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「そうだよ。あんなことをずっと続けたら、きっと、貴方は壊れちゃう」
「俺は壊れない。壊れるというのが血を流すことなら問題無い。どんなに血を流しても、心臓を貫かれても――俺は〝死ねない〟よう出来ている」
「そういうことじゃないの! 体も大事だけど……見えないここだって」
そっと、少年の胸に触れる。
すると少年は、心臓は問題無いと言う。
「さっきも言ったが、心臓だろうと、体にどんな異常があっても問題無い」
「心臓じゃ……ないよ」
首を傾げる少年。
私の言いたいことがわからないようで、他に何がある? と、聞いてくる。
一旦、静かに深呼吸をする。そして私は、まっすぐ少年の瞳を見つめ、
「……心が、壊れちゃうよ」
涙を浮かべながら、言葉を口にした。
「どんなに体が治っても、ここの傷は目に見えないし、なかなか治ってくれないものなんだよ?――きっと、貴方は優しい子なんだね。本当になにも感じないなら、すぐに私のことも殺しちゃってるはずだよ」
「……違う。今は、命令を受けていないだけだ」
微かに、少年の目が泳ぐ。動揺しているのか、私から目をそらしてしまった。
「それもあるかもしれないけど……さっき言ったよね。もう一度現れたら、私を殺すって。今、貴方はそれをしてないでしょ? やっぱり優しい子だと思うな」
「っ、がう……。俺はそんなことっ!」
「っ?!」
強く胸を押され、私は豪快に尻もちをついてしまう。
突然のことに驚いたけど、心配で少年を見れば、苦しそうに胸を押さえている姿が目に入った。
「かん、がえる、な――。余計な、ことっ!」
呼吸も荒く、まともに息なんて吸えてないような状態。急いで駆け寄れば、少年は膝から崩れ、倒れこんでしまった。
「……、っ……ぁ、が」
「急いで吸わないで! いい、私に合わせて?」
こういう時、焦って吸おうとしたら余計まともに息を吸うことなんてできない。一定のリズムで、欲張って吸おうとしない。初めは小さくていいから、落ち着くことが大切だ。
「っ……、……」
「その調子。ゆっくり、ゆっくりでいいからね」
苦しそうに歪む顔が、徐々に穏やかな表情へと変わっていく。
まだ瞳に覇気は無いけど、少年はしっかり、私を見つめている。
「しばらく、このままでいなさい」
「…………問題、なっ?!」
すぐに起き上がろうとしたものの、体力を消耗したのか、なかなか思うように体を動かせないようで。
「ほら、無理しないの」
自分の膝に少年の頭を乗せ、楽な体勢になるようした。
不服なのか、軽く眉間にしわを寄せる。
でも、大人しく従ってくれるあたり、やっぱり優しい子だよね。
思わず笑みがもれるほど、今の少年の状態が、微笑ましく思えた。
「――――ちょうどいい風だね」
さわさわと、心地いい風が吹く。
見上げれば、雲一つない、晴々とした空。
この世界で初めて、こんなに穏やかな時間を過ごした気がする。
「――――どうして」
小さく、声が聞こえた。
何を言ったのかと思い、視線を少年に向けて見ると、
「どうして――心配するんだ」
不思議そうに、そんなことを聞かれた。
「どうしてって、そんなの当たり前だよ?」
「当たり前……?」
「そうだよ。誰かが辛そうにしてたら、なんとかしてあげたくなるものなの」
「……そんな、こと」
無かった、と今までとは違い、悲しみを含んだ声が聞こえた。
よく見れば、表情もどこか、悲しいと言ったような感情が出ているように見える。
「本気で心配する者なんて……いなかった」
今にも、泣いてしまうんじゃないかと思える声。ようやく本音が聞けたような気がして、私は嬉しくなった。




