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 瞬きをすれば、徐々に景色がハッキリとしていき――ベッドに横たわるお姉さんと、お姉さんに呼びかけている男性の姿が見えた。

 ……まだ、戻れないんだ。

 酷い光景でないことを願いながら、これから起きるであろう出来事に目を向けた。


『――――…』


『ようやく気が付いたか』


『っ!? い、つぁ……』


 起き上がろうとするお姉さん。でも頭に受けた衝撃が強いようで、再び、横たわってしまった。


『急に動くな。――頭を冷やせ』


 布を頭に当てようとする男性。だがその手を、お姉さんは勢いよく振り払う。そして、こんなことは屈辱だ、と睨み付けていた。




『?――――あなた、は』




 けど、それまでの雰囲気は一変。お姉さんは驚きの表情で、男性を見つめた。


『ようやく理解したか。早速だが、私と契約しろ』


『!? 何を、バカな……。王華の長が、雑華の女に契約? はっ、冗談にしては笑えない』


『まぁ聞け。これはあくまでも表向き。この体とする契約もだが――〝私との契約〟だ』


 意味がわからないのか、お姉さんは首を傾げる。

 体とする契約って、私が叶夜君としたのとは別なのかなぁ。


『私の体は、別な者が動かしている。普段は奴が主導権を握っておるから、こうして出ていられる時間は少ない』


『……そんな話を、信じろと?』


『それはお前の自由だ。しかし、私としては奴と契約するのは薦めぬ。まぁ、無理やりされるのが落ちだろうがな。――それほどまで、奴はお前を欲している』


 真剣で、一点の曇りも無い眼差し。見つめ合ったまま、しばらく、二人は無言だった。




『――――それが本当なら』




 そっと、お姉さんの片手が上がる。男性の頬にゆっくりと触れ、これが現実なのか確かめるように、もう片方の手も、頬に触れる。


『助けたのは――貴方?』


 戸惑う声。

 それに男性は、お姉さんの手に触れながら、しっかりと頷いて見せた。


『たまたま、だがな。――――話を聞いてくれるか?』


 頷くお姉さん。それに男性は、自分の頬にある手を離し、そっと両手を握った。


『奴はこれから、とある人物との子をつくるつもりだ。今まで人工的にやってきたが、それでは上手くいかなくてな。そこで考えたのが、母体を使うこと。だが王華の女では駄目だった。人も試したが、それも失敗に終わった』


 !? それ、って……。

 途端、洋館での光景が頭に過った。


『雑華を使うことには、当初抵抗があった。しかし――古い血筋である、お前の存在を知った。だから奴は、お前の体を欲している。断れば、地下にいる女は襲われるだろう。今は手を出すなと命令したが……』


 私も、長くはいられないからな、と男性は苦笑いを浮かべる。


『だから本式の契約を、私と交わしておけ。そうすれば――』


 言葉に詰まる男性。表情を見れば、どこか辛そうな様子に見える。

 言いたいことがわかったのか。お姉さんはありがとう、と笑顔を見せた。


『貴方がそこまで考えてくれただけで――私は、救われる』


 そして、とても嬉しそうに、男性を見つめていた。




『――では、早く済ませましょう』




 そう言って、お姉さんは男性の腰にある短剣を抜く。そして躊躇なく、自分の手の平を切りつけた。短剣を返すと、同じように、男性も手の平を切りつける。


『我真名は――レフィナド』


 傷付いた手を、男性はお姉さんの口元に近付ける。


『我真名は――エメ・スウェーテ』


 お姉さんも同じように、自分の手の平を男性に近付ける。


『『我らは、血の契約を交わす』』


 同時に言葉を唱えると、二人は互いの血を口にする。――そして。


『我名の意味は、洗練されし者』


『我名の意味は、愛を願う者』


 厳かな雰囲気で進む契約。

 そんな中、男性は徐々に顔を歪めていく。心配するお姉さんに、時間が無いと告げ、契約を済ませることを優先させた。




『『今、この時より――この身は、彼の者と永久とわに』』




 その言葉を最後に、二人はそっと、口付けを交わした。




『――――間に合った、か』




 苦笑いを浮かべると、男性は、肩で大きく息をしていた。


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