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「アナタがもたもたしてるから、あの子、どっかに連れて行かれちゃったわよ?」


「……失態だということは、自分が一番分かっている」


「うわっ。すっごい根暗入ってるのね。――助けに行かないの?」


「私は今、あの方の使い魔ではない」


「痩せ我慢しちゃって。行きたいならいいのよ? 私は優し~い主だから、あの子の為に動いても怒らないし」


 むしろ動きなさいよ! と、最後には何故か、青年は少女に叱られていた。


「なんだ、貴女の方が行きたいのではないか?」


「そりゃあ、無暗に人が死ぬのは避けたいし……。話聞いたら、放っておけないのは当たり前でしょ?」


「初めて会った時から思ってたが、まさかここまで」


 お節介な性格だとはな、と青年はため息をついた。


「助けるの? 助けないの? ハッキリしなさい!!」


 詰め寄られ、青年は本日一番とも言える深いため息をついた。


「助けたいが、手立てが無い。あちらの世界に行く術を知らないし、行ったところで、私に出来ることは限られている。――確実に、貴女が大変なことになりますよ?」


「あら、そんなこと気にしてたの? 今までの私の扱い、思い出してみなさいよ。今更って感じでしょ?それに――あの子見てたら、私もなんだか気になっちゃうのよね」


「方法は……あるのか?」


「あるわよ。直接手が出せないなら、〝出せる人に〟動いてもらいましょ?」


 ふふっ、と楽しげに少女は笑う。


「まずは――あの子の家族に、知らせてあげましょう。そーすれば必ず、動いてくれるはずだから」


 そう言って、少女は青年に耳打ちをする。


「ほら、早く行って来なさい」


 背中をバンッ!と叩き、青年の後を押す。

 それに青年は頷くと、屋根の上を伝って走り出した。向かうのは――今は日向美咲と言う名の彼女の家。それは青年が探していた、元主の今の名前。早く動かなかったのは失態だが、まだやれることがあるのだと、足を速めた。

 ――数分後。

 青年は一人、美咲の家の前に立っていた。夜中だというのに、何度も呼び鈴を押し、住人を起こす。




「……どちら様かの」




 やわらかな声で問うのは、歳老いた男性。

 こんな時間に起こされたにも関わらず、怒っている様子はうかがえない。


「無礼をお許し下さい。緊急な用事の為、こちらにやって来ました」


 頭を下げる青年。

 顔を見て、男性は見覚えがあるのを思い出した。


「あんた……最近、この辺りで見かける子じゃな? 一体、どんな用事があるんじゃ」


「――彼女が、連れ去られました」


 青年の言葉が理解出来ないのか。

 男性はきょとんとした表情を浮かべた。


「私は、あちらに手出しが出来ない。手遅れになる前に、出来ることをしておこうと思いまして」


「……あんた、あの子の何を知っておる」


「何も。私が知るのは、前世の彼女ですから。私を信じろとはいいません。ですが、今手を打たねば、本当に取り返しのつかないことになってしまうかもしれません」


 不安を煽る青年。嘘であってほしいと願うものの、実際連絡が取れなくなっていることが、男性の不安を更に加速させていった。


「要件はわかったよ。ひとまず、今日はお帰りいただけるかな?」


「……どうか、お願いします」


 最後に深々と頭を下げ、青年はあっと言う間に、姿を消した。




「――もしもし。悪いですが、事態が動き出しました」




 男性は家に入るなり、とある人物に連絡を取った。



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