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『私は、汚染されたのよ? このままじゃ……貴方を、壊してしまう』
『オレは壊れない……そんなやわじゃないことぐらい、知ってるだろう?』
苦しそうな女性に、なにもしてあげられない。なんとかしようと背中を擦ったりするも、これが夢だからか、触れることができなかった。
『今から言うことを……絶対に守って』
真剣に言う女性に、少年は無言になる。そしてゆっくり、重い口を開いた。
『貴方は……逃げなさい』
途端、少年は激怒した。そんなことはできない、と女性を説得する。
『ダメだ! そんなこと絶対っ……!』
『本当は、分かっているでしょう? このままだったら、私の体は……』
『っ! わかってる、けど』
『最後の……わがままだと思って? 私はこの手で、弟を殺したくない。愛する人の命を奪うなんて、耐えられないわ』
目に涙を浮かべ、懇願する女性。
そっと両手を伸ばすと、愛おしそうに、少年の頬に触れる。
『エル……お願い』
必死に訴え続ける女性。
長い長い沈黙の後――少年は女性を抱え、近くにある木に寄りかからせる。
『――――エル?』
『――――、だけ』
振り絞るように、少年は言葉を発する。
『エメ姉さんのわがままを聞くのは……一回、だけだから』
それは決意を秘めた、真剣な口調だった。
離れようとする少年。でも言葉とは裏腹に、わかっていても、なかなか行動に移せないでいた。
『ほら。早く行かないと……行き辛くなるわよ?』
優しく、女性は語りかける。それに少年は一呼吸整えてから、言葉を発した。
『わかってるよ。――――行って、来ます』
『うん。行って来なさい』
精一杯の笑みを向ける女性。少年もそれに答えようと、溢れ出る涙を拭い、笑顔を見せてからその場を走り去った。
……見ているしか、できないの?
あまりにも二人の別れが痛々しくて、私は我慢ができず、涙を流していた。
「貴方は……命華ですね?」
紛れもなく、それは私に語りかけられた言葉。思わず振り向くと、女性はやわらかい笑みを浮かべていた。
「エルは……生きているのね」
困惑していれば、女性はゆったりとした口調で続ける。
「貴方が見ているこの世界は現実……本物なの」
「これが……現実?」
声も聞こえるのか、女性は私の言葉に頷いた。
「遠い過去……貴方は、それを見なくてはいけない。もっとも、勝手に見えてしまうでしょうけど」
「勝手に……? どうしてそんなこと」
「今は、時間が無いわ。また会えるか分からないし――これを」
女性は目の前に、何かを差し出す。おそるおそる受け取ると、それは小さな石の付いたブレスレット。それを右手に付けててね、と女性は言う。




