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ぐるぐると、景色が巡っている。
自然に囲まれた景色。
家々が建ち並ぶ景色。
人々が群がる景色。
どれも見覚えがる。それは自分ではなく、今まで模倣してきた存在の記憶。
どうしてこんなもの――…。
今必要なのは、日向美咲の模倣。それ以外の、ましてやもう死んでしまった存在を蘇らせる必要はないのに。
余計なことは考えない。
余計なことは考えない。
いつも繰り返してきた言葉も、なぜか通用しない。
――目の前に、大きな鏡が見えた。
そこに映っているのは自分。でもそこに映し出された自分は、自分とは違う動きを見せた。
『私に――体を渡さないで』
鏡の自分は、そんなことを言った。
今見えているのは――日向美咲?
だとしたらおかしい。
体を渡せではなく、【渡さないで】と言うなんて。
疑問をぶつければ、相手はそれに答えた。
『あれは私だから、戻るのは容易い。でも――受け入れないで』
自分なのに、受け入れてはいけない?
意味がわからない。第一、自分は模倣の存在。そんな決定権は無いはずだが――。
『時間も無い。あと三日と持たず、彼の中の衝動が目覚めてしまう』
鏡に触れ、顔を歪める自分。
彼とは、誰のことを言っているのか。王華の長かと聞けば、違うと言い首を横に振った。
『彼は――長の中にいる。でも、過去に見た彼とは違う。今はもう、完全に堕ちてしまった』
膝を付き、うな垂れる。
そばに近寄るも、彼女に触れることはできない。鏡に隔たれ、ただ、声をかけることしかできなかった。
『もし――彼を止められるなら』
ゆっくり顔を上げ、視線を絡ませる。
『首飾りを――外して』
真剣な眼差しで、そんなことを言われた。
『それでも力が足りないなら――』
小さく、口を動かす。
それは音にならず、頭に直接響いた。
――――――――――…
――――――…
―――…
「――――起きたか」
安堵の声。
頭を動かしてみれば、左側に蓮華さんの姿が見えた。
「――――やし、き?」
「そうだ。お前は洞窟から出た途端、気を失ったんだ」
「あれから――どれぐらい、経ちました?」
「半刻ほどだろう。もう、日が真上に来ている」
六時間ほど、か。
みんなは……どうしているだろう。
うまくいくはずだと思うのに、不安が押し寄せる。
「力の使い方はわかるのか?」
「――――おそらく」
まるで昔から知っていたかのように、頭に浮かんでくる。
使うのは言葉。
強力なものにするには自分の血。
それでもダメなら――。
「ならば、今は私の役目は無さそうだな。――ゆっくり休め」
部屋に一人残った自分は、さっきまで見ていた光景を思い出していた。
彼女は言った。時間が無い、と。
それが現実のものになったら、向こうにいるみんなは無事に帰って来れるだろうか。
「――――自分が行くしか」
仮に自分が行かなくても、シエロさんがなにかしらの行動を取るというのは予想できる。でも、それじゃあダメだ。今回は――それでは治まらない。
根拠の無い予測。でも、強い自信があった。
本当の意味で止められるのは――。
『こっちに――――来て』
この声に、応えるしかない。




