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「その名で命令すれば――オレは、逆らうことが出来ない」


「そ、そんな大事なことを!? 私なんかが、命令だなんて……」


「気にするな。お前だからこそ……契約を、したいと思った」




 私、だから――?




 途端、顔が熱を帯び始めた。心臓がバクバクと激しく暴れて、自分でもよくわらない感情が心に渦巻いていく。



 

 それは、抱きしめられているからか。

 それとも、今の言葉を聞いたせいか。




 わからない答えに、私は頭を悩ませた。


「そういえば……なんでドレスなんか」


 自分で着たのかと聞く叶夜君に、私は違うと言い首を横に振った。


「これは……気付いたら、着せられてて」


 まじまじと見つめてくるものだから、私は恥ずかしさに耐えかねて、顔を背けていた。




「――――綺麗だな」




 すうっと、片方の頬に手を添えられる。俯こうとする顔を、叶夜君はくいっと自分の方に向けさせ、




「まるで――結婚式だな」




 嬉しそうに、そんなことを言った。

け、結婚式って……。

 私とを想像したってこと?

 何も言えない私に、悪戯っぽく微笑む叶夜君。その顔を見てしまえば、余計に返す言葉が出てこなかった。




「本当に……綺麗だな」




 頬に添えられた手が、ゆっくりと移動する。それは私の唇に移動し、指でなぞられていった。

 思わず、私は顔を背けた。

 あまりにも緊張して、もうまともに、叶夜君を見れない気がする。 


「……悪い。嫌だったな」


「べ、別に……嫌とか、そういうわけじゃ」


「……それ、他のやつの前で言うな」


 そう言うと、叶夜君はさっと私を抱える。

 そして窓の前に立つと、足で窓を蹴り破り外へ身を乗り出した。


「急ぐから、しっかり首に掴まれ」


「で、でも……それだと」


「いいから早くしろ」


「……は、はい」


 今は、恥ずかしがっている場合じゃない。頭ではわかっているのに、腕を回す私の体は、恥ずかしさのせいで、少し震えていた。


「絶対……離すなよ」


 真剣な眼差しで、月神君は私を見る。間近にあるその顔はとても綺麗で……青い瞳が、余計に綺麗さを際立たせているようだった。


「し、しっかり、掴まってます」


「あぁ。――じゃあ、行くぞ」


 それに頷くと、叶夜君は勢いよく、窓から飛び降りた。


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