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「変ことしてない? あいつらに、何かされてない?」
ん? と、エメが優しく問いかける相手は、自分と年が近い少年――雅だった。
「なんで……ここ、に?」
「私がいなきゃ、エルはムリするでしょ? 貴方をそんなふうにしたのは……私が原因だもの」
抱き留めた腕を緩め、しっかりと、雅の顔を見つめる。そして両手を、雅の頬へもっていく。
「貴方が今まで何をしてきたのか、私は知ってる。でも、それを責めるつもりはないわ。そんなことをやらせたのも、私が原因なんだから」
「姉さんは悪くない! オレが弱いから……だから姉さんはっ!!」
涙を流し、感情をあらわにする雅。それを嬉しそうに、エメは優しく見つめていた。
「エル……これから話すことをよく聞いて。私は今から、みんなを束ねる。貴方はリヒトさんと一緒に、美咲ちゃんを助けて」
「わかってる。命華の血がなきゃ、姉さんをたすっ」
「こらっ! そんなこと考えない!!」
バチンッ! と、乾いた音がした。
かなりの強さで叩かれたのだろう。雅の頬は、赤くなっていた。
「初めはそうだったかもしれないけど……エル、美咲ちゃんといて楽しくなった? わくわくしなかった?美咲ちゃんの記憶にある貴方は――とっても素敵な笑顔でいたと思うんだけどな」
「っ……そんなんじゃ、ない。オレが楽しいと思うのは、姉さんといる時だけなんだ!」
「まったく……嘘はつかないの」
ね? と、エメは再び抱きしめる。
「認めないならそれでもいいけどね。とにかく! 美咲ちゃんを泣かせちゃダメよ? ほら、早くリヒトさんと合流しなさい」
「っ!? 姉さん――っ!」
「早く動きなさ~い。また後で会いましょうね!」
あっと言う間に、エメは姿を消した。
この数分のことは、現実に起きたこと。けれど雅は、まるで夢でも見ているような心地だった。
彼にとっては何十年。数百年と待った再開。それがいともあっさり済んでしまったのだから、当然かもしれない。
「動くのは――姉さんの為だ」
言い聞かせると、雅も空を駆けた。
◇◆◇◆◇
見えたのは――桜色をした空。
ふわふわと浮かびながら、私はどこかへ進んでいた。しばらくすると、たくさんの花が咲き乱れる場所に出た。私はそこで下り、花畑を歩いて行く。
――遠くに、誰かが立っているのが見えた。
輝く紅色をした、長い髪の女性。それは以前に見た、あの女性だった。
すると女性は、こちらを振り返る。
「貴方に――会いたかったわ」
優しい眼差しを向ける女性。どうやらこの人も、お姉さんのように、私の姿が見えているらしい。
「! まさか……覚醒しているなんて」
女性は、私の目の前にやって来る。
手を伸ばしたかと思うと、その手は私の頬にそっと触れ、なんとも悲しそうな表情をしていた。
「貴方は……誰、なんですか?」
「私は――赤の命華よ」
そう言って、女性は私を抱きしめた。
なんだか……不思議な感覚。
抱かれるのが心地いいのか。とても……温かい気持ちになっていく。
「私には、少しだけ先の世界を見れる力があるの。でも……貴方はその逆。貴方は過去を見れる」
「? だったらどうして」
見れるだけなら、こうやって触れることも、話をすることもできないのではと、疑問が浮かんだ。
「それはね、仲間のおかげ。そして……貴方が、特別な〝命華〟だから」
真剣な瞳で見つめられ、私は目をそらすことができなかった。とても綺麗な顔立ちに、目を奪われてしまっていた。




