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なんだか雰囲気が重々しいと感じた私は、小声で叶夜君にたずねた。
「これから、何をするんですか?」
「美咲さんが、どの命華なのかを調べるんだ」
「命華って、そんなに種類があるんですか?」
「命華には二種類あって、傷を治すのが得意な者と、花を作るのが得意な者に分かれる。基本的には似たような力らしいが、簡単に言うと、前者は体の傷を。後者は体力を癒す、というのが、命華の能力だと聞いている」
じゃあ、私は体力を治す方の命華なのかなぁ?
私に触れたら力が回復するらしい(二人の話によると)し、自分から治した経験は無いけど、一番可能性がありそうに思えた。
「――準備が整いましたよ」
声をかけられ、私たちは先生と一緒に、奥の部屋へ入って行った。
「美咲さん、これを」
そう言って先生は、私に透明な石が付いたシルバーの指輪を差し出した。
「これを、付けるんですか?」
「えぇ。それを、左の小指に付けて下さい」
言われるがまま、私は指輪をはめた。透明で淡い光を放つ石はとても綺麗で、つい見惚れてしまいそうになってしまう。
「――美咲さん」
振り向くと、叶夜君が真剣な表情を浮かべて隣にいた。
「これから、向こうの世界に行く。――だが、もしかしたら危ない事が起きるかもしれない」
途端、心臓がドキッ! と跳ね上がった。雰囲気から察して、これから行うことは本当に危ないことなんだと感じられた。
「もちろんそんなことにならないよう注意するが、美咲さん自身も、気を引き締めてほしい」
「…………」
「キョーヤ、あまり怖がらせては可哀想ですよ」
そう言うと、先生は私の頭に、そっと手の平を乗せる。
「確かに、危険な可能性がゼロとは言えません。ですが、私たちは必ず、アナタを護りますから――信じて、着いて来てもらえませんか?」
病院で聞くのと同じ、とても優しい口調。
叶夜君が言ってくれたように、先生も、私を護ってくれると言ってくれた。怖いけど……私も自分のこと、もっと知りたいし。
「お、お願い、します」
だから二人に、頭を下げ頼んだ。
「そんなことまでしなくても。むしろ、こちらが頭を下げなければいけない立場だというのに。――では、日向さん」
いいですか? と、問いかける先生に、私は顔を上げ頷いて答えた。
「私が先に行きますので、二人は後に続いて下さい」
そう言って、先生は部屋の奥に置かれた姿見鏡に片手で触れた。すると――鏡が徐々に、淡い光を放ち始める。どんな仕組みなのかと思っていれば、先生はあっと言う間に、鏡の中に入ってしまった。
「ここから、向こうに行けるんですね」
私はまた、叶夜君の家から行くものと思ってたけど。
「リヒトさんなら、条件が揃えばどこからでも行けるらしい。――そろそろ行くか」
そう言い、手を握る叶夜君。ちょっと驚いたけど、そうされた方が、なんだかほっとできるような気がした。
そして叶夜君は、ゆっくり、鏡の中へと私を導いて行った。
湖の時とは違って、なんだか浮遊感を感じる。次第に眩しくなり、目を閉じながら進んでいると、
「――着いたぞ」
その声に、私は目を開けた。
空は赤く、青い月が浮かんでいて―――間違いなく、私は別の世界に来たんだと実感した。
「ここからしばらく走ります。男性が苦手な日向さんには大変申し訳ないのですが……しばらく、キョーヤに抱えられて下さい」
「申し訳ないだなんて。叶夜君だったら、大丈夫ですから」
ここに来るまでにも抱えられたし、近くにいるから、だいぶ慣れてきたんだよね。
「それならよかった。ではキョーヤ、頼みますよ」
それに頷くと、叶夜君は慣れた手付きで私を抱えた。
先生を先頭に、私たちは森の中を駆けて行く。
月が出てるのに、森の中は光が射さず、とても暗い空間が広がっている。
それがちょっと怖いと思っていれば、それを察したのか、時々、叶夜君が話しかけてくれる。更にしっかりと抱えられる腕に、徐々にそんな思いも薄らいでいった。
次第に、周りが明るくなりはじめる。どうやら、森を抜け出たらしい。しばらく進んでいると、先生は速度を落とし、普通に歩き始めた。




