表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/189


「――なんだか、具合が悪いんじゃないかい?」


 お皿を洗っていると、心配そうにおじいちゃんが言う。


「別に、悪いところはないよ?」


「本当かい? 少し、顔色が悪くなってるように思ったんじゃが」


 ……そんなに悪いのかなぁ。

 洗面台で確認すると、確かに、いつもより顔が白い気がする。昼からよくなかったみたいだし(杏奈や雅さんにも言われたから)、今日はもう、早めに寝ちゃおう。

 お風呂もシャワーだけにして、私は早めにベッドで横になった。


 ―――――――――…

 ―――――…

 ――…


 体が軽い。まるで、雲か空気にでもなったかのように、体の存在を感じなかった。




 ここは――どこだろう。




 何度か瞬きをすれば、視界に色が入り始める。

 桜色をした空に、心地いい風が吹いて――見覚えのある景色に、私は向こうの世界を重ねた。

 また一人で来てしまったのかと思ったけど、宙を漂う感覚に、これはきっと夢なんだと考えた。だって空を飛ぶなんてこと、私にできるはずないんだから。

 しばらくして、私は広い野原に降り立った。すると背後から、こちらに走って来る足音が聞こえてくる。




『――――姉さん!』




 振り返ると、走って来る少年の姿が見える。年の頃は、ぱっと見、七か十といったところ。まだ幼さの残る少年は、私のことなど無視して横切って行く。

 それを見て、やっぱりこれは夢なんだと確信した。

 行くあてもないので、とりあえず、少年の後を付いて行ってみた。すると少年は、一人の女性に駆け寄っていた。

 腰まで伸びた淡い茶髪をした女性は、やわらかな笑みで少年を見る。


『そんなに慌ててどうしたの?』


『どうしたのじゃないよ! 一人で遠くまで来たらダメじゃん!!』


『ふふっ。エルは心配性なんだがら』


『姉さんは心配しなさすぎ! ほら、もう帰るよ』


 そう言って、エルと呼ばれた少年は女性の手を取る。

 微笑ましく見ていると、女性はこちらを振り返る。それはまるで、私に視線を向けているようだった。

 これは夢なんだから、私のことなんて見えないはずなのに――なぜか女性は、真っ直ぐに私の方を見据えていた。


『――――姉さん?』


『ごめんさない。なんでもないのよ』


『そう? 足元、気を付けて』


『は~い。気を付けるわ』


 楽しそうに、二人は森の奥へと進んで行った。

 あの女性に見られた時……不思議な感覚がした。何か言われたような気がするけど、それがどんなものだったのか。悩んでいると、目の前の景色が揺らいでいった。




 次に目にしたのは――地獄、だった。




 空は赤く、あちらこちらには黒煙が上がっている。

 ふわふわと浮かびながら、私は前へと移動する。開けた場所に出ると……そこは、本や話でしか知らない光景が広がっていた。




『殺せー! 雑華など、根絶やしにしろー!!』




 そこで起きていたのは……戦争。

 辺りは血の臭いが漂い、目に見える範囲だけでも数百はいるんじゃないかって数の人が死んでいる。




 こんなの見たくない。




 誰か……誰か起こして!




 耳を塞ぎ、闇雲に逃げ回る。どこに逃げても断末魔や殺し合いの光景ばかり……ようやく雑音が小さくなってきたところで、私は足を止めた。すると、さっき見かけた姉弟の姿が見えた。近寄って行くと、女性の体調が思わしくないのか。少年は心配そうに、女性の様子をうかがっていた。


『エル……早く、逃げなさい』


『イヤだ! 姉さんを置いて行かない……護るって約束しただろう!?』


 違和感があった。女性は以前と見た目が変わってないのに、少年の方が少し、成長したように見えて。その姿が誰かに似ている、とそんな感覚を覚えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ