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蓮華が来ているのは、咲が統治していた場所。そこは、今ではあまり人が行き来しない山奥にあった。そこにある村の中でも大きな屋敷で、蓮華は寝かされていた。
「全く……ここまでせぬともよいというのに」
「なりません」
面倒臭そうに言う蓮華に、木葉は厳しい口調で続ける。
「だいたい、あのような時に自分を呼ばないとは何事ですか! 傷の治りが遅いなど、時期が迫っている証拠です」
「そこまで心配する必要はない。もう傷は塞がっておる」
「何を言いますか! 普段であればそうでしょうが、その胸に受けた傷が問題なのです。これは確実に、内部から侵食していきます。全く、少しは無茶を止めていただきたいものです」
「……お前は姑か。くどくどしつこいぞ」
「しつこかろうが言わせていただきます。美咲様を助ける為に力を使うのであれば、今は休むべきです。ここには、咲さんが作った花が今も在ります。少しでも、こちらで静養していただきますから」
「分かったから、他の者たちも診てこい。私は済んだのであろう?」
「任せてありますのでご心配無く。抜け出さぬよう、見張らせていだだきます」
笑顔で言ってのける木葉に、さすがの蓮華も、不満そうな表情を露にした。
「こうまでして言うことを聞かぬなど、本当に仕える者なのか疑問だな」
「仕えておりますよ? 蓮華様の為になると思えば、いくら反対されようと関係ありません。長が元気でいること――これは、皆の願いですから」
「――――お前の願いでもあるのか?」
ぽつり、小さく漏らした言葉。
聞こえなかったのか、答えない木葉に、蓮華はもう一度、同じことを問う。
「お前の願いは何だ。無いのか?」
「珍しいですね。私の願いを訊ねるなど」
「ただの気紛れだ」
「ほう、これまた珍しい」
「……無いならそう言え」
「いえいえ、もちろんありますよ。私の願いは――蓮華様が元気で過ごされること。これしかありません」
「……それだけか?」
いつになく弱い声。疑問に思ったのも束の間。襖の向こうから、木葉を呼ぶ声が聞こえた。
「やはり、お前が治療するのがよいのだろう。抜け出さぬから、早く事を済ませ戻って来い」
「……では、お言葉に甘えて」
軽く頭を下げると、木葉は部屋から出て行った。
「全く。――こんな近くに居たとはな」
木葉が立ち去った後を見て、蓮華は物思いにふけっていた。
レフィナドに触れた今だからわかる。彼もまた、魂を分けていたのだということを。
どれほど木葉がレフィナドの記憶を所持しているかわからないが、後から聞いてみるのもいいかもしれないと、蓮華はケガの回復に力を回していった。




