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『悪い、な……もう。私っ、は』


『分かってます。分かってますから……』


 涙が、頬を伝っていく。溢れ出る涙をぬぐうと、お姉さんは男性に抱き付いた。


『これで私も……耐えることが、出来ます』


『ははっ……それはよかっ、たな』


 しばらく息が荒かった男性が、徐々に落ち着きを取り戻していく。




『――――余計な、事』




 途端、何が起きたのか。なぜか男性はお姉さんを組み伏し、妖艶な笑みを浮かべていた。


『アレとは楽しめたか?――なんだ、まだ行為に及んではいなかったのか』


 くくっ、と嫌な笑いがもれる。

 今までの雰囲気は一変。男性は明らかに、さっきまでの男性とは違っている。


『契約を奪われたのは残念だが、まあよい。これからお前には、私の子を生んでもらおうか』


『っ!――なら、早くすればいい』


 まっすぐ、睨みながら言うお姉さん。それが面白いのか、男性の表情は、とても楽しげに見えた。


『言っておくが、お前はあくまでも代理。幾ら行為を重ねようと、私はお前に興味は無い。――――欲しいのは』


 お姉さんのお腹に手をやると、勢いよく服を剥ぎ取る。


『古い血筋の子宮のみ。――お前はただ、体を奉げればいい』


 はははっ! と、甲高い笑い声を上げる男性。

 お姉さんは冷めた眼差しで、それを見ていた。


『早い話が、専属の玩具でしょう?――早く、すればいい』


 感情の無い声。


 それを合図に、男性はさっきの部屋で見た男たち同様、お姉さんを弄んでいく。




「いっ、……んんっ?!」




 ……やめ、てよ。




「っ、ぁが、、、っ……あぐっ」




 やめてよ……もうやめて!!




 堪らず出た叫び。でもそれが、目の前にいる二人に届くことはない。

 見てるだけ。ただそこにいることしかできないなんて……。




 ――――ザシュッ!

 目を背けた一瞬、何か、音が聞こえた。再び視線を戻せば――心臓を刺されたお姉さんと、嬉しそうに頭を撫でる、男性の姿が見えた。


 ――――――――――…

 ――――――…

 ―――…


 今度は……覚えてた。


 ゆっくり瞬きをしながら、夢のことを考えた。

 今までのものとは違う。臭いや音だけじゃない。ハッキリと、記憶に残ってる。




「――――おはよう」




 やわらかな声。隣を見ると、誰かがいる。目を擦れば、徐々にその人物の顔が見えてきて――ハッキリと姿が見えた途端、言葉が出てこなかった。


「怯えないで。私はちゃんと――存在してるから」


 心を見透かすように、目の前の人物は、やわらかい口調で話しかけてくる。


「時間が無いから、手短に話すわね。貴方が今見たのは、私が体験した記憶。話すよりも、こっちの方が手っ取り早いと思ってね」


 にこにこと穏やかに話すその人は、夢に見ていたお姉さん。さっきまで酷いことをされていたのに、何も無かったかのように、笑顔で話を進めていく。


「つまりは、王華と雑華の現状を知ってもらおうと思ったの。雑華の女は、見ての通りただの玩具。遊ぶだけ遊んだら、後は実験台。ま、王華の方も似たようなものらしいけどね」


「それを見ても、私には……」


 どうしたらいいかなんて、わからない。


 困惑する私に、お姉さんはそっと、頭を撫でていく。


「貴方には、これからを決めてもらいたいの」


「こ、これからって……。具体的に、何をしたら」


「大丈夫。もうすぐ、選ぶ時がくるから。――貴方はただ、自分がいいと思った答えを出して」


 そう言って、お姉さんは私の手を握り、祈るように目を閉じる。


「私に出来るのは、これが限界かな」


「限界って」


「色々、体をいじられてるのよ。だから、たまに自分でも自分を抑えられなくなるの。ま、そのおかげでこうやって話せるんだから、ちょっとは感謝しておくけど」


 そう言い手を離すと、お姉さんはすっと立ち上がり、窓を開け放つ。外へ行こうとするお姉さんに、私は思わず腕を掴んだ。


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