↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/189

◇◆◇◆◇


 ぐるぐると、景色が巡っている。

 自然に囲まれた景色。

 家々が建ち並ぶ景色。

 人々が群がる景色。

 どれも見覚えがる。それは自分ではなく、今まで模倣してきた存在の記憶。




 どうしてこんなもの――…。




 今必要なのは、日向美咲の模倣。それ以外の、ましてやもう死んでしまった存在を蘇らせる必要はないのに。

 余計なことは考えない。

 余計なことは考えない。

 いつも繰り返してきた言葉も、なぜか通用しない。




 ――目の前に、大きな鏡が見えた。




 そこに映っているのは自分。でもそこに映し出された自分は、自分とは違う動きを見せた。




『私に――体を渡さないで』




 鏡の自分は、そんなことを言った。

 今見えているのは――日向美咲?

 だとしたらおかしい。

 体を渡せではなく、【渡さないで】と言うなんて。

 疑問をぶつければ、相手はそれに答えた。




『あれは私だから、戻るのは容易い。でも――受け入れないで』




 自分なのに、受け入れてはいけない?

 意味がわからない。第一、自分は模倣の存在。そんな決定権は無いはずだが――。




『時間も無い。あと三日と持たず、彼の中の衝動が目覚めてしまう』




 鏡に触れ、顔を歪める自分。

 彼とは、誰のことを言っているのか。王華の長かと聞けば、違うと言い首を横に振った。




『彼は――長の中にいる。でも、過去に見た彼とは違う。今はもう、完全に堕ちてしまった』




 膝を付き、うな垂れる。

 そばに近寄るも、彼女に触れることはできない。鏡に隔たれ、ただ、声をかけることしかできなかった。




『もし――彼を止められるなら』




 ゆっくり顔を上げ、視線を絡ませる。




『首飾りを――外して』




 真剣な眼差しで、そんなことを言われた。




『それでも力が足りないなら――』




 小さく、口を動かす。

 それは音にならず、頭に直接響いた。


 ――――――――――…

 ――――――…

 ―――…


「――――起きたか」


 安堵の声。

 頭を動かしてみれば、左側に蓮華さんの姿が見えた。


「――――やし、き?」


「そうだ。お前は洞窟から出た途端、気を失ったんだ」


「あれから――どれぐらい、経ちました?」


「半刻ほどだろう。もう、日が真上に来ている」


 六時間ほど、か。

 みんなは……どうしているだろう。

 うまくいくはずだと思うのに、不安が押し寄せる。


「力の使い方はわかるのか?」


「――――おそらく」


 まるで昔から知っていたかのように、頭に浮かんでくる。

 使うのは言葉。

 強力なものにするには自分の血。

 それでもダメなら――。


「ならば、今は私の役目は無さそうだな。――ゆっくり休め」


 部屋に一人残った自分は、さっきまで見ていた光景を思い出していた。

 彼女は言った。時間が無い、と。

 それが現実のものになったら、向こうにいるみんなは無事に帰って来れるだろうか。




「――――自分が行くしか」




 仮に自分が行かなくても、シエロさんがなにかしらの行動を取るというのは予想できる。でも、それじゃあダメだ。今回は――それでは治まらない。

 根拠の無い予測。でも、強い自信があった。

 本当の意味で止められるのは――。




『こっちに――――来て』




 この声に、応えるしかない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。