表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/189

.




「逃げられるはずなかろう? お前には、私の血があるのだから」




 怪しく微笑み、男性はゆっくり、私たちに近付く。

 この人……叶夜君の、なんなの?

 そんなことを考えていると、叶夜君は私を背にかばい、男性の前に立ちはだかったと同時。


「ふっ。大人しくしていればいいものを」


「っ!?……ぁ、ぐ」


 苦悶の声がもれたと思えば、叶夜君の体を、何かが貫いていて。




「あまり、手間をとらせるな」




 叶夜君の右胸を――刃が、貫いていた。




 男性が手を引いた途端、ぴしゃりと顔に、なにかがまとわり付く。




「?――――あ、あぁ」




 それが何かわかったのは、手で触れて見た時。まとわり付いているそれは……真っ赤な色をしたモノ。それを理解した途端、私はおそるおそる、目の前の叶夜君を見た。




「きょ、……きょう、や……君?」




 怯えた声を出す私に、叶夜君は顔だけで振り返り、優しい笑みを見せた。


「ケ、ガ……な、いっ――」


 言い終わる前に、叶夜君は、その場に崩れるように倒れてしまった。

 するとその場に、どんどん血が広がっていくのが目に映った。




「外したか。だが、これでもう何も出来まい」




 叶夜君は右胸を押さえ、肩で大きく息をしている。

 あまりにも突然の出来事に、私は呆然と、その光景を見ていることしかできなかった。




「さぁ、共に参りましょう」




 何もできない自分に情けなさを覚えた。逆らう気力も無くて、私は叶夜君から引き離された。


「貴方が逃げるから、誰かが傷付く。大人しくしていれば、叶夜を治療させましょう」


 怪しい笑みを浮かべながら、男性は言う。

 言葉が聞こえているのに、反応することができない。目の前に広がる血のことで頭が埋め尽くされ、目をそらせないでいた。


「ふっ、言葉も出ぬか。――何をしている?」


「そいつ、に……さわ、るなっ!」


 男性の足にしがみ付き、ありったけの声で、叶夜君は叫んだ。


「まだそんな口を利くか。――仕置きが足りないようだな」


 鈍い音が聞こえたと思えば、男性は叶夜君を足蹴りした。数メートルも吹き飛ぶ体は、まるで紙きれのように。地面に転がりながら、叶夜君は多くの血を流していった。


「っ!? や、やめて下さい!!」


 力尽きる叶夜君を見て、私はようやく、言葉を発した。

 すぐにでも駆け寄りたい……。

 だけど、しっかり掴まれた両腕からは、どうやっても逃げることができなかった。


「我々に従うなら、叶夜には何もしない」


 嫌な笑みを浮かべながら、男性は私に言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ