↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/189

◇◆◇◆◇


 部屋から出ると、私は蓮華さんにバレないよう、木葉さんを探していた。

 縁側に出た所で、ようやく、目的の人物に出会えた。


「おや、どうされました?」


「すみません。今、お話をすることはできますか?」


「蓮華様は、今しがた出掛けられまして」


「いえ。話したいのは――木葉さんとです」


「私、ですか? 構いませんが、どんな御用事でしょう」


「私を――あちらの世界に導いて下さい」


 言われることを予想していたのか、ため息をつく木葉。親子は似ますね、と呟いてから、言葉を続けた。


「……シエロ様同様、貴方もその身を粉にするのですね」


「今回は、シエロさんでは止められない。自分でなければ……ダメなんです」


「根拠がおありなのですね。話しによっては、協力いたいします」


「根拠、といいますか。声がするんです。自分を呼ぶ声が。――おそらく、それは自分です。この体をこの世に繋ぐにも時間がない。だから、その声に応えるしかないんです」


「――まるで、死に場所を探しているようですね」


「死に場所――そうかもしれません。自分は元々、『 』に在った。この世界に存在するのは、死に向かい、そこへ返る為と言ってもいいでしょうから」


「そのようなことになったら、多くの者が悲しみますよ?――特に、叶夜さんあたりが」


「叶夜が、自分にどんな感情を抱いているかは知っています。けど、それはどうしても理解できない。知ろうとすれば、霧がかかったようにわからなくなってしまう……でも」


「今は、少しそれがわかるのですね?」


「どうしてそれを――」


「美咲様から、力の変化を感じます。そうですね――例えるなら、今まで涼しげだった雰囲気が、春の陽気のような、そんなふうに感じます」


「変化しているならよかった。自分は――今よりもっと、変わらなければなりませんから」


 だからお願いだと、向こうの世界へ行く方法を訊ねた。


 *****


 影がこちらの世界に来ていると聞いた蓮華は、同族たちを非難させていた。本来、向こうからこちらに来るには一定の力がいる。だから来られるのはそれなりの力の持ち主だけだったというのに。影が侵入をしたということは、この世界の結界が弱まったことを表していた。

 他に陣地に残った者はいないかと、蓮華は見回りをしていた。途中、どうしても残ると言う者たちもいたが、強制的に別の地へと移した。

 だから今ここに居るのは、美咲のそばに居る木葉だけとなっている。




「――――亀裂か」




 屋敷へと向かう道のりで、微かな綻びを感じた。すぐさま指に血を滲ませ、空に何かを書く。結界の弱い場所が光り、蓮華はそこに力を注ぐ。――だが。




 ――――バリンッ!!




 力を注いだ部分が、大きく割れた。

 咄嗟に後退すれば、そこからどろどろとした黒い液体が流れてくる。地面に触れた途端、草が枯れた。その光景に、蓮華は箱を封じた時のことを思い返していた。

 触れれば……さすがに危ういか。

 いくら不死の体とはいえ、例外は存在する。再生が追い付く前に、その身を消すこと。その可能性が、この液体にはあった。

 ぴくり、液体の浸食が止まる。注意して見ていれば、まるでこちらの出方を窺っているような――まるで、生き物のようだ、と過った途端、




 ギぃヤぁぁーーーア!




 つんざくような悲鳴と共に、液体が目の前に迫っていた。




 死んでしまう――…




 そう悟ってしまうほど、逃げることができない距離。




「――――蓮華ぁー!」




 何処からか、自分を呼ぶ声がする。自然と、体が声の方を向く。見えたのは、黒い外套。どんっ! と、勢いよくぶつかったと思えば、先程まで目の前に迫っていた液体から難を逃れていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。