表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/189

.


「心配……してるんだから。叶夜君が傷付く姿、もう見たくないの!」


「!? また……同じ、こ、と」


「もう……もういいじゃない。ずっと傷付いて、苦しんで。また昔みたいに、戻ってほしくない!!」


 気が付けば、涙を流していた。

 言いたいことがたくさんあって、自分でもなにを言ってるのかわからない時もあるけど、ただ一心に、叶夜君を助けたいんだって伝え続けた。


「私のっ、血で……元気に、なるんでしょ? 一回で足りないなら、何度も吸っていいから」


 だからお願い! と、叶夜君を抱きしめた。

 再び、両肩に手が置かれる。引き離されると思った私は、離れまいと手に力を込めた。


「違う、から。――――か、お」


 見せてくれ、と叶夜君は言った。


「たのむ、から」


 顔を上げれば、叶夜君は一瞬、驚きの表情を見せた。けれどすぐに、目を細め嬉しそうに私を見つめた。


「……その、瞳」


「? 何か……あるの?」


「昔と、同じ。こころ、を、感じた。――紫の、瞳の女性」


 いつかの夢が、頭を過る。

 鏡に映った、紫の瞳の女性。きっと今私は、あの人になっていると、そう、瞬時に理解した。


「お前、はっ……い、つも。――俺を、うご、かす」


 そっと、背中に手が回される。次第に引き寄せられ、今度は叶夜君の方から、私を抱きしめていた。


「き、っと。また……こわし、て、しまう。それしか、俺には無い、から」


「壊れるなんて。私はそんな、やわじゃないよ」


「あぁ……知って、る」


「だったら……吸ってくれるよね?」


 髪を右側に束ね、首筋を露にした。

 微かに口を開けたものの、叶夜君はまた閉じてしまう。決心がつかない様子に、私は再び、頭を抱え首筋に押し付けた。




「迷わないで。――大丈夫、だから」




「――――ご、めん」




 首筋に、温かい液体が触れる。

 視線をだけを向けて見れば、辛そうに顔を歪めながら、叶夜君は涙を流していた。


「……謝らないで。私は、大丈夫だから」


 叶夜君が、大きく息を吸う。――そして。

 



「はぐっ!」




 勢いよく、首筋に噛み付いた。




「んっ、ぐ……はぁ、っ……わる、い」




 貪るように吸われる血。体はキツく抱きしめられ、それだけ切羽詰っていたんだというのが伝わる。




「っは、ん……ぐ。――悪い。もう少し、だけ」




 まだ足りないらしく、なんとも申し訳なさそうに叶夜君は言った。


「いい、よ……だいじょ、ぶ」


 そう言ったあと、再び首に、温かい感触と痛みが走った。




 ――これで、少しでも治まるなら。




 そう思いながら、私は痛みに耐えた。


「……んんっ!」


 次第に……意識が遠退き始める。けど、たまに首筋を舐められるせいか、それが落ちそうな意識を引き上げていた。

 一滴も零さぬよう、何度も何度も、首筋を舌が這っていく。


「っ……ふぁっ、んん!?」


 くすぐったい感覚が体を走る。

 普段出さないような声が口からもれ、恥ずかしくなるのと同時に、体が変に熱くなるのを感じた。




「はっ、ぁ……俺を、早く」




 唇を離すと、叶夜君はなにか言った。ハッキリと聞こえず、聞き返してみれば、




「俺を……殺せ!!」




 振り絞るように、叶夜君は叫んだ。




 今……殺せって。




 信じられない私は、思考が停止した。血を吸われたせいか、頭が思うように回らない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ