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――夜。
蓮華さんの呼びかけで、シエロさんと木葉さん以外が一つの部屋に集まった。
「しばらくは、あちらが動くことはないらしい。だから、その間にこちらから動こうと思う。雅、話してくれ」
「ま、簡単に言うと、あっちにある箱を元の位置に戻したいんだよね。運ぶのはキョーヤがやって、オレとリヒトさんは援護って感じ」
「確か、処理はシエロさんがすると言ってましたけど――」
「それは最終手段、っていうか、できればとりたくないんだよね。とりあえず、まだ箱に変化がないみたいだから、これでいくつもり」
それで済ませられるなら、それにこしたことはない。
自分は何をすればいいのかと聞けば、美咲ちゃんは待機ねぇ~と言われてしまった。
「オレが言うのもなんだけど、オレの仲間の中には手のつけられないヤツもいてさ。おまけに、箱を移動させたせいで影が増えてる。だから、最小限の人数で行く方がいいんだ」
「――――そうですか」
ただ、待っているだけでいいのだろうか。
自分だけここにいるのは、日向美咲の意思に反するんじゃないか――。
考えている間に、蓮華さんが話を進めていく。
「お前たちがあちらに行き次第、丸二日は、こちらに入れないよう封を強化する。もし、何らかの事態で早めの撤退を余儀なくするのであれば――これを使え」
懐から小瓶を取り出すと、それを上条さんに渡した。
「私の血と、花を入れてある。それがあれば、お前ならば繋げられるはずだ」
「出来れば、使うことなく帰れるのが望ましいですけどね」
苦笑いを浮かべる上条さんに、蓮華さんは頷いた。
話はこれで解散となり、それぞれが部屋に戻ったところで、自分は蓮華さんの部屋を訪ねていた。相談したいことがあると言えば、夜中だというのに、部屋に招いてくれた。
「それで――何を話したいのだ?」
「率直にいいます。覚醒を――早めることはできないでしょうか?」
やっぱり、自分だけここで待っていることはできない。何が起こるのかなんてわからないけど、争いが起こるのは確実。だから、やれることはやっておきたかった。
「もし知っているのであれば――教えて下さい」
頭を下げ、蓮華さんに懇願する。
どう返しがくるだろうと思っていれば、まずは頭を上げろ、と声をかけられた。
「言っておくが、お前はまだ覚醒前。それを無理やり覚醒させるなど……」
「方法は、ないということですか?」
「無いこともないが……それには、痛みを伴うぞ?」
蓮華さんは真剣な表情に変わり、そのまま言葉を続ける。
「まだ覚醒していない力を引き出すには、それなりの体力を必要とする。自分との戦いになるが……やってみるか?」
即座に頷き、やり方を教えてほしいと頼んだ。
「私はお前の意思を尊重するが……リヒトが黙っていないだろうからなぁ」
はぁ~……と、蓮華さんは重いため息をはく。
「先生の許可がないと、できないことなんですか?」
「いや、そういうわけではない。
さっきも言ったが、私はお前の意思を尊重する。お前がいいというなら、すぐにでも始める」
「お願いします」
蓮華さんに手を引かれ、部屋を出た。すると途中で、木葉さんと出くわした。
「木葉、私たちはこれから出かける。リヒトたちには、上手く言っておいてほしい」
「そう言われるということは……もしやあの場所へ?」
頷けば、木葉さんは少し眉間にシワを寄せた。
「本人の意思だからな。私は、道を示すだけだ」
「……分かりました」
お辞儀をし、木葉さんは自分たちをその場で見送った。
人目を避けるように外へ出ると、蓮華さんは自分を抱え、素早くその場から離れた。
あまりに早く、私は思わず蓮華さんにしがみついた。目なんて開けていられなくなり、目的地に着くまで、ずっと目を閉じていた。
「――――着いたぞ」
目を開けると、そこは小さな洞窟。中からは水か流れ出ており、ひんやりとした空気が、辺りを包んでいた。
「目的の場所は、この奥にある。そこには小さな石があるから、それに手を触れてほしい。そこでは、赤の命華のお前が、目の前に現れる。自分自身と話をし、ここから出て来い」
「今の状態の自分にも……そんなことが起きるでしょうか?」
「こればかりは分らぬな。とはいえ、お前はここに存在している。だから、何らかのカタチで変化は起こるはずだ」
「これで何も起きなければ……大人しく、覚醒の時期を待つしかないんですよね」
「そうなるな。ただし、もう一人の自分が現れた再、失敗すればここまで弾き飛ばされる。一度で成功するかもしれぬし、失敗ばかりかもしれぬ」
それでもやるか? と、最後の確認をされる。
自分を気遣う蓮華さんに、大丈夫だと言い洞窟の先を見た。




