、あの人に恨まれようともね」


 女性の瞳には、決意が秘められていた。覚悟を決めたその姿は、とても凛々しく、神々しくさえあった。


「あ、あのう。貴方の、子供って……」


 私なの? って、聞きたいのに。

 なのに、いざそう思うと、なかなか言葉にすることができない。

 怖いとか、間違いだったらとか。余計な考えが、私に戸惑いを与えた。


「ふふっ。貴方は、あの人と同じ瞳をしているのね」


 先程までの真剣な表情とは違い、女性は私に、とても優しく微笑む。


「でも――髪色と可愛さは、私と同じね」


 楽しげに、女性は頭を撫でた。




「――――どうして、泣くの?」




 いつの間にか、私は泣き出していた。自分の親だと核心したら、我慢ができなくなってしまった。


「きっと……私に責任があるのね」


「ち、違っ……」


「色々、今は苦しいと思う。でもね、貴方は一人じゃないから。――自分を、信じなさい」


 そう言って、女性は私の額に、唇を落とす。

 途端、体に不思議な感覚が走った。心臓が速さを増していくものの、薬を入れられた時とは違う――心地いい感覚がする。


「ねぇ、貴方はみんなに、なんて呼ばれてるの?」


「――――美咲、です」


「そう。そっちの世界では、そういう名前なのね。本当の名前は……聞いてる?」


 首を横に振ると、女性はにこっと笑みを見せた。




「貴方の名前は……フェリス。あの人が考えた名前で、【幸せな】って意味があるのよ」




 一つ一つ丁寧に。

 大事そうに、名前を紡いでいった。

 抱き寄せると、女性はとても嬉しそうに、私を見つめていた。


「フェリス……よく聞いて。貴方が目覚めたら、少しは体の自由が戻ってるはずよ」


「どうして、私が動けないってこと――あっ」


 そっか。未来が見えるなら、私の状況もわかっちゃうんだ。


「ふふっ。考えてるとおりよ。それでね。体が動くと言っても、本当にしばらく――そうね、一時間あるかないかってほどかしら? その間に、どうにかこの世界から逃げなさい」


「そ、そんなのダメ!」


 私一人でなんて、逃げるわけにはいかない。

 助けたい友達がいると言えば、女性は困った表情を浮かべた。




「その人は……大切な人?」




 前にも見たことがある、とても悲しそうな目で、私を見つめる。


「大切です。私の為に傷付いて……今だって、私を護ろうとしたせいで苦しんでます!」


「…………そう」


 呟くと、女性は目を閉じた。

 そしてゆっくり、




「目が覚めたら……その感情は、消えてしまうわ」




 名残惜しそうに、体をきつく抱きしめる。


「これから、〝それ〟を理解するたびに消えてしまう。〝それ〟は私たちにとって、理解してはダメなことだから」


「……意味が、わかりません。それってなんですか? 消えるって、何が消えるんですか?」


「今は言えないわ。でもこれは――貴方を、護る為なの」


 ぎっ、と悔しそうに唇を噛みしめる。


「特にフェリス。貴方は――それがとても強く現れるみたい。もしかしたら、私より強いかもしれない。だから、〝それ〟自体を知らないかもしれない。その方が……一番いいかもしれないけど。――そろそろ時間ね」


 徐々に、視界が歪んでいく。

 終わってしまうと悟った私は、慌てて叫んだ。


「ま、待って! 聞きたいことがたくさんっ!」


 離れたくない。今なら、お母さんと話せるのに――!

 伸ばした手は、空を掴むかの如く。

 それが母に触れることのないまま。

 意識は、そこで途絶えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ