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「ちょっ! まさかキス!?」
杏奈も気が付いたようで、驚きの声を上げる。
それに周りは一時無言となり、
「「「イヤァーーー!!」」」
またしても、悲鳴のような声が上がった。その後も口々に、落胆や苦情の言葉は続いていた。
も、もう! 叫びたいのはこっちだっていうのに!
逃げようとするものの、しっかり捕まっているから動けない。どうしたものかと困惑していれば、
「――ミヤビ!!」
大きく叫ぶ声が聞こえた。
「げ、ウルサイのが来た」
「いいから離れろ!」
背中に、やわらかな温もりを感じた。チラッと視線を向けてみれば、そこにいたのはクラスの男子で。私の体はすっぽり、腕の中に納まっていた。
「またジャマしに来たの?」
「「ジャマしに来たの?」じゃない! お前は近付き過ぎだ!!」
「アンタに言われたくないね。関係ないだろう?」
火花を散らす二人。訳が分からず、私は二人を交互に見ているしか出来なかった。
「な~んだ。〝そんなもの〟付けて、学校じゃ猫被ってるわけ?」
「お前と違って、制御してるんだよ」
「そんなの必要ないだろう?」
「あのなぁ……。ここに来るなら、お前にだって必要だろうが」
「イヤだね。アンタの命令なんて聞くつもりないし。――ってか、そんなの外しなよっ、と」
「っ!? バ、バカ!」
一瞬のうちに、雅さんは男子の背後へ回る。なぜそんなことをするのかと不思議に思っていれば、男子は片手で顔を覆い隠していた。
「だ、大丈夫、ですか?」
その問いかけに、返事は返ってこない。何がどうなっているかわからない私は、ただ心配するしかできなくて、
「ほら、早くこっち見なよ」
挑発する雅さん。それに男子はゆっくりと、覆っていた手を外す。
「えっ……なんで」
目の前の光景が、不思議でならなかった。だってそこにいるのが、まさかの叶夜君だったから。
「……責任取れよな」
「油断したアンタが悪いんだよ」
一体…どういうこと?どうしてこんな所に居るのかと思えば、
「「「カッコいい~~~!」」」
先程よりも一際大きい声が、食堂内に響いた。
「…………だから嫌だったんだ」
そう呟く叶夜君は、なんとも疲れた表情をしていた。
「叶夜君……これって」
「今は、何も聞かないでくれ」
諦めたような表情を浮かべながら、叶夜君は髪をかき上げる。それがまた絵になる仕草で、周りの女子たちの反応は尋常じゃなかった。
「とにかく、ここから出よう」
「そ、そうですっ!?」
言い終わる前に、叶夜君は私を抱え走り出す。置き去りになる杏奈に何も言えないまま、私たちは食堂から逃げ出した。
どこに行くのかと思えば、叶夜君は周りの目を盗み、一瞬にして屋上へと飛び上がる。相変わらずすごい身体能力だなって感心していると、叶夜君はそっと、私を下した。
「――ここなら話が出来る」
途端、今更ながら恥ずかしさが込み上げてきた。
何で学校に居るの?とか。色々聞きたいのに、うまく言葉が出てくれない。
「えっ……と」
「とりあえず――座らないか?」
「あっ……はい」
壁を背にして座る叶夜君の隣に、私は少し間を開けて座った。
「さっきのことだが……」
申し訳なさそうに話す叶夜君。それに私は、真剣に耳を傾けた。




