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「逃げられるはずなかろう? お前には、私の血があるのだから」
怪しく微笑み、男性はゆっくり、私たちに近付く。
この人……叶夜君の、なんなの?
そんなことを考えていると、叶夜君は私を背にかばい、男性の前に立ちはだかったと同時。
「ふっ。大人しくしていればいいものを」
「っ!?……ぁ、ぐ」
苦悶の声がもれたと思えば、叶夜君の体を、何かが貫いていて。
「あまり、手間をとらせるな」
叶夜君の右胸を――刃が、貫いていた。
男性が手を引いた途端、ぴしゃりと顔に、なにかがまとわり付く。
「?――――あ、あぁ」
それが何かわかったのは、手で触れて見た時。まとわり付いているそれは……真っ赤な色をしたモノ。それを理解した途端、私はおそるおそる、目の前の叶夜君を見た。
「きょ、……きょう、や……君?」
怯えた声を出す私に、叶夜君は顔だけで振り返り、優しい笑みを見せた。
「ケ、ガ……な、いっ――」
言い終わる前に、叶夜君は、その場に崩れるように倒れてしまった。
するとその場に、どんどん血が広がっていくのが目に映った。
「外したか。だが、これでもう何も出来まい」
叶夜君は右胸を押さえ、肩で大きく息をしている。
あまりにも突然の出来事に、私は呆然と、その光景を見ていることしかできなかった。
「さぁ、共に参りましょう」
何もできない自分に情けなさを覚えた。逆らう気力も無くて、私は叶夜君から引き離された。
「貴方が逃げるから、誰かが傷付く。大人しくしていれば、叶夜を治療させましょう」
怪しい笑みを浮かべながら、男性は言う。
言葉が聞こえているのに、反応することができない。目の前に広がる血のことで頭が埋め尽くされ、目をそらせないでいた。
「ふっ、言葉も出ぬか。――何をしている?」
「そいつ、に……さわ、るなっ!」
男性の足にしがみ付き、ありったけの声で、叶夜君は叫んだ。
「まだそんな口を利くか。――仕置きが足りないようだな」
鈍い音が聞こえたと思えば、男性は叶夜君を足蹴りした。数メートルも吹き飛ぶ体は、まるで紙きれのように。地面に転がりながら、叶夜君は多くの血を流していった。
「っ!? や、やめて下さい!!」
力尽きる叶夜君を見て、私はようやく、言葉を発した。
すぐにでも駆け寄りたい……。
だけど、しっかり掴まれた両腕からは、どうやっても逃げることができなかった。
「我々に従うなら、叶夜には何もしない」
嫌な笑みを浮かべながら、男性は私に言った。




