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◇◆◇◆◇


 ふと、目が覚めた。

 起き上がれば、外はまだ暗い。時間はわからないが、夜なのは間違いない。


「――――花の匂い」


 香りが、風に乗ってくる。

 窓のそばに行けば、強く、その香りを感じた。


「この匂い――知ってる」


 自然と、体が動いた。

 窓から外に出て、地面にゆっくり着地する。

 空を見れば、何処からか、花びらが舞っている。

 風の吹く方角に、足が向かう。

 道は草で覆われ、人工的な道は無い。

 しばらく歩いていれば――ぱあっと、開けた場所に来た。




「――――よく来たわね」




 やわらからに、自分を見て微笑む女性。

 手招きをするので、ゆっくり、彼女に近付いて行った。


「約束。覚えてたのね」


 とても嬉しそうに、その女性は言った。

 約束――?

 美咲は、何か彼女としていたのだろうか?


「すみません。記憶が無いので、どんな約束をしたのかは」


「小さい頃の話だから、無理もないわ。ここはね――華鬼が作る花畑。この花は、命華が作っていた花に近い物」


 周りを埋め尽くす白い花。

 これが命華の花に似ているなら、薬を作ることができるのだろうか。


「でも、今は薬を作れない。貴女が覚醒をしないと、花は作れないから」


 知りたいことを、彼女はすらすらと答えてくれる。


「あなたは――何故、そのことを知っているんですか?」


「さて、どうしてかしらねぇ~」


 ふふっ、と笑みをもらし、くるりとその場で回る。途端、風が花びらを撒き上げた。思わず見上げると、すとん、と静かに体が後ろに倒れた。




「全てが終わったら――ここに来なさい」




 顔をのぞきこみ、女性は言う。


「どうして――ですか?」


「それはね――秘密」


 口に指を当て、やわらかな笑みを浮かべる。


「ここに来たら――いいことがあるわ」


「いいこと――?」


「そうよ。その時の貴女にとって、とてもいいことが――ね」


 ひゅーっと、再び風が吹く。

 すると、女性の姿は消えていた。




「だから必ず――ここに来なさい」




 その声を最後に、女性の気配を感じることはなかった。




 あの人――誰だったんだろう。




 次第に、視界が揺らいでいく。

 今まで動けたのに、体が動いてくれない。もう、このまま休んでしまおう。




「――――みさ、き」




 おそるおそる、誰かが名前を呼ぶ。

 閉じかけた目蓋に力を込め、何度か瞬きをして見れば、




「――――美咲?」




 悲しげな表情の、叶夜が見えた。


「誰かに――連れて来られたのか?」


「いいえ。自分から、ここに来ました」


「一人で出歩くな。頼むから……無茶をしないでくれ」


 抱えながら、叶夜は言う。


 彼はどうして、こんなにも自分を心配するんだろう。




「叶夜は――何故、そんなにも心配を?」




 途端、叶夜の表情が固まる。

 口を開きかけたものの、すぐにつぐみ、言葉を飲み込んでしまった。




「叶夜――何故ですか?」




 再度問いかければ、ようやく、叶夜は口を開いた。



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