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――不思議。
ここには、余分なモノが存在しない。
今まで生きてきた中で、最も解放的な気分。
体という隔たりがなく、全てにおいて平等――そんな感覚が、〝私〟という〝個〟を無にしていく。
必要なのは力。 〝私〟にはない。
必要なのは血。 〝私〟ではダメ。
きっと目が覚めたら、私は私ではいられないと思う。
だってもう、〝私は〟選んでしまったから。
後悔しないつもりだったけど……やっぱり少しだけ、後悔はある。
私のせいで、酷い目にあってないかとか。
おじいちゃんや先生。叶夜君や雅さん。お姉さんのことも。大事なみんなのことが、心配でしん、ぱ、い――。
――――ピキッ。
――――ピキッ。
何かが、音をたてて割れていく。
今……なにを、考えてた?
意味のわからない文字が並び、それがどういうモノなのかわからない。
コ、
ウ、
カ、
イ、
シ、
ン、
パ、
イ、
ダ、
イ、
ジ、
考えてはダメ。 私が壊れる。
知ってはダメ。 私が保てない。
それが私の。
それがあなたの。
【呪いと――罰なのだから】
*****
「本当――いつまで保てるやら」
とても大きなため息をついて数秒後。エメはビルの上を駆けた。
目指すは自分の世界。そこで彼女は、ある人物を探していた。
けれど、帰るやいなや目にしたのは、淀みきった空気と、影が蠢く自分の世界だった。
「まったく。こんな有様になるなんて……っ!?」
悔しがるエメの体に、異変が起きた。黒く変色した左手が、肘までその色を進行させていた。
スカートの裾を破り、黒くなった腕に巻きつけていると――気配を感じた。瞳を輝かせ、その場所へと急ぎ駆ける。
「――――見つけたっ!」
どんっ、と勢いよく目的の場所にいた人物にエメは抱き付いた。いや、抱き付くというよりも、体当たりと言う方が適切かもしれない。それだけ、相手に与えた衝撃は大きいのだから。
小さな呻き声を上げたものの、抱き付かれた人物はエメを責めることなく、自らもエメに抱き付く。




