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徐々に体が慣れてきたのか、痛みの感覚が、緩やかになってきた気がする。
「――――は、ぁ」
まだしっかり言葉を口にできないものの、痛みが無いことを思えば、これぐらいどうってことない。
ゆっくり体を起こすと、水を飲もうと台所に向かう。でも、一度ソファーで休んでからでないと辿り着けないほど、体力は戻っていなかった。
コップ一杯の水を飲むと、再び、ソファーで休む。ちょっとのつもりだったのに、思ったより動くことができない。
……ダメ、だ。もうここで。
寝てしまおう、とそんな考えに至る。
一度そう思ってしまえば、体は素早くその態勢になり――意識は、そこで途切れてしまった。
――――――――――…
――――――…
―――…
「――? ――ぃ」
声が、聞こえる。
目を開けて見ても、眩しくてよく見えない。
「息はある、か」
首に、何かが触れている。
目の前にいるのは誰なんだろうと思っていれば、
「どうして――俺の前に現れる」
冷たい眼差しが、私を見下ろしていた。
この子、どこかで――。
目の前にいたのは、見覚えのある少年。はっきりとその顔立ちが見え出した時、夢で見た少年だということに気が付いた。
顔を左右に動かせば、緑の草が目に入る。どうやら私は、芝生の上に仰向けになっているらしい。
――また、来たんだ。
できれば前のようなものは見たくないけど……今度はどうなんだろう。
おそるおそる体を起こせば、そこには嫌なものはなくて。
「お前、話せないのか?」
そばに少年がいる以外、本当になにもなかった。よく見れば、今日は物騒な物は持っていない。とりあえず、切り付けられることは無さそう。
「話せるなら話せる。話せないなら首を縦に振れ」
「――――は、話せるよ」
「なら答えろ。――何故、俺の前に現れる」
隣に片膝を付き、少年は質問を続ける。
「初めて会った時、確かにお前を切った。なのに突然姿を消し、次に会った時には傷も無いだなんて……」
どういうことだ、と眉間にしわを寄せた。
聞かれても、私自身理由なんてわからない。だから正直に、自分でもわからないと伝えた。
「ごめんね、自分のことなのに」
「……同じじゃないのか」
小さく、何か呟く少年。不思議そうな表情を浮かべれば、少年は気にしなくていいと言う。
「わからないならいい。――自分で自分のことを理解出来るのは、ごくわずかだ」
一瞬、少年の瞳に影が宿った気がした。心配になり手を伸ばすと、少年はハッとした表情をし、その手を弾いた。
「用が無いなら、もう現れるな。――でないと」
再び、冷たい瞳が向けられる。――そして。
「次は――ここを切る」
そっと、首に触れられた。
この子……本気、なんだ。殺すことを躊躇しない。まだそんなことを続けているのかと思ったら、少年を見るのが辛くなってくる。
「――なんとも、思わないの?」
「前にも答えた。命令に従う、それだけでいい」
予想はしてたけど……やっぱり、今も変わらないんだ。
でも、あんなことを続けてたら、いつか殺されちゃう。
本人の意思で殺しているなら、かばおうとか、心配する気なんて起きないけど。この子自身も、本当はあんなことしたくないんじゃないかって。
さっきも思ったけど、私の首に触れた時、一瞬目をつぶっていた。思い返せば、相手に切りつける時にも、そんなことをしていた気がする。
そういうことをするってことは、傷付くのを見たくないとか――少なくとも、多少は殺したくないって気持ちがそうさせるんじゃないかと思う。
私に背を向け、歩き始める少年。途端、考えるよりも先に、私は少年に駆け寄り、背後から抱きしめていた。
「もう……殺さないで」
これ以上、人殺しなんてしないで。
そんなことは、絶対続けちゃダメなんだから。
「殺すたびにきっと……貴方が、壊れちゃう」
「――――壊れる?」
興味があるのか、少年は首をこちらに向ける。それを見て、私は少年と向き合う体勢になった。




