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 夜も深まる頃。

 外は、雨が降りは出していた。




「――――珍しいな」




 この世界で雨が降ることは滅多に無い。

 そして、雨が降るということは、ここでは意味のあることだった。




「――――呼ばれたか」




 胸騒ぎを覚えた蓮華は、美咲の部屋を覗いた。しかし、そこには寝ているはずの美咲がいなかった。

 雨は、大地と空を行き来する。降り続く間、ここでは古き存在や、魔が住む場所と繋がりやすくなる。

 だが、それを体験出来るのは一握りの者。負の心を持つ者は、この雨の中にいることさえ難しい。




「――――叶夜もか」




 ぽつり、窓から空を見ながら呟く。

 しばらく部屋に留まっていれば――ふわり、花の香りが漂ってきた。


「ほう。懐かしい匂いがするものだな」


 口元を緩める蓮華。

 立ち上がると、部屋から出て木葉を呼びつけた。


「叶夜と美咲に、着替えを用意してくれ」


「はい。では、温かい物もお作りしておきましょう。――蓮華様も、いかかですか?」


「あぁ、頼む」


 木葉を待っている間に、雨がやんだ。

 再び花の香りがすると――ひらり、花びらが舞いこんできた。


「お前の花は、とても香しい。――そろそろ、本当の別れ時か」


 部屋に舞い込んだ花びらを手に取り、懐かしむ。




「安心して逝けよ――咲」




 花びらに口付けをすると、それを外へ放す。

 風に乗り空へ昇っていくさまを、蓮華はしばらく眺め続けた。


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