↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/189

/////


 人の世に戻った俺たちは、それぞれ別の場所にいた。

 ミヤビとエメさんとシエロさんは、リヒトさんの家で治療を。蓮華さんと木葉さんは、華鬼が避難している場所に。そして俺は――美咲の家に来ていた。


『叶夜……すまぬが、美咲の家に行き、葵に会ってきてほしい』


 こんな時に何故かと聞けば、大事なことだからと強く言われた。


『素直に行った方がいいんじゃない? 救った後に、おじいさんなんに何かありました、じゃ困るでしょ』


『叶夜さん、私からもお願いいたします』


 木葉さんや倉本さんにも言われ、渋々ながらも行くことを承諾した。

 呼び鈴を鳴らせば、男性はすぐにドアを開けた。


「蓮華さんから、伝言を預かってまいりました」


 告げれば、男性は笑顔で俺を招き入れた。通された場所は和室。そこには仏壇があり、咲さんと思われる写真が飾られていた。男性は腰を下ろすと、俺にも座るようにと促された。


「木葉さん以外で、蓮華さんからの用事を伝えに来る方は初めてですなぁ」


「すみません、今は急いでいまして……」


「そうでしたな。あの子の為に動いておるというのに……余計なことをさせてすまんのう」


 ふと、男性の表情に影が落ちる。

 途端、自分が情けなくなった。

 一人で焦って……。

 周りだって、思っていることは同じなはず。それがずっと暮らしてきた者なら尚更。自分だけが悲しいわけじゃないんだと、深呼吸をし、気持ちを静めていった。


「――〝咲が、最後の挨拶に来た〟と。そう伝えるよう言われました」


「そうですか。――本当に、逝ってしまったんじゃなぁ」


 仏壇に近付くと、男性は手を合わせる。しばらく拝んでいたかと思うと、徐に、下の方から何かを取り出した。


「聞いているかもしれんが、咲には少し、不思議な力がありましてね」


 目の前に置かれたのは、両手で包めるほどの小さな風呂敷き。解かれると、中には小さな飴が入った瓶が収められていた。


「蓮華さんと同じく花を作れたことも珍しいようじゃが――少し、先を見通す力があったんですよ。もしかしたら、先祖返りかもしませんが」


「もしかして……華鬼というのは」


「御察しの通り。華鬼と呼ばれる者たちは、命華を祖先に持つようです。とは言っても、随分昔に人の世に来て生活をしているので、本来持っていた力は無いと聞いてますがね。代々、長となるのは花を作れる者。咲もその資格を持っておりましたが……まぁ色々あり、失ってしまいましてね。咲は、蓮華さんが受けた呪いの一部と、美咲を育てる罰を受けました」


「何故、育てることが罰に?」


「おそらく、蓮華さんなりの配慮ではないかと。呪いを受けた咲は、子を成すことができなくなりましたから。せめて、親となり育てる喜びを、とでも思ったのでしょう。あとは、人間の私と同じように体が衰えていきましたね。おかげで、私たちは同じ時を生きることができた。本当なら、自分の方が先に死んでいるはずだったというのに――おっと、これは余計な話じゃったか。

 亡くなる前、咲が言っておりましてね。あの子には大きな災難が降りかかる。でもその時、自分たちには何もできない、とね」


「っ、……何も、出来ない」


 彼女の為に、何か一つでも出来たことがあるだろうか?

 今だけじゃない。過去だって……俺はずっと、間違ってばかりだ。


「そう落ち込みなさんな。ワシらには何もできないが――お前さんになら、できるそうじゃよ」


 思わず、間の抜けた声が漏れた。

 訳が分からない俺に、男性は瓶を差し出しながら言う。


「お前さんは、前世のあの子と繋がりがあるんじゃろう? その為には、まず今ある傷を癒し、過去の過ちを繰り返さぬようにせんとな」


 聞けば、この飴はオレの為に作られたものらしい。これを食べれば、命の期限を気にしなくていいだけでなく、前世の記憶をしっかり思い出せると。


「辛くなったら食べなさい。最低でも、傷だけは完治すると折り紙付きじゃ」


 受け取り礼を言えば、それから――と続きを付け足す。


「名前はわからんが……あの子の使い魔がおるんじゃろう? その子が道案内をしてくれるとも言っておった」


「わりました。――必ず、連れて帰ります」


 静かに頷く男性。

 それに俺も静かに頭を下げ、急ぎ、倉本さんがいる元へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。