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「じゃあこれからは、私が心配してあげる」


 そっと、少年の体を包む。一瞬驚いていたけど、今度は振り払われることなく、私の腕の中で大人しくしてくれている。


「でも、心配ばかりかけないでほしいな。――傷付くのは、見たくないから」


「なら……見なければいいだろう」


「そういうことじゃないの。黙ってたら、それはそれで悲しいものなんだよ。それに――ずっと我慢してたら、また、ここが壊れちゃう」


「……よく、わからない」


「いいよ、すぐにわからなくても」


 いきなり、全てをわかる必要なんてない。こうして少しでも話して、聞いて。耳を傾けてくれただけでも、嬉しいことだから。


「お前は……不思議だ」


「不思議? 普通だと思うけど」


「もしくは変わってる」


 か、変わってるって。

 さすがにそれは、と苦笑いを浮かべると、少年は微かに口元を緩め、


「だから……俺もおかしくなる」


 初めて、大きな表情の変化を見た。


「――――名前」


「名前がどうしたの?」


「聞きたくなった。――無いのか?」


「あるに決まってるじゃない。私はね、美咲って名前――?」


 ぐらっと、目の前が揺れる。

 思わず前のめりになる私に、少年がなにか言ってるように見える。でも、それに答えても声は届かなくて――景色は、そこで消えてしまった。


 ――――――――――…

 ――――――…

 ―――…


 次に目を開けた時、私は以前着たことのある洋館に来ていた。

 地下への扉はもう無くて、どこに行けばいいのかと迷っていたけど、上へと続く階段を見つけ、私はひとまず、上を目指して行くことにした。




「――、――?」




 声が聞こえる。どの部屋からだろうと探してみると、少しドアが開いた部屋をい付けた。近付くと、声はその部屋から聞こえているようだった。

 そっとノブに手をかけ、そっと中を覗く。


「――分かった? これが先祖の話。私たちは、罪な種族」


 そこには、二人の人物が向かい合わせに座っていた。

 一人は前に見た女性で、その人の目の前には、さっきまで一緒だった少年がいた。

 ドアを閉めると、私は二人のそばに行き様子をうかがった。


「……罪な、種族」


「そう。私たちはいずれ、償う時が来る。だからそれまで、あいつらに従っているしかない」


「従う? でも、いつかは裏切る?」


「少し……違うわ。貴方は、貴方の意思で生きるの。そうねぇ~、誰か大切な人が現れれば、きっと分かる時がくるわ」


 すると少年は、無表情のまま、首を傾げた。


「大切……? 自分の意思……?」


「今は、分からなくていいわ」


「それ――前にも言われた」


「あら、もう現れてたのね。きっとその人、また貴方に現れるはずよ……ね?」


 ふと、女性と視線が交わる。

 それは私に言った言葉なのか。女性は微笑みかけ、何か言葉を口にした気がした。

 けれど、その声は聞こえることはなくて。何を言っているのか聞こうとした途端……目の前は、暗闇に包まれてしまった。

 さすがにこう何度も体験すると、驚くことも無くなってくる。


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